重晶石(Baryte, Barite)


11.85ct
14.84x9.45mm
4.0ct
 Ø8.7x6.1mm
 8.5ct
10x9mm
U.K.  Italia   U.S.A.


 
4.00ct Ø8.7x6.1mm  11.85ct  14.84x9.45mm  8.5ct 10x9mm  45x35x33mm
 Monteponi, Sardegna, Italia  Youlgreave, Derbyshire, England  Book Cliffs, Mesa Co., Colorado, U.S.A. 


 化学組成 
(Formula)

結晶系
(Crystal System)

モース硬度

(Hardness)

比重
(Density)

屈折率
 (Refractive Index)
BaSO4
 
直方晶系
 (Orthorhombic)  
 
  2½3½   4.3 - 4.7   1.634-648



結晶形(Crystal Form)
  37x28x27mm        50x34x20mm        19x13x8mm
     
Leeson Pocket near Stoneham, Weld Co., Colorado, U.S.A.



40x43x20mm
Cave in Rock, Minerva Mine
Illinois, U.S.A.
61x41mm
Cueva Victoria, Cartagena, Spain
3.5x2.2x1.5cm          5x4.3x3.5cm
Meikle Mine, Elko Co., Nevada, U.S.A.

 重晶石は毒重石(BaCO3)と共にアルカリ土類金属元素のバリウムの主要鉱石として熱水鉱床、二次鉱床、堆積鉱床等に広範に発見されます。
 ギリシア語の「barys :重い」に因んで命名されたバリウムの硫酸塩ですからずっしりと重い鉱物です。
 胃のレントゲン検査の時に飲まされるバリウムとはこの重晶石の粉末を粘着材と混ぜたものです。
 水にも胃液にも溶けませんから毒性はありません。
 一方バリウムの炭酸塩である毒重石の方は胃液の希塩酸に溶けるて体内に吸収されるので、その名のとおり飲むと危険です。
バリウムの成人に対する経口致死量は1〜15gと余り強力ではありませんが毒性があります。
 このため水溶性のバリウム化合物は殺虫剤や殺鼠剤に用いられます。
 しかし石油やガス掘削用ドリル孔の潤滑用、冷却用の泥材としての用途が80%を占めます。
 重晶石を原料とするバリウム化合物はその他、建設、繊維、製紙、ガラス製造、等々、広範な産業用途に使われています。

 Baryte is the most common barium mineral, discovered in hydrothermal, sedimentary and secondary veins. As the name derives from greek "barys : heavy", baryte is a well heavy mineral.
Over 80% of baryte is used as a drilling mud for oil and gas wells. And used in the manufacture of paints, some floor coverings and textiles, and as a filler for paper. As "barium meal" in medical X-ray photography. 

 写真のように世界各地から平板状、柱状、或いは薄い板状結晶が集合した薔薇の花びらのような形や、針状、鍾乳状、粒上、塊状等々、多彩な姿と色合いの美しい結晶を産します。
 色は無色、灰色、赤、茶色、黄色、淡青、淡緑、と、多彩です。主に鉄分による着色ですが、淡青色の場合はしばしば連続した固容体をなす天青石 (SrSO4) のストロンチウムを置換して含まれる微量のラジウムの放射線によると考えられています。

コロラド州の重晶石(Barite from Bookcliffs, Colorado, U.S.A.) 

 アメリカ、コロラド州のグランド・ジャンクションに近いブック・クリフスからはガラスのように透明度の高い無色の結晶を産し、稀に宝石としてカットされることがあります。
 冒頭の結晶と研磨された石がそれですが、どう見ても冴えないルースです。
 これは30年余り昔、ツーソンの宝石ショーで買ったものです。
初めてのツーソンではそれまで見たことも聞いたこともない宝石ばかり。
 ベーライトといわれても何のことか見当も付かず、硫酸バリウムと言われたのを硫酸ベリリウム(Barium は英語ではベイリウムと発音される)と聞き間違え、そんな鉱物があったのかと、110ドルと目をむくような高値にもかかわらず買ってしまったものです。
 今なら稀な宝石だからと言って美しくもないルースに手を出すことはありません。
 が、当時はベリリウム鉱物なら緑柱石、金緑石、フェナカイト等、名だたる宝石鉱物の仲間かもしれないと、とんだ誤解から手に入れたものでした。
 もっとも、重晶石は硬度の低さと完璧な劈開性からカットが大変難しい鉱物ではあります。
したがって、その後滅多に見かけたことはありません。
 カラット当たり13ドルなら、妥当な値段だったかもしれません。
 とは言え、重晶石はやはり、冴えないルースよりは、結晶の美しい色合いと姿を眺めるのが最も相応しい鉱物でしょう。
 
 Crystals usually tabular, parallel to base, often diamond shaped due to a vertical prism, a shape which may be further modified, especially by other prisms; prismatic crystals common, elongated parallel to the a-axis ; also as globular concretions and as fibrous, lamellar, granular and earthy aggregates ; some "desert roses" are rosettes of baryte crystals enclosing sand grains.
Color varies from colorless, white, gray, and red, brown, yellow and pale green are colored by iron impurity, while pale blue derives from radiation of radium impurity, replacing strontium, which is a major element of celestine, forming continuous solid solution with baryte. A water clear crystal, discovered at Book Cliffs near Grand Junction, Colorado is so transparent that rarely faceted as gem stone as shown at top photos. Due to low hardness and perfect cleavage, faceted baryte is such rare stone that I have never seen except the one I obtained over 20 years ago at Tucson.
However, I would recommend you to appreciate baryte crystals with beautiful colors and forms than facetted one.


スコットランドの重晶石(Barite from Youlgreave, Derbyshire, Scotland, U.K.)

 珍しい産地ですが、スコットランド産の無色透明な重晶石に遭遇しました。
 スコットランド語の地名、Youlgreave には由来が不確かな 50 近い異なる綴りがあり、それぞれのいわれについては今も議論が沸騰しているとのこと。
 その一つに Yellow grove (緑の森)というのがあり、この一帯の鉛や亜鉛の黄色の鉱床の露頭を表しているとのこと。
 ウィキペディアではヨールグリーヴと発音されるこの地には、12世紀来の鉛や亜鉛の鉱山群があり、鉱山町として栄えたとあります。
 鉱山は20世紀前半に枯渇したようですが、何故か、今頃になって出現したのが、12カラット近い、大きく、透明度の高い、純白の無傷のルースです。恐らく古い結晶標本からカットされたものでしょう。 
 アメリカ屈指のカッター、Michael Gray の技の冴えには感嘆するのみ。

イタリア・サルデーニャの重晶石( Barites from Sardegna, Italia)
   
 1997年に閉山となったモンテポーニ鉱山跡
(Aerial view of the abandoned
facilities of Monteponi mine)
 露天鉱跡
(Aerial view of the Congiaus openpit)
 標高300mから海面下200mを埋め尽くす銀に富む方鉛鉱脈
(Geologic section across the Monteponi mine
of argentiferous galena ore veins)
     
 モンテポーニ周辺産の重晶石(Barites recovered around Monteponi, Sardinia, Italia)
   
 7.5cm  9.6cm 7cm   12cm  4.0ct Ø8.7x6.1mm
Riu Bachera Mine, Nuxis Musca Droxiu Mine
Silius 
the Santa Lucia Mine
Fluminimagiore 
 Italia
 30年ぶりで新たにイタリア産のきれいな淡金色の重晶石を入手しました。
正確な産地が分からないので、一体イタリアの何処で宝石質の重晶石を産するのか調べてみましたが、どうやら、イタリア・サルデーニャ最西南部モンテポーニ産の重晶石なら、宝石としてカットできそうです。
 サルデーニャ島には他にも何か所か重晶石の産地がありますが、イタリアで最も豊かな鉱物資源の産地として知られています。
 とりわけ、モンテポーニ鉱山は紀元前6世紀頃から、最初はカルタゴに植民地を置いたフェニキア人が、次にローマ帝国が支配し、最初の400年間で60万トンの鉛と1000トンの銀が採掘されたと推定されています。
 ローマ帝国滅亡後、12−14世紀にはピサの、続いてスペインのアラゴン王国、19世紀初頭からはサヴォイ家の支配下に入り、1997年の閉山まで、何と2500年の長期にわたって、鉛、亜鉛、銀、鉄、マンガン、アンティモニー、銅、モリブデン、ニッケル、コバルトを産出してきました

Top Gem Hall