琥珀(Amber


ファセット・カットされた琥珀 背面の陰刻が立体的に浮き上がるブローチ 太陽のスパングル(Spangle:きらきらするもの)
を含む研磨された琥珀片
1.86ct Ø10.5x8.0mm 25.7ct 35x25x16mm 72x40mm 52.82ct 35x28x16mm 61.46ct 45x24x17mm
Baltic Sea

様々な加工と染色をされた琥珀、あるいはプラスチックの模造品

     
 リトアニア産の琥珀を草木染で加工したブレスレット
外径 65o ビーズ径 5−6o
 ビルマ産の赤い琥珀のブレスレット ?
外径 190o ビーズ径 16o
 リトアニア産の琥珀を高温高圧加工したブレスレット
外径 50o ビーズ長 最大 10o
 世界各地で発見される琥珀ですが、全てが宝飾品級ではありません。
様々な手法で加工や染色したもの、あるいは琥珀ではない、人口の樹脂(プラスチック)を琥珀に見せかけた模造品等々ありとあらゆる琥珀もどきが市場に姿を見せます。
 中央のビルマ産として姿を見せた赤い琥珀は、透明度が高く、手に取って眺めてみても余りにも均一の色合いと全く内包物を含まないことから、まず、プラスチックの、しかし美しい模造品と判断しています。

化学組成 結晶系  モース硬度 比重 屈折率
 環状炭化水素の重合体  非晶質    2−3   1.04-10 
 1.54-55 


原生の琥珀になる樹木
中米ドミニカのマメ科の木
Hymenoea Courbarilの枝と葉
同ニュージーランドの
カウリの木
Agathis Australis
ニュージーランドのコーパル
カウリガムとも呼ばれる 18cm
東アフリカのHymenaeaの
コーパル 165mm


古代の琥珀の発掘品
石器時代の馬 115mm
Poland
古代の魔よけ? 65mm
Sicilia
石器時代の装飾品 23mm
Yorkshire, U.K.
青銅器時代の琥珀のカップ 90mm
Hope, Sussex, U.K.
紀元1世紀ローマ時代の彫刻
”エロスとライオン” 4.6cm
   琥珀は木からにじみ出た樹脂の化石とも言えるものです。
正確には樹脂から乳香、ミルラ等の芳香成分や、アルコール、油脂,琥珀酸等の揮発成分が失われて硬化したコーパル (Copal) と呼ばれる樹脂が地中に埋もれている間にすっかり揮発成分を失い、それにつれて主にテルペンと呼ばれる環状の炭化水素の重合が進んで完全に不活性化したものが琥珀と呼ばれます。
 一般に樹脂が琥珀になるには地中で200〜1000万年もの年月が必要と考えられています。
しかし時間に加えて堆積していた地層の湿度、圧力、水分、化学的な条件がかかわっていることは確かですが、その詳細はまだ良く解明されていません。
 松脂のような樹脂を分泌する樹木は多数ありますが、全ての樹脂が琥珀になるわけではなく、長い年月の間に分解されない樹脂成分のみが琥珀として残ります。 
 現生の木では南米やアフリカのマメ科の木とニュージーランドのカウリの木の二種類が琥珀になる樹脂を分泌します。
  琥珀は海岸や川岸等で容易に発見される上に、柔らかく、加工が簡単で、その上美しい色合いの透明な宝石として、おそらく人類が発見した最初の宝石であるといっても間違いないでしょう。
 写真のように世界各地の遺跡からさまざまな用途に使われた琥珀製品が発掘されています。
 
琥珀の道
 先史時代から工芸品やお守り、宗教的な儀式、さらには燃やして薫香等、さまざまな用途に用いられた琥珀は、商取引の重要な通貨としての役割を果たしていました。
 すでに紀元前16世紀ごろには主要な産地であったバルト海沿岸からアルプス等の山脈を越えて地中海や黒海から北アフリカに至る琥珀の道が出来ていたことが欧州各地の遺跡の発掘の結果明らかになっています。
 アルプスの北側では岩塩鉱山で有名な Halstadt やウィーンの南100kmの小都市、その名も Bernstein (ベルンシュタイン : ドイツ語で琥珀を意味する) が琥珀の集散の中継地となっていました。
 紀元前6世紀の頃にはフェニキア人が本拠地のチュロスやキプロスの港を拠点に、アドリア海にあったエトルリア人の港や当時ギリシア人が建設した Massila (マルセイユ) から北アフリカのカルタゴやエジプト等地中海の支配しましたが、バルト海の琥珀はアフリカの象牙や金、香料と共に最も重要な商品でした。
 その後ヨーロッパを支配したローマ人は琥珀を髪飾りや、調度品、さらには薫香用に燃やして日常生活に贅沢に使いました。
 ローマ帝国滅亡後紀元4世紀からルネサンスに至るまで地中海を支配したのはアラブ系のイスラム教徒でしたが、彼らは琥珀の取引を独占して莫大な利益をあげました。

琥珀の呼び名

 
世界各地で古来から珍重されていた琥珀ですから実にさまざまな呼び名があります。 
日本では古くは薫陸香 (くんろく、あるいは、くんのこ) と呼ばれていました。
 マッコウクジラの腸管内に出来る香料、龍涎香に対比する呼び名でしょう。 琥珀は薫香としても珍重されたからです。
琥珀とは中国の呼び名です。
 琥も珀も玉のことです。 中国人は大層玉を好んだ民族ですから、膨大な玉の字があります。
 琥 (Ho) とは本来虎の形をしたヒスイを意味します。
外形は八角で中に丸い穴が開いた j (そう:T'sung) と呼ばれる兵を徴発するときに使う割符用の玉を半分にした虎の形をした玉の呼び名でした。
 珀 (P'o) はそれだけで琥珀を意味します。
 唐代の詩人、李白の ”蘭陵美酒鬱金香 玉椀盛来琥珀光” という余りにも有名な絶句にも琥珀の光が歌われています。
 琥珀の金色に因む呼び名は古今東西に共通していて、ギリシア人は琥珀を "elektron " と呼びました。
これは一般的に琥珀がこすると静電気を帯びることから電子、エレクトロンの語源となったと解説されます。
 しかし正しくは古代ギリシア語では光り輝くもの、琥珀や、金と銀の合金を意味しました。
 太陽が雅語で ”elektor” と呼ばれたのと同じ語源です。
 ラテン語に入った electrum (エレクトラム) も自然に産する金と銀の合金を意味し、いわゆる電子、エレクトロンの意味を持ちません。
 ラテン語では琥珀を ”glaesum : 輝くものの意味” とも呼びましたが、この言葉がドイツ語のガラスを意味する ”Glas” になり、さらにある種の非常に透明な琥珀が ” glessite と呼ばれるようになりました。
 琥珀は Succinite とも呼ばれることがありますが、これはラテン語で ”succinum : 樹液” を意味する言葉から起こったもので、琥珀が樹液起源であることに由来します。 
 今日一般的に使われる Amber (アンバー) は中世からルネサンスにかけて琥珀の取引を一手に握っていたアラブ人の呼び名に由来する言葉です。
 アラビア語で ”anbar” とは龍涎香のような薫香を意味しますが、この言葉もその語源をたどるとギリシア神話でオリンポスの神々が飲んでいた飲み物や香を指す ”ambrosia” に由来します。
 これらの単語に共通の印欧語の古い語幹 ”br” は燃えるという意味を持ち、ドイツ語で琥珀を意味する ”Bernstein (ベルンシュタイン : 燃える石” は ”brennen : 燃える” という動詞に由来します。


琥珀の年代

 琥珀は最も古い古生代後期石炭紀 (3.2億年〜) 時代のものから最も新しい第4紀 (180万年前〜現代) のコーパルまで様々な年代のものが世界各地から発見されています。
 市場に出回る琥珀の殆どを占めるバルト海とドミニカ産は第3紀 (6500万年〜180万年前) のものです。
琥珀の年代を推定するのは、それが採掘された地層から推定するしかありません。
 漂流して海岸や川岸で発見される琥珀は時代を特定できる昆虫でも含まれていない限り、年代は分かりません。 
宝飾用途は別として博物館や一般のコレクターには昆虫などの動物を含む琥珀の人気があります。 
石炭紀やこれに続く二畳紀 (ペルム紀)からジュラ 紀 (〜1.4億年昔) までの古い年代の琥珀には植物や菌類が含まれていますが、昆虫は未発見です。
白亜紀 (1.36億年〜) 以降、顕花植物の出現により花粉を食べる昆虫が出現してからの琥珀に昆虫が発見されます。


 世界の琥珀 (Ambers from World localities)
イギリスの琥珀 (Amber from United Kingdom)
Hastings Sassex くもの足(4.5cm)を含む琥珀 205mm 793g 170mm 1,048g
Wight Island Cromer, Norfolk Creat Yamouth, Norfolk
  イギリスには南部で発見される原産の非常に古い化石とバルト海から漂流してきて海岸で発見される二種類の琥珀が発見されます。
 とりわけ島の南部、サセックス州のヘイスティングズ (Hastings) からは1億4000万年昔の白亜紀前期の古い年代の琥珀です。
 南部のワイト島 (Isle of Wight) からも1億3000万年昔の琥珀の初期の昆虫を含む化石が発見され注目される産地です。

バルト海の琥珀 (Baltic Amber)
原産地のブルーアース
から産出した琥珀 70mm 
ガガンボと蜘蛛を含む
赤い琥珀 30mm
バルト産では2例目
トカゲ(37mm)
オークの雄花(1.5mm)を含む琥珀
Kaliningrad, Russia Gdansk, Poland
   世界の宝飾用琥珀の大半を供給しているのがバルト海の琥珀です。
琥珀はロシアのカリーニングラード (旧ドイツ領時代のケーニヒスベルク)の地下のブルーアース (Blue Earth) と呼ばれる海岸まで伸びる地下水脈の下に横たわる後期始新世から前期斬新世 (およそ5000万年から3500万年昔) の地層に発見されます。 
 海が荒れると、この地層から琥珀が巻き上げられて、バルト海沿岸のポーランド、ロシア、ドイツ、デンマーク、リトアニア、時にはイギリスの東海岸に打ち上げられます。 
 現在では海岸を20mほど掘り下げたり、沖合いでの大規模な浚渫作業により採掘されていて、ロシアだけで年間500トンの生産量があります。
 バルト産の琥珀はかつてこの一帯を覆っていた針葉樹の樹脂から出来たもので琥珀酸 (succinic acid) を 3〜8% と多く含み、そのため Succinite とも呼ばれます。
 宝飾品にならない質の悪い琥珀は、かつては加工して琥珀酸を採取したり、船の塗料、楽器のニス等多様な用途に使われていました。
 今日ではこれらは大半が合成品によって置き換えられてい
ます。
 
ユーラシア大陸の琥珀(Eurasian amber))
33mm 40mm 2匹の蜘蛛を含む琥珀 40mm
Lebanon Sicilia, Italy
  ユーラシア大陸ではこのほかにも多くの産地があります。
 アゼルバイジャンや、北シベリアのエニセイ川からカムチャッカ半島に至る地帯では 8000万年〜1億500万昔、白亜紀前期の琥珀が発見され14目、60種もの昆虫を含むことが知られています。、
 オーストリア、フランスのパリ盆地からアキテーヌ地方の海岸にかけての一帯、さらにレバノン、ヨルダン、イスラエルにも白亜紀時代の琥珀が発見されます。
 ドイツのビッターフェルトやルーマニアのブサウからは第3紀 (6500〜180万年前) の時代の琥珀が発見されます。
ルーマニアの Buzau はかつての琥珀の道の産地で、採掘のためにローマ帝国の植民地とされた土地です。
 イタリア、シシリア島のエトナ山地方では2500万年昔、斬新世から中新世の頃の琥珀が採れます。
シチリアの琥珀は Simetite と呼ばれます。

アジアの琥珀(Asian amber)
53mm 200匹の昆虫と植物を含む琥珀 10cm 世界最大級の透明な琥珀 50cm 虫色琥珀 10cm
Borneo Burma Burma 撫順炭鉱 中国
イギリス自然史博物館
Natural History Museum, London
アジアではビルマとボルネオの琥珀が有名です。 
 ボルネオの琥珀は中期中新生と比較的新しく、完全に化石化していないコーパルも含まれます。
 ビルマはイラワジ川上流のフカワン渓谷の後期白亜紀から中新生 (6000万年〜3000万年前) の地層から琥珀が発見されます。
 中国で漢の時代から作られていた琥珀の工芸品はビルマ産と確認されており、紀元前からビルマと中国との間に交易があったことが分かります。
 中国本土でも遼寧省,撫順や福建省福州の炭鉱から琥珀が発見されます。
何れも斬新世から始新世 (5500万年〜2600万年前) の時代のものです。子伯仲で発見された44種の昆虫のうち41種が新種と判明し、古生物学の宝庫として専門家の注目を集めました。
日本の琥珀 (Japanese Amber)
絶滅した直翅目の
翅と卵を含む琥珀
南洋杉の葉 国産最大級 40cm 19.9kg 1927年 多彩な色合いの琥珀
九戸郡野田村米田海岸 久慈市宇部町 久慈市夏井町 久慈市」(Kuji, Iwate, Japan)
 琥珀は古くから日本でも発見され、北海道の 1万4000 年前の旧跡維持代からも加工品が発掘されています。
 主な産地は岩手県久慈郡の中生代白亜紀後期 (〜6500万年前) の古い地層に発見されます。
日本国内では北海道から畿内に及ぶ広範な縄文時代や古墳時代の遺跡から琥珀の装飾品や加工品が発見され、古代から琥珀の道が存在していたことが分かります。
 畿内で発掘された琥珀の勾玉等は分析の結果、久慈産であったことが判明しています。
さらに江戸時代にも久慈産の琥珀は江戸や京都で根付や簪等の細工物や香の材料として出荷され、南部藩の重要な財源となっていました。
 20世紀初頭には数十kgの大きさの琥珀塊が採取されたこともありました。採掘は現在でも行われています。
アメリカ大陸の琥珀(American Amber)
55mmのトカゲ入り 青みを帯びた琥珀 85mm 琥珀の起源木 マメ科のジカトバ
Ymenaea Protera
43mm
Rep. Dominicana Chapas, Mexico
 アメリカ大陸ではアラスカのクク川、カナダ、アルバータ州の Medecinhat、同じくマニトバ州のシダー湖、アメリカ合衆国、ニュージャージー州で白亜紀の琥珀が発見されます。
 カナダとアラスカで合わせて50ヶ所以上から琥珀が発見されています。
デボン紀 (3.65億年以上昔) の最も古い琥珀も報告されています。
 マニトバ州の Cedar 湖の琥珀は明るい褐色で12目、52種もの多彩な琥珀が発見されます。
 ニュー・ジャージー州の琥珀のは1億年以上昔の古い琥珀です。
起源木はセコイアと考えられています。 もっとも古い蟻の化石を含んでいます。
 合衆国のアーカンソー州、メキシコ南部のチャパスし州サン・クリストバル地方の琥珀は 3500万年〜2500 万年前の斬新世から中新世のもので  Hymenoea Coubaril が起源木です。
 16種のムカデ等、19目、88種もの多彩な昆虫を含みます。
プレ・コロンビア時代の発掘品から装飾品や副葬品として使われていました。
 カリブ海のドミニカからは第三紀 (6500万年〜180万年前) の琥珀が採れます。
南米コロンビアのサンタンデルやブラジルからは第四紀 (180万年〜) のコーパルが発見されます。
 コーパルとはプレ・コロンビア時代からの原住民の呼び名 ”copalli ” に由来します。
 これらのうちで最も重要なのはドミニカの琥珀でバルト産と並び世界の琥珀の主要産地となっています。
ドミニカの琥珀はコロンブスが第2回の航海の際に発見されました。
 島の北部と西部の山脈の標高 300〜1000m の粘土質の地層や炭鉱で発見されるため本格的な採掘が始まったのは1960年代でした。
 材料の輸出が禁止される1979年までは世界の琥珀の流通の中心でもあるドイツのイダー・オーヴァーシュタインの業者が一手に取引をしていました。


グリーン・アンバー (Green Amber)
   
 8.7 カラットのエメラルドカットと 63 カラットのネックレース  9 カラットのブリオレットとビーズ
 
 
 ,  2006年の香港・宝石・時計ショーに ”グリーン・アンバー (Green Amber) ” の呼び名で、ペリドットのような、
明るい緑色の透明度の高い琥珀が登場しました。 出品者は香港の ” The Green Amber Ltd.” 社です。
 以後、東京、ツーソン等、世界各地の宝石フェアに継続して出品されました。
現在は日本のオークションやアクセサリーのネット店にも、バルト海、ポーランド、リトアニア産等の天然琥珀として
グリーン・アンバーの様々なアクセサリーが多数登場しています。
 このような色合いの琥珀は天然にはメキシコ産に稀に見られるだけです。
したがって、世界の市場に大量に出回っているグリーン・アンバーの正体は何かと気になります。
 2009年の Gems & Gemology 誌 Fall号に 詳細な報告が掲載されました ;
このペリドットのような透明度の高い緑色は、天然の琥珀を特別な圧力釜にて加圧と、2度の加熱処理を経て
得られたものとのことです。
 この効果は実験によっても確認されています。
 緑色の発色は、加圧と加熱処理によって琥珀内部に生じた、雲状に広がる微細な粒子の散乱効果で惹き
起こされると考えられます。
 世界各地で採れる琥珀やコーパルの多くがこの処理により明るい緑色に変貌し、琥珀としての硬度や屈折率、
耐久性等は、無処理の天然の琥珀と変わらないことが確認されています。

琥珀の贋物 (Immitations)
プラスチックに封入したトカゲ
(A lizard sealed in plastic)
昆虫の陰刻
(Engraved insect)
 世界中で採掘される琥珀の量は恐らく年間 1000トンを越えると考えられます。
比重が水とほぼ同じで軽く、普通の宝石と比べれば体積では3倍ほどになる豊富な量の琥珀が比較的に手頃な価格で供給されています。
 従ってわざわざ贋物や模造品を作る必要もありませんが、更に安価な材料のコーパル、ガラス、フェノール樹脂、セルロイド、カゼイン、プラスチック等を使った模造品も後を絶ちません。
 宝飾用の模造品はともかく、映画ジュラシック・パーク以来人気が急上昇している虫や動物入りの琥珀にも実に様々な贋物が横行しています。
 写真のトカゲはプラスチックに現生のトカゲを封入した贋物です。
右は本物のバルト産琥珀ですが、虫のように見えるのは背面の陰刻に因るものです。
 この他にもコーパルに現生の虫を封入した贋物等々、ありとあらゆるテクニックが横行しています。
即ち、大昔のバルト産の琥珀に現生の東南アジア産の虫やトカゲが入っていたりするわけです。
 これらを見分けるには現生の全ての昆虫や動物の分布に加えて広範な古生物学の知識が必要となりましょう。
宝飾品としての琥珀

 
大量に供給される琥珀は安価な宝石材料といえましょう。
従って宝飾品としての琥珀の価値は材質の良否と加工技術が決め手となります。
 冒頭の写真のファセット・カットは、琥珀としては珍しいものです。
柔らかく熱に弱い琥珀のファセット・カットは大変困難で、とりわけファセット面の稜線を硬い宝石のようにきれいに仕上げるのは至難の技です。
 二つはいずれもカットの技術では定評のあるイダー・オーヴァーシュタインの職人が手がけたもので、トパーズか黄水晶を思わせる出来映えです。
 比重が低い樹脂の割には屈折率が水晶並みに高いので旨くカットされた場合には古代のギリシア人が称えたように、太陽のように眩く輝きます。
 冒頭写真の中央のブローチは大きく透明な地にロシア風の彫刻が見事で思わず買ってしまったものです。
右の二つは普通に研磨しただけの琥珀片です。 
 中に含まれる平板状のインクルージョンは長い間、植物の種の化石かと思っていました。
が、琥珀に普通に出来る放射状のひび割れで、太陽のスパングルと言う優雅な名前であることを最近知りました。
 これは加熱して造ることも出来るそうです。
Top Gemhall