4. ダイアモンドを巡る最近の話題


T ダイアモンド詐欺の手口



 写真は昨年、クレジット・カード会社の案内パンフレット掲載の”クイーンズ・エレガンス・ダイヤモンド”なるネックレスのパンフレットです。
 いかにも最上級のダイアモンドであるかの如き殺し文句が散りばめられています。
これを読めば、プラチナの枠とチェーン付の3個で8カラット以上のダイアモンド・ネックレスが131,250円で買えると信じる人が出てきても不思議ではありません。
  1万3000円では無く、13万円と、その値段なら本物のダイアモンドと信じるに違いないと、素人の心理の隙を狙った極めて悪質、狡知に長けた値付けがされています。

 誰も読まないようなパンフレットに出ているだけと思っていましたが、最近になって日本経済新聞の全国版に大々的な広告が掲載されるようになりました。
 詐欺以外のなにものでもない広告が公然とまかり通るのを漫然と眺めているのは面白くありません。
 この広告には宝石一般について大いに誤解を与えるような悪賢い表現の見本市のようなものですから、その手口をじっくりと解き明かしましょう ;

宝石の正体 : 

 パンフレットにはたった一言、新宝石”クイーンズ・エレガンス・ダイヤモンド”と表示してあるのみです。
ルーペで見ないと読めないほど小さな表示の品質保証書なるものは全て英語で如何にもアメリカのGIAが発行したように装っていますが、石については Artificial Diamond と表示されています。
 Artificialとは人工の、模造の、という意味です。
 特に宝石関連では模造、人工、合成、イミテーション類を指します。全ての人が Artificial の意味を正しく理解できるとは思えませんが Diamond はほぼ分かりますから、敢えてダイアモンドであるかのように見せかける巧妙な表示です。
 したがって宝石の正体は何処にも表示されていませんが、間違いなくキュービック・ジルコニアです。
 イミテーションの宝石にもっともらしい名前をつけて売り込もうとするのはこの業界の特徴ですからクイーンズ・エレガンス・ダイヤモンドの呼称には何の意味もありません。 
 カットについても、『ブリリアントカット以外の優美なダイアモンドのカッティングを ”グレイスフルカット” と呼んでいます』と、さもダイアモンドの特別なカットであるかの如き説明がついています。
 しかしグレイスフル・カットなどという曖昧な呼称のカットはありません。 
3つの石はそれぞれオクタゴン、マーキーズ、ペアと、ごく普通のカットでしかも全てブリリアントカットです。
宝石に疎いこのコピーライターは、ラウンド・カットだけがブリリアントと思っているようです。

GIA GG(米国宝石学協会 研修修了者)は宝石鑑定のプロではない
 :

 GIA の権威を笠に着るための巧妙な手口に過ぎませんが、一般にもっとも誤解されている GIA 云々をあちこちに使っています。
 GIA は宝石学の普及のために米国を中心に世界各地の都市で宝石学の研修会を定期的に開催しています。
 これに参加しているのは主に、宝石店経営者の家族や従業員、いずれ宝石業界で働こうと志している一般人等、宝石の素人が大半です。
 宝石学の初歩から、ダイアモンド、その他の色石、ジュエリー・デザイン等々、広範な分野があり、いずれも有料で、全部受けようとすれば4年制の大学で学ぶのと同じ程度の費用と時間がかかります。
 最短の基本コースだけでも半年の研修と250万円程の費用がかかります。
 しかしながら、広範な一般人相手の研修ですから、宝石についてはまるで無知の水準から、一通りの知識を与えて、無事に宝石業界への入門が出来る程度の教育がされた、その名のとおり、世界中にゴマンといるただの研修修了者に過ぎず、決して宝石鑑別のプロではありません。
 全くの素人が半年学んだ程度で宝石鑑別のプロになれるほど、宝石の世界は甘くはありません。
 たとえば大学で法律を学んだからといって、直ちに弁護士や検事や裁判官になれるわけではないのと同様です。
 宝石鑑定のプロになるためには、専門的な鉱物学や地質学、結晶学や物理学、化学等の知識と、宝石鑑定の現場で見習いから始まる長い経験と実績とを積み重ねる必要があります。
 ついでに、よく混同されている鑑別と鑑定との違いを説明すると、; 
 ダイアモンドとその他の宝石や合成品、ガラスの贋物等とを識別するのは鑑定ではなく、鑑別という作業です。 現在では宝石学と呼ばれる分野です。
 鑑定とは、例えばダイアモンドと鑑別された石が、どれくらいの市場価値があるかを見極める作業です。
 米国宝石学協会 (GIA) が教えるのは正しく宝石を識別する知識と技術である宝石学(即ち鑑別)であって、鑑定ではありません。

ダイヤモンドの価値を決める4C云々


 GIAの付属機関である Gem Trade Laboratory が使うダイアモンドの等級表示が一般にも知られる4Cの基準です。
 しかしこれはあくまでも天然のダイアモンドについてのみ適用される基準です。
 GIA では最近市場に登場してきた合成ダイアモンドについても等級表示を行っていません。
 ましてカラット当たりの市販価格が100円にもならないキュービック・ジルコニアを、わざわざ費用をかけて等級表示するようなことは間違ってもありません。
 ダイアモンドの色合いを純白のD から次第に黄色身を帯びるに従い E,F,G ・・・・K,L,M と等級付けるのは、天然のダイアモンドの大半が窒素の混入により黄色〜褐色を帯びているからです。
 窒素の含有率が少ない純白のダイアモンドは極めて少なく、希少価値が高いため高価です。
微妙な黄色味の違いが大きな値差となって跳ね返ります。
 このため厳密な色合いの比較をして等級付けがされているわけです。
 同様に天然のダイアモンドは地下130km以上の深度の高温高圧の地殻中で何億年もかかって結晶が成長したものです。
 その期間に結晶の転移等による亀裂や他の鉱物の結晶を取り込みますが、採算面から多少のインクルージョン (結晶内部の傷や包有物) があっても宝石として研磨されます。
 これらの要因が透明度 (クラリティー) の基準である FL, IF、VVS、VS・・・といった等級付けされます。
 一方人工の結晶であるキュービックジルコニアの場合は、転移等による亀裂等は出来ますが他の鉱物結晶が混入することもなく、窒素による着色も起こりません。
  カラット当たりの製造原価が1円程度で大量に生産される結晶の透明な傷のない部分だけを選んで研磨しますから、ダイアモンドのような色や透明度の等級付けなど全く必要がありません。
 即ち市販される合成のキュービック・ジルコニアは、天然のダイアモンドの等級を敢えてつけるとすれば、最上級の D−カラー、FL( フローレス:傷無し) に相当するものが大半です。
 したがって専門の宝石鑑定機関がキュービックジルコニアをダイアモンドに倣って等級付けすることは決してありません。
  GIAのダイアモンド等級表示を装って強調するのは、これが如何にもダイアモンドであるかのように見せかけるための悪賢い手口の一端です。
 I・E・I社発行の品質保証書付とは詐欺の証明書以外の何物でもありません。

アメリカの著名なデザイナー、ハリウッドで大人気の : メアリー・ゾフレス(Mary Zophres) Diamond Collection 

 ” 多くのアーティストを輩出した、ニューヨークのパーソンズ・デザイン・スクールを卒業後スタジオを設立。
主に個人のオーダーで一点ものジュエリーを製作。顧客リストにはアメリカの映画界を代表する女優が名を連ねる。”

 この宝石デザイナーの紹介も虚実紛々 : 確かにニューヨークの Parsons School for Design は世界で屈指のデザイン・スクールです。
 しかし、メアリー・ゾフレス女史がここで宝石デザインを学んだのか否かは不明。
スタジオを設立云々・・・は怪しいものです。
 何故なら彼女はハリウッドで有数の映画やテレビ番組の衣装デザイナーです。
公開されるハリウッド作品の多くに彼女の名がクレジットされています。
 したがって多くの顧客にハリウッド俳優がいるのは確かですが、あくまでも作品の衣装デザインの担当者としての話。 
 メアリー・ゾフレスが多忙な映画TV作品の衣装デザインの合間に宝飾品のデザインをしているという事実は全くありません。
 ここでも実在するデザイン・スクール名と高名な映画の衣装デザイナーの名を騙って嘘八百を展開しているだけ。
 ありふれた3つのカットのルースをただつないだだけでオリジナル作品とは笑わせます。
 

I・E・I (アイ・イー・アイ) 社 ; 

 この社名、何処かで似たような名前を聞いたことありませんか ? 
そうです、バブル時代に海外で派手な不動産投資を展開し、うまうまと乗せられた長期信用銀行などからの1兆円を超える貸し出し金を踏み倒し、長銀倒産の引き金ともなったあのE・I・E (イー・アイ・イー) 社をもじったふざけた社名です。
 ひょっとするとあの残党がやっているのではと勘ぐりたくなります。
 ネックレスの価値は実際のコストが(枠とチェーンがそれぞれ Pt900 と 850 との表示が本当とすれば重さによりますが 3000円から5000円)、キュービック・ジルコニアが3個で1000円見当が良いところ。
 税込みで13万1250円でダイアモンドと信じて買った消費者が訴えたなら、ただ一言新宝石と表示したから詐欺ではないとの主張を裁判官が認めるでしょうかね ? I・E・I社 さん
  と、ただ同然のキュービック・ジルコニアを、あたかもダイアモンドであるかのごとく徹頭徹尾、嘘とでっち上げで飾り立てた広告です。
 これで何人の消費者がだまされたかは知りませんが、問題は、こうした内容をろくに検証もしないで全国版の広告に平然と掲載して恥じることの無い日本経済新聞のジャーナリズムとしての見識の欠如であります。

 U JALUX(日本航空の子会社)の通信販売のペンダント
キュービック・ジルコニア ペンダント
10ct 径 12.4mm
ダイアモンドと見紛うばかりの
キュービック・ジルコニア
エイボン社のキュービック・ジルコニア
ペンダント 11x11mm およそ 8ct

 同じく、JALUX から送られてきた通信販売の案内にキュービック・ジルコニアのペンダントが紹介されていました。
  こちらは ”天然ダイアモンドと見紛うばかりの輝きを誇るキュービック・ジルコニア” として、これがダイアモンドではなく、合成された人工の宝石であることをはっきりと説明しています。 
 もっとも大写しにされたキュービック・ジルコニアの写真はファイアーが強調されすぎていて、とてもダイアモンドには見えません。 
 フレームとチェーンは925の純度のロジウム鍍金のスターリング・シルバー(銀)製で小さな淡水真珠と0.035ctのサファイア付です。
 10カラットもの大粒のキュービック・ジルコニアがセールス・ポイントとして強調されているこのペンダントは20,790円です。
 いくら大きくともキュービック・ジルコニアそのものの小売価格はカラット100円もしませんから、10カラットといっても1000円足らずです。
 ついている淡水真珠とサファイアもごく小さなもので、いわばおまけのようなものです。
 しかし、見たところ丁寧なつくりのフレームできれいな化粧ケース入りですから、手ごろなアクセサリーとして、2万円余りなら妥当と考える人があっても不思議ではありません。
 しかし感心できないのは10カラットの大粒な・・・・との謳い文句です。
キュービック・ジルコニアは比重が5.4から5.9とダイアモンドの3.52と比べると重い宝石ですから、寸法が30%ほど小さくなることを説明すべきでしょう。
 10カラットのラウンド・ブリリアント・カットのダイアモンドは直径が14.2mmほどですが、同じ重さのキュービック・ジルコニアの場合は12.4mmほどで、これは7カラット前後のダイアモンドの大きさに相当します。
 さらにこのペンダントが前述のI・E・I社からの供給とされているのも驚きです。
詐欺商法を展開している業者から仕入れた商品を売るというのは一体どういう神経か、良識を疑わせるものです。
 因みに右上の写真、化粧品のエイボン社の通信販売で売られているペンダントは、ハート・カットの11x11mm (推定8ct前後) のキュービック・ジルコニアがJALUXと同じロジウム仕上げの銀のフレームとチェーン付ですが、こちらは何と たったの 973 円です。
 JALUX の通信販売のものとはデザインも異なり、化粧ケースに収められているわけではありませんから同じ基準の比較はできません。
 が、しかし宝飾品としてのコストや価値はほぼ似たようなものです。
   

V ニューズウィーク誌の記事

 NEWSWEEK 誌の 2005年3月23日号の表紙のトップに ”ソニーに未来はあるかダイアモンド暴落危機 と二つのセンセーショナルな見出しで紹介されていたので何事かと読まれた方も多いかと思います。
 読んでみれば、思ったとおり、ダイアモンド合成技術の進化により天然と見分けのつかない人工のダイアモンドが市場に氾濫してダイアモンドの暴落が起こるかもしれない、という内容の記事でした。
 この種の話は20世紀初頭のヴェルヌイユによる合成ルビーや御木本幸吉による養殖真珠技術の成功以来、何度となく繰り返されてきたことで、またかというしかありません。 
 真珠の場合は、天然真珠が極めて稀で高価であったため、大量に品質の揃った養殖真珠がたちまち市場を席巻してしまい、天然真珠はコンクパール以外は市場から姿を消してしまったという経緯があります。
 その他のルビー、サファイア、エメラルド、アレクサンドライト、オパール等の宝石の場合はしかし、天然の最上級品と全く同じ合成品が10分の1から100分の1の格安で登場しても、天然の品の地位が揺るぎもしなかったことは歴史が証明しており、少しでも宝石業界を知る人なら熟知している事実です。 
 ニューズウィーク誌の記者は、ありあわせの知識をかき集め、さらに新興の合成ダイアモンドメーカーに取材をして、彼らのきわめて楽観的な(メーカーですから当然のことですが)見解を鵜呑みにし、彼らから提供された合成ダイアモンドをニューヨークのダイアモンド街に持ち込み、プロの鑑定士でも天然との識別が出来なかったと、何の検証も批判もせずに(素人ですから検証など不可能)自己満足といって良い記事をでっち上げたものです。
 この記事で分かったことは最近登場してきたCVD 法(Chemical Vapor Deposition : 化学気相成長法)による宝石質ダイアモンドの生産能力は週に100カラット程度であるということ、またもう一つの最新の高温高圧合成法のメーカーでも1カラット以上の大きな合成ダイアモンドは未だ出来ないということです。
 宝石質の合成ダイアモンドについては、既に合成エメラルド等、合成宝石では世界最大手のアメリカのチャザム社がロシアの企業と合弁で10年以上前から企業化に挑戦しています。 
 工業用のダイアモンドの場合は年間3億カラットと安定した生産実績がありますが、宝石質となると困難をきわめ、この分野で最も進んでいるロシアでも月に100カラット程度しか生産できないというのが現実です。
 因みにデ・ビアス社は産業用の合成ダイアモンドでも世界で最大級のメーカーです。
 1990年代末には試験的に34カラットの宝石質ダイアモンド結晶を作っています。
800時間ほどかかったとのことですが、10万気圧、2000℃の過酷な条件を800時間も維持するのは恐ろしく危険を伴う大変な技術で、もちろん採算は全く合いません。
 デ・ビアス社はこれで宝石質の合成ダイアモンドの商業化が不可能であると確信したことでしょう。
 即ち、年間原石で1億カラット、カットされた石で1500万カラットの供給がある天然と比べて、合成ダイアモンドとなると1カラット以下の宝石質結晶が月に全てのメーカーも合わせても数百カラットしか生産できないのが現実です。
 これでは合成品が天然品の市場や価格を脅かすとは誰がどう考えても言えません。
 しかし、相手がダイアモンドとなると、なぜかこの類の羊頭狗肉の記事が時折出現するようです。
 ただニューズ・ウィーク誌ともあろうものがこういった与太話を堂々と記事にするというのは驚きです。

W 日経サイエンス 2009年 12月号の記事

 
”日経サイエンス”はイギリスの ”Nature” 誌と並ぶ 科学に関連する世界で最も権威のある, ”SCIENTIFIC AMERICAN” の日本語版として毎月読み応えある記事が満載の雑誌です。
 ところがこの雑誌にしても前述のニューズ・ウィークと同様のダイアモンドについての与太話を臆面も無く掲載しているのには唖然としました。
 2009年12月号の特集「起源に迫る」の一章、ダイヤモンド に書かれた内容です。 
 ダイアモンドについての科学的な知識も、また採掘や販売に関する経済的な視野も欠如した編集者か記者が、ともかく誌面を埋めるためにありあわせの情報をおさらいしてでっち上げた典型的なお馬鹿記事です。
 とりわけ2000年以降、デ・ビアス社が独占禁止法によって市場の独占を失い、その地位をロシア政府が支配するアルロサ社に取って代わられた、とする記述は全くのデタラメ。
 少しでも調べれば事実に反するとは直ぐ分かることです。
 アルロサ社の広報担当者の情報を鵜呑みにして検証もせずに書いてしまったというお笑い記事ですが、その情報に日経サイエンスの編集担当者がいたく感銘を受けたという編集後記のおまけまで付いているというお粗末さです。

 記事そのものはアメリカのサイエンス誌の9月号を翻訳しただけですから日経サイエンス社はどうすることも出来ないのかもしれません。
 私が編集長だったら、断固としてお馬鹿記事などゴミ箱に放り込みますが。 

 それにしても、こと宝石となると、何故世界的なジャーナリズムがこうも易々と内容も確かめずにいい加減な内容を臆面も無く記事にしてしまうのか ?
 何事も疑ってかかる。真実を追究するというジャーナリズムの鉄則は何処へ行ってしまったのでしょうか ?

V  Moissanite Diamond  ???

 モアッサナイトを調べていたら、ネット・オークションに Moissanite Diamond なる呼び名の宝飾品が結構な数出ていました ;
 1.259ct の石 (Fカラー、VVS1) に Pt900 の留め金と rhodium チェーン付きとあり、即決価格が\38,000ながら\100から始まるオークションでした。
 見ているとどれも\1300前後で落札されています。
落札者の多くは数百件の評価実績があり、とても個人用に買っているとは思えません。
 1円から始まるオークションが結構ありますが、値段を吊り上げるためのサクラが沢山いるようです。
 さて、Moissanite Diamond と表記してありますが、現時点では1カラットを越える、Fカラー、VVS1相当の高品質のモアッサナイトの量産技術は確立されていません。
 したがってキュービックジルコニアである可能性が大きいのですが、拡大写真を見ても詳細は分かりませんから、とりあえず1200円で落札して調べてみました。

 デザインを見ると、石に穴を開けて止めているように見えますが、実際には石の底部のキュレットの尖りに丸い輪になった爪の後ろを引っ掛けて、前の爪でテーブル面を押さえているだけですから石自体には穴も傷も付いてはいません。
 1.259ctとの表示ですが実際には 2.46ct とほぼ倍の重さです。
つまりこれは非常に重い石であり、比重を計るとモアッサナイトの3.22よりはるかに重い5.506、屈折率が2.150と紛れもなくキュービック・ジルコニアでありました。
 恐らく比重の軽いモアッサナイトかダイアモンドをセットした時と同じ、直径7mmの大きさの石をつけたのでしょう。
 1.259カラットのキュービック・ジルコニアでは直径が5mm余りと小さくなり、このデザインでは爪に隠れてしまいます。
 といって本当の重さ2.46ctを表示したのでは大きくなりすぎて、ダイアモンドの筈が無いとの疑惑を招きかねません。
 詐欺師なのに実際の重さの半分の表示しかしないとは不可解ですが、何が何でもダイアモンドらしく見せかけたいと苦心している様がありありと覗えます。
 さらにPt900の刻印のある爪は比重が7.456と軽く到底比重21.45のプラチナではありません。
恐らく銅とアルミニウムが50%の合金にニッケル・メッキをしたもの。
 Rhodiumチェーンなるものも5.84の比重からすると銅70%、亜鉛30%の真鍮にニッケル・メッキをしたもの。
 と、何から何まで表記と中身が違うお粗末な贋物です。
これらを指摘したところ、表示は中身を保障するものでは無く、刻印はお洒落なお遊びだと開き直ってきました。確信犯なのですね。
 しかし石そのものは質もカットも良いキュービック・ジルコニアですから、手頃な値段のネックレスと思えば決して劣悪な贋物というわけでもありません。
 それならきちんと表示して売ればよいものを !
 しかし、こういう品物を大量に落札している業者らしい人々は、一体これを何として、何処でどんな値段で売っているのやら ?

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