空想の音楽会
( Concerts Imaginaires aux chateaux et cathedrales)
ポツダムの サン・スーシ宮殿での演奏会 | シュノンソー城でのルネッサンス演奏会 |
フリードリッヒ大王が建てた宮殿にて 彼の音楽家たちが,王が王妃と望んだ フルートの調べを奏でる |
優雅な春の気配につつまれて ひとびとの声とリュートが ディアーヌが王妃で、アンリが彼女の王であった、 かつての艶なる宴を歌う |
シャンティイ城での王家の狩りの音楽会 | ヴェルサイユ宮殿・大トリアノンでの室内楽演奏会 | マントヴァ公の館でのルネサンス音楽会 |
、 1953年にフランスにて設立されたレコード・レーベルの ”ERATO” はフランスやイタリア、ベルギー、オランダを中心とする新進の演奏家や指揮者による、それまで忘れられていたルネサンス、ロココ、バロックの音楽を発掘して、活発な演奏と録音活動により、一躍世界を代表するレーベルとして注目を浴びた。
”ERATO” とはギリシア神話に登場する文芸の女神 (ムーサ)達の一人で、竪琴を持つ彫刻で美術館や博物館に展示されている。
そのエラートが1960年代から取り組んだのが、”空想の音楽会” シリーズだった。
フランスを中心に、オランダ、ベルギー、イタリア、ドイツ、ウィーン、ロンドン等、ヨーロッパ各地の城や宮殿、大聖堂にて、かつて,これらの場所での音楽会を、当時の様式、楽器を使って再現しようとする30枚からなる企画だった。
それぞれの時代にヨーロッパ各地で活躍した作曲家たちの音楽が演奏された、まさにそのゆかりの城や宮殿にて再現され、当時の人々が聴いたのと全く同じ響きを聴くことができるという、まさに夢のような企画だった。
冒頭の2枚は1960年代のLPレコードのジャケット。
2段目の3枚が1990年代半ばにCDとして復刻されたジャケット。
LPジャケットには、後のCD復刻盤にはない、それぞれの盤の内容が雅な文章で書かれている。
2枚しかないのは、1960年代当時レコードの値段が現在と変わらない1枚2000円~と高価なもので、月に1枚買うのでさえためらうほどの水準だったため。
今でこそ、同様の企画は数多くあり、テレビの番組やブルーレイ等のメディアによって、音だけではなく、高解像度の大画面の映像にて、当時の演奏会の有様を目の当たりに見ることが出来るようになった。
まさに隔世の感を深くするこの頃だが、1960年代は、外国へ行くことさえ夢のまた夢の時代であったから、ともあれ、レコードにてかつての音楽が演奏された様子を、ジャケットの写真を眺めながら楽しめるだけでも感激したものだった。
その後ヨーロッパに滞在する機会に恵まれて、かつてレコードを聴きながら想像を巡らしていた城や宮殿を実際に訪れて歩いていると、かつて数限りなく聴いた音楽が蘇ってくるのだった。