ボビンレース
(Bobbin Lace・Dentelle・Bolillos )
ベルギー・フラワーレース 30x30㎝ | 左のレースの部分拡大 |
ボビンレースとは模様を印刷した型紙の上に針を立て、ボビンに巻いた糸を両手で絡ませながら、平織り、綾織り、重ね綾織の3種類で様々な模様を織りあげてゆく技法です。
ヨーロッパ各地に広範に発展したレースの中でベルギー・バンシュ地方のレースは最も高度な技術と繊細な模様で名高い。
冒頭のレースは180番という超極細の綿糸を使い、数百本のボビンを使って毎日6~8時間、6か月余りかけて家人が仕上げたもの。
11月から3月にかけて一冬に平均で8mもの降雪があり、猛吹雪が続くと2~3日は家に閉じこめられてしまう北海道の気候ならではの仕事だ。 こんな手間のかかることをしなければ時間を持て余してしまうということです。
一日6~8時間かけても 2~3㎝ しか捗らないほど高密度な作業だが、徒に時間さえかければ良いという訳ではない。
一つ間違うと次のつながりでずれがどんどん広がるために、結局巻き戻してやり直しとなるため、大変な集中力が要求される。
時間がゆったりと流れた 3、400年も昔の仕事で、当然ながら、こんにちでは本場のヨーロッパでも若い人が手がけることは少なくなっている。
冒頭の作品は、拡大しても細部まで織模様がきれいに揃っている、最上級者の手仕事の例。
40年余り昔、バルセロナで出会って以来続けてきて、その後ベルギーのレース学校で教えている教授と、その弟子の先生に学んで技を極め、ついに、技術の頂点にあるベルギーのレースに挑戦してやり遂げたもの。
さらに大きなものでは1m50㎝、1年半かけて作品があるが、大きすぎて表示できない。冒頭の作品の5倍を想像されたし。
ボビン・レースは英語だが、スペイン語では Bolillos : ボリーリョス、フランス語では Dentelle : ダンテル と呼ばれる。
ヨーロッパ各国では未だに、園芸や料理と並ぶ趣味の一つとしてボビンレースがあり、本や定期的な雑誌が刊行されて、新しいパターン等が紹介されている。
下記の作品はそれらの本やテキスト、雑誌等の中から選んで製作した100枚程あるレースの中から抜き出したもの。
パターンを印刷した型紙の上にびっしりと針を立てて織りあげる製作過程で、どんなふうにして出来上がるのかが分かるでしょう。
ヨーロッパ各地の様々な模様のレース | ベルギー・バンシュ地方 のレース製作過程 |
世界のボビンレース
ベルギーのレース用の道具 | スペイン・カタルーニャでのレース製作 | イギリスのレース製作道具 |
レースの歴史は紀元2~3世紀の頃のエジプトのコプトの遺跡からボビンや糸が発掘されている。
綿や麻、そして蚕や羊の養殖で得られた絹糸や羊毛を使って、次第に高度の布や織物を製作する
技術の一つとしてレースがありました。
レースの技術はヨーロッパ各地に広まり、各国、各都市ごとに独特の技術、用具、模様、とが考案され、
糸巻とパターンを印刷した型紙さえあれば家庭でも簡単に取り組めることから、一大産業へと発展した。
16世紀ころには高度な水準に達し、当時の肖像画に見られるように貴人や王侯貴族の衣装には
欠かせない豪華な飾りとなりました。
エリザベス一世 | パルマ公 | フランス・シャンティイ・レース |
最高度の技術と材料とを駆使したレースは王侯貴族にしか使えないのは当然ですが、一般庶民も分相応のレースを衣装等に使うのが流行となりました。
1930年ころに、機械でも熟練した工人の手作業と変わらないほどの水準のレースが出来るようになって、家内産業としてのレースはすっかり廃れ、今では趣味の工芸として残されています。