話の話
(CKAZKA CKAZOK)

 
 ユーリ・ノルシュテイン(Yuri Norshtein)  1979年 話の話より    GENEON DVD GNBA-3028

 これまで数えきれないほどの映像を見てきた中で、とりわけ印象に残る、忘れがたい映像がこの場面だ。
 ロシアの映像作家、ユーリ・ノルシュテインが1979年に制作したアニメーション ”話の話”を構成する4つのエピソードの一つ、平穏な生活の日々を象徴する情景。
繰り返し登場するこのエピソードは至高の美しさを湛えている。 
 この映像の背景にバッハの平均律クラヴィア曲集第1巻第8番、変ホ短調プレリュードがゆったりと流れる。
クレジットには出てこないが、スヴャトスラフ・リフテルの演奏と思われる。
話の話

 このアニメーションには筋らしい筋はなく、4つのエピソードの場面が脈絡もなく交互に現れて進行する ;

1 人気のない、しかし暖炉に火のある小屋でじゃが芋を焼く狼。小屋を出て森の中で拾った赤子に  翻弄される。 狼のエピソードはこの物語で狂言回しのような役割で現れる。

2 平和な暮らしを回想するかのようなエピソード ;
  漁師の一家と詩人が川辺で過ごす懐かしさに満ちた情景。女の子が牛と縄跳びで遊ぶ。

3 飲んだくれの男と絶望した女。降りしきる雪の中で男の子がカラス共にリンゴを食べる。

4 屋外でタンゴ ”疲れた太陽”の曲に合わせて踊る男女。
   踊っている男女の輪から男が消えてゆく。男たちは兵士の装いで戦場に赴いてゆく。
  女たちだけで踊る輪の中に空から舞い降りてくる戦死広報。 
  再び踊りの場面 : 戦場から生還して再び踊りの輪に戻った男たちには、しかし、腕や足が無い。 
     


     


     


     
 ユーリ・ノルシュテイン(1945~ )は無数の部品からなる切り絵の部品を少しづつ動かして撮影するカット・アウトという膨大な手間と時間のかかる技法で制作して来た.
 いずれの作品も世界中のアニメーション映画祭にて絶賛され、LDやDVDに作品が収録されている。
アニメーション作品はディズニーやスタジオ・ジブリの作品はTVやDDVで何時でも見られるが、ノルシュテインの作品は知る人ぞ知る、世界のアニメーション界に大きな衝撃と影響とを及ぼしたものだ。
 このDVDには1966年にスタッフとして参加した 愛しの青いワニ、1968年の監督処女作 25日・最初の日、1969年 冬の日、四季、1971年 ケルジェネツの戦い、1973年 狐と兎、1974年 あおさぎと鶴、1975年 霧に包まれたハリネズミ の10分前後の短編と、1979年作の29分の大作、話の話 の8編が収録されている。 


       あおさぎと鶴
 
   
   
 あおさぎと鶴とが、互いに思いあっていながらなかなか本心を打ち明けられずに意地の張り合いをしているという状況を描いた短編。
 ノルシュテインの作品としては軽妙さに溢れた愛すべき掌編。

霧の中のハリネズミ
       
       

  霧の中にさ迷い出たハリネズミが様々な動物や出来事に遭遇するという10分間の短編だが、何とも愛らしい詩情に溢れる作品だ。
 切り紙細工でこれほどまでに細やかな情感を描出できるというのも見事と感服するのみ。
世界の映像作家に衝撃を与えたノルシュテインの最高傑作のひとつ。
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