JBL スピーカー


     
 Olympus Paragon  Lancer 101


  Model    販売年     価格 (1台)    寸法(WxHxD)    重量 
Paragon   1957 - 1988  350万円 263x90x70cm   266 - 318kg 
Olympus   1960 - 1975   45 - 61万円  102x67x51cm   72 - 84kg 
 Lancer 101   1965 - 1973  22万円  44x62x32cm  39kg 

   世界で最も高名なスピーカー、JBL とは、アメリカ生まれの James Bullough Lansing (1902 - 1949)
が設立した企業です。
 幼いころから電気や機械に興味を示し、12歳で、独力で制作した小型無線通信機は余りにも強い通信能力により、海軍に探知され、解体を余儀なくされた程の性能だったとの逸話があります。
 後にラジオ局に技師として勤務したジェームスは、使われているスピーカーの音質があまりにもひどいため、その改良の研究のために1927年、Lansing Mfg. を設立しました。
 1934年映画館の劇場用スピーカー・システム用として制作したスピーカーがアカデミー技術賞を受賞しました。
 1939ー1946年まで、当時ウェスターン・エレクトリックから独立して新しい音響製品の開発を目指していた Altec Corp. に招聘されたジェームズは、新たに設立された Altec Lansing 社の技術担当副社長として劇場用スピーカーの開発に乗り出します。
 現在も劇場等で見かける A2,A5、A6、A7 等、Voice of Theater シリーズの一連の劇場用スピーカー・システム等は、いずれもジェームズによって開発されたものです。
 1946年、アルテック社との契約終了を機に、業務用の性能を持つ、家庭用の美しいスピーカーの設計、販売を意図して、James B. Lansing Sound Inc. を設立しました。
 しかしながら、経営に行き詰まり、1946年、ジェームズの自殺によって、Jame B. Lansing 社は終焉に至ります。
 思うに、家庭用の高性能スピーカーという夢は早すぎたのでしょう。
第二次世界大戦が終焉したばかりであり、光学フィルムで高音質の音響再生が可能であった劇場用はともかくとして、家庭用の音源はAM ラジオ が主流であり、レコードはモノーラルの SP しか無かった時代に、家庭用で高性能スピーカーは無用の長物でしかありませんでした。
 が、共同経営者や技術者、デザイナー達は、ジェームズの夢を叶えるべく、新たに JBL 社を設立して商品開発を進め、そうして世の中に送り出されたのが冒頭の、目を見張るような美しいデザインと仕上げの一連の
スピーカー・システム達でした。
 この10年の間に音響を巡る環境は一変し、ラジオは高音質の FM 放送が主流となり、レコードは SP からステレオLPへと進化し、さらに 38cm-2track ステレオ・テープデッキ等の高音質のプログラムが急激に普及し始めていました。
 JBL スピーカーが世界に躍進する舞台が漸く整ったのでした。  
とは言え、1950年代末、サラリーマンの初任給が 13,800 円の時代の日本で、数十万円~300万円ものスピーカーは夢のまた夢の商品でしか無かったのも事実です。
 1ドルが360円、加えて高い輸入関税と、ぜいたく品にかかる物品税、重量300kgにもなる巨大な箱の運送費等々、当時の様々な状況を考えると、途方もない値段になってしまうのも止むを得ませんでした。
 途方もない値段の Paragon は、しかし30年間に全世界で 1000台ほど販売されたとのことですから、世の中には音楽好きの大富豪が存在するものなのですね。
 因みに、現在は、スピーカーはもちろん自動車等、ほとんどの工業製品の輸入関税はゼロ、払うのは国内の消費税のみ、為替も、現在でこそ1ドル140円と、円安になっていますが、360円時代と比べれば、輸入品の値段は格段に割安となっています


超割安なJBLのスピーカー
 敗戦後の世界最貧国の時代が過ぎて、経済成長時代に入り、日本でも電気炊飯器、冷蔵庫、電気洗濯機の3種の神器に加えて、テニスやスキー、ボーリング等のスポーツ、自家用車と、ようやく豊かな生活に入り出した頃からオーディオもまた身近な楽しみの一つとして大流行しました。
 そして、オーデイオ商品の中心である高級スピーカーの分野で、JBLは現在に至るまで圧倒的な地位を
占めています。
 その理由は、JBLのスピーカーが高性能であることはもちろんですが、内外の如何なるブランドと比べても圧倒的に割安であるためです ;
 その理由は、商品価格に占める開発費や金型代といった、重要な固定費が殆どゼロに近いためです。
というのも、JBLのスピーカーは、1940年代に開発された、様々なユニットを延々と改良しながら使い続けているためで、それらにかかる費用はほとんど無視出来るといったも過言ではありません。
 そうして延々と作り続けてきたユニットを組み合わせて、業務用から一般消費者向けの製品に組み込んでいればこそ、高性能と 超割安価格とを両立させることが可能なのです。
 何しろ、世界の劇場やホール、飛行場やスタジアム等の音響システムの半数はJBL製と言われています。
そうして大量に生産されるユニットを組み合わせて一般民生用のスピーカーにも使っているわけですから、高性能で割安なのも当然です。
 もっとも日本のオーディオ・マニアには抜きがたい業務用機器信仰があり、JBLならプロ機器でなければと、いかつい業務用スピーカーを無理やり 6 畳の部屋に押し込んで悦に入ってる向きが少なからずあります。
 JBLのスピーカーユニットは、実はプロ用であれ一般民生用であれ、基本的には同じユニットをモデル番号と仕上げとを変えて使っているだけです。
 したがって JBL の業務用と一般民生用のスピーカーには音質も性能も、違いはありません。

JBLーS3100
        と、スピーカーとしてJBLを絶賛する立場なのですが、実は一度も使ったことがありません。
 音質、周波数特性、音場再生能力、洗練されたデザイン等々、あらゆる面で申し分のないスピーカーであることは重々承知してはいるのですが、ついぞ入手して聴いてみようとは思わなかった。
 冒頭の写真のようなモデルは余りにも高価で到底手に入れようなどとは考えもしなかった。
 その後、何とか買えるような時代が来た時には,すでに他のスピーカーを持っていた。
 等々ありますが、最大の理由は、実は、わざわざ入手しなくても、JBLのスピーカーの奏でる音楽は、映画館や劇場、ホール等でいくらでも聴くことができる、ということに尽きるかもしれません。 
 そうした中で、1995年に発売された S-3100 というスピーカーにはほとほと感心させられました。
 38㎝口径の低音に高能率のホーンを組み合わせたコーナー型のスピーカーが、すっきりとしたキャビネット・デザインで仕上げられたこのモデルは、JBLの長年の伝統の真髄のような作品であると一見して確信させられた。
 のですが、既にタンノイのコーナー型のスピーカーが置いてある部屋にはどうしても追加で収めるわけにも行かず、なくなく諦めて、未だに時折カタログを取り出しては眺めている次第。
 この中身と仕上げで1台33万円とは破格の値段で、他社の10倍もするスピーカーと比較しても全く引けを取らない、JBLの長年の歴史の中で最高の傑作であると確信している。
 
 1995年発売 1台33万円 56x111x43cm 57㎏  


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