ダイアモンドの起源


1.宇宙のダイアモンド

 隕石中のダイアモンド

 1888年、ロシアのジェロフェジェフとラチノフとがノヴォ・ユレイ隕石中にダイアモンドの微晶を発見してフランスの雑誌に発表して、初めてダイアモンドが地球だけではなく、宇宙にも存在することが明らかになりました。
 以後、1889年ドイツの地質学者サンドバーガーがカルコート隕石中に、同年オーストリアのワインシェンクがマグラ隕石中に、1891年にはアメリカのフートがカニオン・ダイアブロ隕石中に、と続々と隕石中のダイアモンドの発見が報告されました。
 これらの隕石はいずれも結晶の形が定かでなく、大きさも最大で1mmにも達しない微少なものです。
 その成因については当初、隕石の母体となった天体中で結晶したものと考えられました。 しかしながら隕石の多くは惑星にもならなかったごく小さな天体と考えられていますから、その内部にダイアモンドが結晶するほどの高温と高圧が発生したとは考えられないとの結論になりました。
 その後の研究では、隕石が宇宙空間での隕石同士の衝突や破壊、また地上に落下した際の高温と高圧とで隕石に含まれる炭素成分がダイアモンドに結晶したと考えられるようになりました。
 この結論がきっかけとなって、モアッサン等によるダイアモンドの合成実験が始まりました。

 
星間ガス中のダイアモンド


 超新星爆発による重力波の衝撃で生成される星間ダイアモンド

 1980年代の後半の頃から、世界の科学者の間から宇宙空間に漂う星間ガス中に微細なダイアモンド結晶が生成されている可能性が指摘されるようになりました。
 宇宙空間は全くの真空ではなく、極めて希薄ではありますが、場所によっては水や一酸化炭素、さらにメタン、シアン、アンモニア、アルコール、ホルムアルデヒド等の炭化水素化合物、またもっと複雑なアミノ酸のような化合物まで存在することが分光分析などにより確認されています。
 これらの炭素を含む化合物が超新星爆発によって放出される重力波の衝撃によってダイアモンドの結晶に変換されるという、わくわくするような説が唱え始められました。
 その詳しい仕組みについてはいずれ合成ダイアモンドの項で説明する予定です。
ともあれ、1994年春のイギリスの科学雑誌”Nature"誌にNASAの科学者が赤外線分析の結果、宇宙空間に漂うダイアモンドを通過して来た光の検出に成功したという論文を発表したことで、この説が確認されました。

2004年4月にハッブル望遠鏡が写したリング星雲 AM-0644-741


 ダイアモンドネックレスのように見えるリング星雲は南半球に見える”かじき座”の方向、
マゼラン星雲の近く、3億光年の彼方にあり、直径15万年光年の大きさの青白く光輝くリングを持っています。
 このリングは星々が爆発的に生まれるスターバーストにより超巨大恒星が生まれ、それが光を放って輝いているものです。
 このような銀河が生まれたのは大きな銀河の中を別な銀河が突き抜ける銀河同士の衝突によって出来たと考えられています。
 それぞれが1千億以上の星を持つ銀河ですが、スカスカの空間により恒星同士がぶつかることはまず起こらないと考えられています。
 しかし星間ガスや塵は圧縮され波紋のように広がって銀河の周辺で衝突し、それにより星々が生まれています。
 超巨大星は激しい反応によって1千万年足らずの短期間に燃え尽き、超新星爆発を起こして重元素を撒き散らして寿命を終えます。
 このときに放たれる重力波の衝撃により星間ガス中の炭化水素がダイアモンドに変わってゆきます。  ダイアモンド・ネックレスのように見える青白く光る星の周囲に、まさに膨大な量のダイアモンドが生まれつつあるのです。


ダイアモンドになった星
 前述の隕石中のダイアモンド、宇宙空間のダイアモンド共はいずれもマイクロ・ダイアモンドやナノ・ダイアモンドと呼ぶべき、肉眼では見えないほどの微細な結晶ですから到底宝石とは縁遠いものです。
 ところが2004年2月13日、アメリカの”Time”誌に”大部分がダイアモンド結晶となっている星”の記事が掲載されました。左の図がその想像図です。
この星を発見したのはアメリカの天文学チームです(Harvard-Smithonian Center for Astrophysics)
 発表によると、50光年離れたケンタウルス座にある直径4000kmの白色矮星がダイアモンド結晶となっているとのことです。
 その大きさたるや1034カラット、即ち100億を2回1兆倍、と言われてもぴんときませんが、要するに月ほどの大きさのダイアモンドに結晶してしまっている星があるということです。  
 ダイアモンドで出来た星があるとは衝撃的なニュースですが、しかし考えてみれば決して意外な事ではありません。
 我々の太陽も含めて、宇宙に存在する太陽の1.4倍の質量以下の星の大半はその生涯の終わりに白色矮星になると考えられていますから、宇宙には無数の白色矮星が存在します。
 白色矮星はその成分の大半が酸素と炭素で出来ています。白色矮星は大きさにも因りますが、密度が1立方センチメートル当たり1トン〜10トンと非常に重い天体です。
 その重力により表面近くでも非常な高温と高圧になっていますから、その質量の大半を占める炭素は必然的にダイアモンドへと結晶してしまっているとは大いに可能性があることです。
 アメリカの天文学チームがこの星の振動を詳細に観測し、分析した結果、内部の炭素が結晶してダイアモンドになっているという結論に達したとのことです。
 因みに我々の太陽も数十億年後には地球の軌道を飲み込むほどの赤色巨星に膨れ上がりますがしかし比較的小さな質量のために炭素より重い元素に核融合反応が始まる程の高温になりません。 
 最終的には地球くらいの大きさの、ほぼ炭素からなる白色矮星へと収縮してゆくと考えられています。
 となればケンタウルス座に発見された白色矮星と同様に巨大なダイアモンド結晶の塊である星に変貌すると考えられます。 
 ということは、太陽は特別な星ではなく、宇宙に普通にある恒星に過ぎませんから、他の恒星の多くも同様にその生涯の終わりにダイアモンドの結晶へとなって行きます。 
 つまり宇宙は巨大なダイアモンド結晶の星で満ち満ちていると言えるでしょう。

* 白色矮星 : Googleで検索すれば夥しい情報や解説がありますから詳細を知りたい方はご自身で検索してください

以下に簡単に説明します;

 宇宙の星は宇宙空間に漂う主に水素から成る星間ガスが重力で収縮し、超高温、高圧になった中心部の水素原子が核融合反応を起こして輝き始めたものです。
水素が核融合反応を起こすにはおよそ1000万度の高温が必要で4つの水素原子がヘリウムへと変換されてゆきます(実際には二つの重水素の融合、3重水素と水素、リチウム3と水素等、複雑な核融合が起こっている)。
 数十億年かけて中心部の水素の大半がヘリウムに変換された星は中心部が収縮し、高圧のために1億度を超えるようになります。
 するとヘリウムが核融合反応を起こし、3つのヘリウムが核融合反応で炭素へと変換されて行きます。
 巨大な質量の星ではこの反応はさらに進み、4億度以上になるとナトリウムやネオン、さらに酸素へと変換され、最終的には鉄に至るまで核反応が進みます。
 それ以上の重い元素は、超新星爆発の際の反応で生成され、宇宙に撒き散らされます。
 恒星内部で酸素より重い元素への核融合反応が進むための高温、高圧が進行するにはチャンドラ・セカールの理論により太陽の1.4倍以上の質量が必要となります。
 したがって、それ以下の質量の小さな恒星は水素からヘリウム、さらに炭素と一部の酸素とが生成された時点で核融合反応が止まり、重力により収縮して生涯の最後にその中心部は酸素、大部分は炭素からなる白色矮星となります。
 本来太陽ほどの大きさの天体が月や地球ほどの大きさに収縮したものですから角砂糖一つ程の質量が1トン〜10トンという重さの高密度星となり、成分の炭素原子はダイアモンドへと結晶してしまっていると考えられます。

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