硫酸鉛鉱(Anglesite)

 

硫酸鉛鉱 14mm
Monteponi鉱山 Sardinia、Italy
270.06ct 36x26mm
 
Tuissit Morocco
Art Grant Cutting
宝石質結晶 70ct 3x2cm
Tuissit Morocco
4x3cm Tuissit Morocco

 

化学組成
(Formula)
結晶系
(Crystal System)
モース硬度
(Hardness)
比重
(Density)
屈折率
(Refractive Ondex)
PbSO4 直方晶系
(Orthorhombic)
3  6.3   1.88-89 
 
 アングルサイトの名はイギリス中西部の都市リヴァプールの西方100kmにあるアングルシー(Anglesey)島に因みます。
この一帯は古来から鉛と亜鉛の豊かな鉱床地帯で、アングルシー島の鉱山はローマ帝国の時代から採掘されていました。
 アングルサイトは鉛や亜鉛鉱山に熱水性の二次鉱物として産出します。
 ありふれた成分の割には比較的に稀な鉱物で、命名の由来となったアングルシー島の、その名も Lead Hills (鉛ヶ丘) 鉱山の他、ドイツ、オーストリア、
イタリアのサルジニア島、ロシア、メキシコ等に産出します。 
 宝石質の美しい結晶は、かつてはナミビア北西部の銅、鉛、亜鉛鉱山のツメブ鉱山産が有名でした。
ツメブ鉱山はこの他にも Wulfenite (モリブデン鉛鉱)、Azurite (藍銅鉱)、Dioptase(翠銅鉱)、Mimetite (ミメット鉱)等々、息を呑むような見事な結晶を19世紀末以来産出し続けていて、その標本は世界の博物館や個人のコレクションとして見ることが出来ます。

ナミビア ツメブ鉱山の結晶
アングレサイト 7x3.5cm
Keith Proctor
 Collection
ミメット鉱 9x8cm
Keith Proctor
 Collection
藍銅鉱16cmとスミソナイト
Wiiliam Severence
Collection 
翠銅鉱と方解石 2.7x2.5cm
Leonard Bedale
 Collection
モリブデン鉛鉱 6.5x5.5cm
David Eidahl
Collection

 さて、アングルサイトの美しい結晶標本は最近見かけるのはモロッコのトゥイシット鉱山産が殆どですが無色〜淡黄〜黄金の美しい結晶がふんだんに市場に出ていて、鉱物ファンを喜ばせています。
 モース硬度が3と低く傷つき易いため、宝飾用途には向きませんが、高い屈折率のためカットされると黄金の煌きを見せる豪奢なルースとして時々市場で見かけます。 
 冒頭の写真のルースは270カラットの異例の大きさで、稀に見る逸品ですが、数カラットの大きさのルースなら時々見かけることがあります。腕利きの宝石カッターが手遊びにカットするようです。 
 カラット当りの値段は淡黄のもので30ドル、黄金のもので60ドルと、高価な結晶標本と比べると意外に妥当な水準です。 
標本としての価値はなくともカットが可能な結晶の破片が沢山とれることと、劈開性が不完全なためカットは困難ではなく、また一部の宝石コレクターが求めるだけで需要も少なく高い値がつかないのでしょう。 

 

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