瑪瑙と玉髄 (Agate & Chalcedony)

 

多彩な色合いの瑪瑙と玉髄 モダンなカットの玉髄
Glenn Lehrerの作品
縞瑪瑙の宝飾品 虹色の効果を示す
イリスアゲート 13.6〜25.6ct

 

レース瑪瑙の原石 メキシコ 瑪瑙の晶洞 12cm
Chuhuahua Mexico
玉髄の原石 幅 15cm
北海道桧山郡今金町花石
水磨礫となった玉髄
青森県今別町母衣月海岸
 玉髄は石英の一種で、微小な水晶の結晶が集合した潜晶質と呼ばれる緻密で強靭な塊として広範に発見されます。
 結晶の重なりの隙間に他の鉱物等の不純物が入り込んだり、長い年月の間に異なる成分が層を成して沈殿し、同心円状の縞模様が形成された場合には瑪瑙と呼ばれます

瑪瑙と玉髄の産状

  火山岩の晶洞中に残された珪酸分に富む溶液から微小な水晶が沈殿して層を成して、葡萄状の塊となったのが上の写真の北海道花石の玉髄です。
 生成の温度は常温と考えられます。中心に水晶が結晶している場合もあります。
 合成水晶は370℃で1ヶ月で30cm程の大きさに成長しますが、晶洞の中では常温で長い時間をかけて結晶したと考えられます。 
 これがもっとも一般的な産状の一つです。
 この塊が風化されて川岸や海岸で磨耗礫となったものはごく普通に発見されます。
晶洞の中で沈殿していった時に、不純物や蛋白石等が交互に層を成した場合には縞状の同心円が形成され、瑪瑙となります。
 一般的に玉髄は灰色ですが鉄分を含むと赤褐色となります。
その他産地によってはニッケルや石綿、針鉄鉱、緑泥石等様々な不純物を含み、多彩な変種が世界各地で発見されます。
 そのため実に多彩な名称があり、以下に代表的なものを取り上げて行きます。

 
 
玉髄は潜晶質ですが多孔質でもあるため不純物が染み込んで容易に着色されます。
  一般には酸化鉄が含まれているために単純に加熱するだけでも濃赤色に変わります
 砂糖水に浸した後で希硫酸溶液に漬ければ染み込んだ砂糖分が脱水炭化されて黒く染まります。クロム酸塩の溶液に浸せば濃い緑色に染まります。
 古くから瑪瑙や玉髄がカメオや工芸品の素材として好まれたため、こうした着色が行われてきました。

左の写真は瑪瑙の塊を切断して様々な着色をした例です。

瑪瑙と玉髄の用途
 海岸や川の砂利の層から美しい色合いや縞模様を見せる瑪瑙や玉髄は地球上の至る所で広範に発見されますから、琥珀や真珠と並び最も古くから宝石として用いられた鉱物の一つでしょう。
 緻密で強靭な材質なので、繊細な加工が容易であるため、高級な食器や工芸品等にも使われてきました。
世界の博物館や美術館には数多くの瑪瑙や玉髄の工芸品が残されています。
さらに、瑪瑙は薬品の粉砕や混合のための乳鉢、また精密機器の軸受け等、科学機器の分野でも使われてきました。
瑪瑙と玉髄の工芸品

 

シュメール朝ウルで
出土した金、紅玉髄
ラピスラズリ等の
装飾品 BC2500年頃
BC2000年、アッシリアの
玉髄の刻印とその模様 34mm
ゲッティー博物館
ヘレニズム朝のカメオ
BC278-270 11.5x11.3cm
プトレマイオス二世夫妻
ウィーン美術史博物館
アウグストス皇帝
カメオ 紀元一世紀
大英博物館

ウルグアイ産瑪瑙の
古代風のカメオ
5cm
アメリカ自然史博物館
 

 

18世紀の瑪瑙の杯 30cm
イダー・オーヴァーシュタイン
宝石博物館
17世紀東欧製の瑪瑙の杯
高さ 10cm
ルーヴル美術館
瑪瑙のカップ
シャム王からルイ14世への贈り物 
 ルーヴル美術館
カメオ風の瑪瑙の時計板
直径 11.5cm
アメリカ自然史博物館
 瑪瑙は古代から世界中で宝飾品として愛好されて来ました。
シュメールで発掘された宝飾品のうちラピスラズリがアフガニスタン産であることは確かです。 
 そして紅玉髄の首飾りは恐らくは、同じ頃に栄えていた古代インダス文明の都市からもたらされたものと考えられます。
インダスの都市では現在のパキスタンにあったモヘンジョダロとハラッパが有名です。 
 しかし、この10年ほどの発掘により現在のインド、グジャラート州のカッチ湾にドーラビーラー等の古代都市が存在し、紅玉髄が特産品であったことが分かりました。
 その紅玉髄はバーレーンを経由してメソポタミアの都市、シューメールに輸出されていました。 
 メソポタミアでは商取引のサインとして玉髄や碧玉などで作られた、文字や記号を沈み彫りした円筒形の印章を使いました。
粘土板に記された文章に円筒形の印章を押し付けて回せばサインが刻印されます。
 色合いの異なる玉髄が層を成している瑪瑙は浮き彫りのカメオの絶好の材料となりました。 
プトレマイオス二世夫妻像を刻んだカメオはルーベンスが”欧州一美しい”と絶賛したもので、マントヴァのヴィンチェンチオ一世から神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ二世へと、さらにスウェーデンのクリスチーナ女王の手に渡ったという数奇な運命を辿りました。
 その他の瑪瑙の杯やカップ、カメオ等いずれも、瑪瑙という素材の特徴を十二分に活かして技巧の粋を凝らした見事な作品ばかりです。
 こうした瑪瑙や玉髄を素材とする工芸品の伝統は現在にも受け継がれています。
紅玉髄の芥子の花
アメリカの Larry Woods作
ブルー・カルセドニーと
煙水晶のカタツムリ
台はレインボーオブシディアン
ロシアの Slava Tulpov作
玉髄の豹 6cm 
ドイツの Georg Beckerの作品

 

瑪瑙のフリーフォームの彫刻
ドイツの Dieter Lorenzの作品
瑪瑙のフリーフォームの彫刻
アメリカの Glenn Lehrerの作品
瑪瑙のチンパンジー 9cm
ドイツ Alfred Zimmermann作

 いずれも現代の欧米の高名な宝石カッターたちの手になる作品です。
前述の世界各地の博物館や美術館所蔵の作品と比較して、技術、発想、洗練等々、勝るとも劣りません。
 多彩な宝石が数多く手に入るようになった今日では、瑪瑙や玉髄は宝石としてはまったく地味な存在になってしまい、宝石店で見かける機会も少なくなっています。
 しかしながら、その多彩な色彩、質感、緻密で強靭な材質のため思い切ったデザインで加工が出来るという特質を活かした作品が続々と生まれている宝石でもあります。

多彩な玉髄と瑪瑙の数々

前述のように多孔質の玉髄には様々な不純物が入り込んだり、薄膜状の多層構造により美しい色合いを示すものがあります。


イリス・アゲート(Iris Agate)
 
微細な襞状構造の
イリスアゲートの
顕微鏡写真 
イリスアゲート研磨品
Patagonia Argentine
大きさ 70x35mm
1987年ツーソンショー
1993年ツーソンショーに出品
1990年にオレゴン州で発見
Glenn Lehrerの作品  

 虹のような効果を示し、イリスアゲートと呼ばれる瑪瑙がごく稀に採れることがあります。
イリスとはギリシア神話の虹の女神のことで、瞳の虹彩や、花のアイリスにもその名が使われています。
 あまりにも稀で、ツーソンショーのような世界最大の宝石フェアでも時たま出品されるとニュースになる程の稀少品です。
 私も20年余りショー通いをしていますが、実物に出会った記憶がありません。
たとえ出品された年に行ったとしても、3週間近い期間に3000ものブースの一つに出品されている数少ないイリスアゲートに遭遇する機会は限りなく少ないでしょう。
 またイリスアゲートが置いてあっても、虹が鮮明に見えるような特別な展示でもしない限り、見過ごしてしまう事もあり得ます。
 1990年にオレゴンで発見されたものは、たまたま床に落とした瑪瑙が割れて薄片となったものが虹色の煌きを見せたことからそれと分かったとのことで、一つの塊から32ペアと16個のイリスアゲート薄片がカットされました。
 この効果は顕微鏡写真でわかるように瑪瑙が微細な襞状になっているために、厚さ0.2mm程の薄片にカットして、特定の角度で見たときに光の干渉によって起こります。
 微細な襞が一平方cmに60〜8800ほどある瑪瑙が虹の効果を示すのだそうですが、一万個に一個の割合でそんな瑪瑙が見つかるのだそうです。
 如何に緻密で強靭な瑪瑙でも0.2mmの厚さにカットするのは至難の技ですが、右端のグレン・レーラーの作品のようにさらに襞状にカットするのは名人芸の極みと言えましょう。

 
苔瑪瑙(Moss Agate)  ファイヤー・アゲート(Fire Agate)

 

Mocha Stone
ロンドン自然史博物館
インドの苔瑪瑙 中央 7.5cm
アメリカ自然史博物館
苔瑪瑙で飾られたファベルジェの
タバコケース 幅 9cm 1914年
    ファイヤーアゲート
左 San Luis Potosi メキシコ 
右 Slaughter Mtn. San Carlos
  Arizona
 
 玉髄の内部や表面に酸化マンガンや酸化鉄等が染み込んで樹枝状、あるいは羊歯葉状の模様が見えるものがあります。
その形態から苔瑪瑙、樹枝状瑪瑙(Dendritic Agate 又は Mocha Stone)、しのぶ石等と呼ばれます。
 世界各地で発見されますが、とりわけインドは大きく美しい模様の苔瑪瑙の産地として有名です。
そのまま装飾用に磨かれたり、あるいは工芸品として面白い効果を発揮します。
 褐鉄鉱が内部ではなく玉髄の表面に多層の薄膜となって虹のような効果を示す種類がメキシコ北部とアメリカのアリゾナ州、ニューメキシコ州一帯にかけて発見され、ファイヤー・アゲートと呼ばれます。
 1940年代頃から各地で散発的な発見がありました。
しかし1970年代頃からアメリカの側の各地で目にも鮮やかな種類が発見されるに至り、注目を集めるようになりました。 
 ただし宝飾品として使うためには、薄膜層が剥がれないように熟練した専門家による加工と、あまりにも鮮やかな色合いをどう処理するか、趣味のよいデザイナーとの共同作業が必要になります。

 

ブルーカルセドニー (Blue Chalcedony)
 
ルーカルセドニーのフリーフォーム彫刻 1996年に発見された産地
中央のカボションは 27ct
Mt.Airy Austin Nevada U.S.A.
1998年に発見された産地
ムーンストーンのような
青白い光を放つ
Mohave砂漠 California
1992年に発見された産地
最小のカボションは4.4ct
Montana U.S.A.
 

 

ネヴァダ州 Mt.Airy鉱山のブルー・カルセドニーの産状 
サンダー・エッグ(雷の卵)と呼ばれる直径5〜90cmの晶洞中に見つかる
 日本語で言えば”青玉髄”となりますが、一般にはブルーカルセドニーと呼ばれます。
カルセドニーとはかつてボスポラス海峡に面していたギリシアの町、カルケドン(Chalkedon)が青い色の玉髄の産地であったことに由来します。
 したがって単にカルセドニーといえば青い色のはずでしたが、その後様々な変種が発見されたために、玉髄全般がカルセドニーと呼ばれるようになりました。
 今日では人気がない玉髄や瑪瑙ですが、唯一やわらかな色合いのブルーカルセドニーは人気が上昇しています。
 近年、アメリカの砂漠地帯で続々と新産地が発見されたため市場にかなりの量が出回るようになったためでしょう。
 この青みを帯びた発色の原因は未だに解明されていません。
紅玉髄(Carnelian or Cornaline)、瑪瑙(Agate)、オニックス(Onyx)
 酸化鉄により鮮やかな赤に発色したもので玉髄の中では最も普通に見られます。
自然の玉髄の色は主に灰色ですが、宝飾用としては美しくないため、加熱処理して紅玉髄になります。
 カーネリアンとはラテン語のCarnis(カルニス:肉(色))に由来するとも、あるいは同じくラテン語で木苺の一種、Cornel berryを意味するCorunumに由来するとの説もあります。
 白い蛋白石の層と赤い玉髄と交互に層を成して縞模様があると瑪瑙(Agate)とか縞瑪瑙(サードニクス :Sardonyx)と呼ばれます。
 Agateはかつて瑪瑙を産したシチリア島の川、Achates川に因みます。
Sardとは縞瑪瑙を産した小アジアのリディア(Lydia)の首都がギリシア語ではサルディス(Sardis)と呼ばれていたことに由来します。
 縞模様のある玉髄や瑪瑙が単にオニックス(Onyx)とだけ呼ばれることもあリます。
Onyx とは本来ギリシア語の爪に由来する言葉で、爪の付け根の白色の半月形と肌色の2色の対比と似ていることから乳白色と灰色〜黒の縞模様の玉髄の名になりました。
 現在では多色の玉髄や瑪瑙、大理石もオニックスと呼ばれています。

クリソプレーズ(Chrysoprase)
オーストラリア、クイーンスランド産の
クリソプレーズの原石とカボション
赤鉄鉱の母岩と共に彫られたカメレオン
55x30mm
ブラジルの玉髄とクリソプレーズの蛙
87x78mm
 酸化ニッケルを含みさわやかな青りんご色の玉髄はクリソプレースと呼ばれます。
この名はやはりギリシア語の ”khrysos:クリソス : 金” と ”prasinos:プラシノス:にら色”、すなわち黄色味を帯びた緑色に由来します。
 古くから知られていましたが、1740年にドイツ、チェコ国境に近いポーランドのシレジア地方で発見されました。
 当時ハンガリー・ハプスブルグ帝国の支配下にあったシレジア産のクリソプレーズはプラハの教会や城などの装飾に使われ、また1742年にはプロイセンの支配下に入り、フリードリッヒ大王はポツダムの壮麗なサン・スーシー宮殿の装飾に大量に使ったことから、クリソプレーズはヨーロッパで流行の宝石となりました。
 その後アメリカやブラジルなど各地で産地が発見されましたが、1965年以降はオーストラリアのクインスランドが主要な産地となっています。

 クリソコーラ(Chrysocolla : 珪孔雀石 : CuSiO3・nH2O)
 
クリソコーラ 6.4cm
Christmas Mine Gila郡
Arizona U.S.A.
クリソコーラを含む玉髄 6cm 
Asarco Mine、Ray Arizona州
宝石質のクリソコーラ片とフリーカット作品 39.6ct
 Glenn Lehrer作品
クリソコーラを含む玉髄
をそのまま使った作品
Cannni Mainne作
 クリソプレーズと似たような名前で、緑から青い色のクリソコーラと呼ばれる宝石があります。
日本語では珪孔雀石と呼ばれ、水分を含む銅の珪酸塩鉱物です。
 珪孔雀石自身は孔雀石と共に産出する銅の二次鉱物で量が多ければ銅鉱石として採掘されます。
不透明でモース硬度が2〜4と柔らかく崩れやすい塊ですから、それ自身が宝石に使われることはありません。
 クリソコーラの名はギリシア語の ”khrysos:金” と ”kolla:蝋” を語源としますが、それはこの鉱物が融点を下げるために金に混ぜて蝋付け用に使われたことに由来します。
 この鉱物が宝石となるのは、多孔質の玉髄に浸透して透明感のあるトルコ石のような鮮やかな緑や青の発色をしたものです。
単純にクリソコーラと呼ばれることもありますが、本体は玉髄ですから、”Quartz Chrysocolla” ”Chrysocolla Chalcedony” ”Gem Silica Crysocolla”等様々な呼び名があります。
銅の2次鉱床に産するクリソコーラですから、産地も当然銅鉱床地帯でアメリカ南部の銅鉱山が集中するアリゾナ州、ネヴァダ州、ニューメキシコ州が主産地でその他メキシコ、チリ、ザイール等の銅の産地からも発見されますが、宝石質のものは稀です。
 この宝石は1960年代以降に台湾をはじめとする東南アジアで翡翠を思わせることからとりわけ人気が盛り上がりました。
しかし翡翠にはこんなにも高い透明感と光の強さを見せません。
 とりわけクリソコーラ・カルセドニーの透明度が高く濃い青い色合いのものは量が少なく、数ある石英系の宝石の中ではカラット当たり50〜200ドルと破格の高値となります。これは最上級のスター・バースト・ルチル・クォーツと並びもっとも高価なものです。
 瑪瑙は化学薬品で容易に美しく発色させることが出来ますが、幸いなことに、クリソコーラカルセドニーの透明度の高いトルコ石のような発色は未だに得られていません。
 したがって市場のクリソコーラ・カルセドニーは人工ではなく、天然の発色です。
美しいものは稀なため一般に ”ジェム・シリカ” の名で瑪瑙類の中ではかなりの高価で取引されています。

碧玉(Jasper)
碧玉 幅 8cm
松江市玉造温泉産
赤玉 9cm
佐渡両津市赤玉産
血碧玉 幅10cm
熊本県人吉市
血碧玉(ブラッドストーン)
研磨品 13mm
 日本は歴史的に宝石が一般の生活に取り入れられなかった世界でも稀有な国の一つです。
恐らく着物のような完結した衣装にはきらきら光る宝石など邪魔ものであったためでしょう。
 生活様式が変わり、生活が豊かになったこの2〜30年余り、その反動でしょうか急激に宝石の一般化が進み、欧米なら限られた富豪相手の高級宝石店しか扱わないような最上級のエメラルド、アレクサンドライト、ブラック・オパール、パライバ・トルマリン等のブランド宝石がディスカウント・ショップのようなおよそ場違いの店にまで当たり前のように大量に並んでいるのはいささか唖然とする光景です。 
 これも宝石との付き合いの歴史のない国に特有の現象なのでしょう。
 そんな日本ですが例外的に瑪瑙や玉髄、碧玉等は、簪、帯留め、数珠などの細工物が身につける宝石として一般に親しまれてきた宝石です。
 碧玉は玉髄に他の鉱物が不純物としてかなりの量含まれて不透明な種類です。
緑泥石や角閃石等を含んで暗緑色、暗青色、暗緑褐色のものが碧玉と呼ばれ、酸化鉄を含み赤いものは赤玉、碧玉に赤玉が斑点状に混じったものは血碧玉(ブラッドストーン)あるいはヘリオトロープとも呼ばれます。黄色のものはサイレックス(Silex)と呼ばれますが、これは珪石や燧石です。
 いずれも殆どただの石ころと大して変わりませんが、こんな地味な石が美しい宝石として珍重されていた日本の文化も味わい深いものだと思います。
 ブラッドストーンは美しいどころかイモリの皮膚のようでむしろ不気味といったほうが相応しいのですが、これだけは洋のの東西を問わず呪術的な効果があるとして、古くから珍重されて来ました。
 ヘリオトロープ(Heliotrope)の名はギリシア語の ”helios:太陽とtropos : 転回” から来た名で何故か分かりませんが水の中に置くと太陽の方向を向くと考えられたのだそうです。 
 キリスト教徒の間では十字架の足下の碧玉の上に落ちたキリストの血であると信じられ、魔力があるとして愛好されました。 
 16世紀イタリアの年代記画家のジョルジオ・バサーリの書いた ”ルネサンス画人伝” には子供時代の思い出として次のようなくだりがあります。
 ”私がその年頃で非常に強い鼻血に悩み、時々そのために意識を失うということをルカ・シニョレッリが聞いたとき、彼は自らの手でとても優しく一つのブラッドストーンを私の首にかけてくれた”
 また、インドやスリランカでもブラッドストーンの粉末が万病に効き、精力剤にもなると信じられているのだそうです。
 そんなわけで、ブラッドストーンはインドやオーストラリア、アメリカ等で大量に採れますが、旺盛な需要のために品不足気味で10年前と比べると値段は数倍になっています。

虎目石(Tiger's-eye) 鷹目石(Hawk's-eye) 猫目石(Cat's-eye)
虎目石の鉱山
南アフリカ、トランスヴァール Griqualand
虎目石と鷹目石 虎目石カボション 19/7mm 猫目石 14/13mm
 ルビーやサファイア等、殆どの色石には繊維状の不純物が含まれると、カボションカットされて鋭い光の筋が現れるキャッツアイ効果を示します。
 世の中にふんだんにありますから、当然のことながら石英にも同様の変種があり、猫だけではなく、虎目、鷹の目とその色合いにより3種類の動物の目があります。
 いずれも繊維状の鉱物を含みます。
一般に石綿と呼ばれますが角閃石の一種であるリーベック閃石に鉄分が含まれているものです。
 鉄分が酸化されていないものは灰白色や青、青紫色で猫目石や鷹目石、あるいは青虎目石と呼ばれますが、鉄分の酸化が進むと茶褐色になり、虎目石と呼ばれます。
 南アフリカトランスヴァールのグリクアランド鉱山が世界的な産地です。
 全山が虎目石で出来ているような地質で大量に採れますから、価格も安く、現在ではこれらは宝石というより大半は装飾品として加工されています。