灰長石と亜灰長石
(Anorthite & Bytownite)

 

灰長石(Anorthite)の結晶
 結晶の大きさ 10mm
 Pasmaada Finnland
10〜50mm 倶多楽湖外輪山 北海道 半透明の劈解面を示す結晶
黒褐色の包有物は橄欖石
37x21x13mm 倶多楽湖
銅片を含む結晶 37mm
八丈島石積ヶ鼻

 

亜灰長石(Bytownite)
亜灰長石 
ルース1.6ct 結晶9x6x5mm 
Plush, Oregon, U.S.A.
2.78ct 10.8x8.2mm
 New Mexico, U.S.A.
5.41ct 14x11mm
Trichy India

 

灰長石と亜灰長石の結晶形
余市産灰長石 三宅島産灰長石 倶多楽湖外輪山産の灰長石 亜灰長石

 

 
 斜長石族の中でほぼ純粋なカルシウム長石で曹長石(ナトリウム長石)成分を10%程度含むのが灰長石です。
 Anorthiteの名はギリシア語の”Anorthos:斜めの”に由来しますが、結晶のbc軸が直交する正長石に対して、僅かに結晶軸が傾いている斜長石を代表する命名です。
 火山の玄武岩や斑糲岩溶岩の捕獲結晶として広範に発見されますが、しかし宝石質の結晶はもちろん、大きく形の良い結晶も稀です。
 私の鉱物図鑑には”ピンク色をした発達の貧弱な粒状結晶がイタリアの Val di Fassaで採れる”とあります。
 一方,”日本の三宅島からは50mmに達する結晶を産する。
その他南極のエレバス山、イタリアのモンテ・ソマでも発見される”とありますから、日本産の灰長石の大きな形の良い結晶が世界的に名高いようです。
三宅島の他、八丈島、北海道の倶多楽(くったら)湖外輪山や余市等で最大50mmの大きく形の良い結晶が採れます。
 冒頭の写真の具多楽湖外輪山産の結晶は30分程の採集の成果です。
三宅島と八丈島産の灰長石には銅片を含む透明な結晶が採れることがあり、稀にルースとしてカットされて宝石のサンストーンとなります。
 曹長石成分比を10〜30%まで含むものは亜種とされ、それゆえ亜灰長石と名付けられています。
 英語のBytowniteはカナダの首都オタワの古名、Bytownに由来するもので1835年に命名されました。
 亜灰長石は宝石の資料にはもちろんのこと、鉱物の資料にも単独で記述されることは稀です。
斜長石族の一つと一行で片付けられ、写真すらありません。
 斜長石族の鉱物で結晶形は典型的な長石族と同じですから、結晶を手にとっても肉眼でグループの他の長石類と識別することは不可能です。
 ルースも同様に比重と屈折率を測らない限り肉眼での識別は出来ません。
長石族の中では比重が2.70〜73、屈折率が1.564〜582と、最も大きな価を示します。
 ほぼ純粋な灰長石は更に大きな価を示す筈ですが,宝石用ルースとしてカットされることはまずありません。
 念のために1966年発行の久米武夫著“新宝石辞典”を調べたら記載されていました。

流石と言うしかありません。
 ”Bytownite(バイタウナイト) : カナダOntario州産の淡黄白色のFeldspar”とありました。
簡潔にして要を得た記述です。
 現在でも亜灰長石について、産地以外にこれ以上付け加える情報は殆どありません。
  久米武夫氏が実際に亜灰長石のルースを見たことがあるかどうか、恐らく実物を見ていないかもしれません。
半世紀昔にこんな地味なルースが宝石商の手元に巡って来ることはまずなかったでしょう。
世の中に最も豊富に存在するのに、宝石としてはとても稀な鉱物が亜灰長石です。
 現在でも大きな宝石フェアで、3年か5年に一つくらいは稀少石専門の業者のブースにひっそりと見かける程度です。
その割には色々の産地のルースが集まってしまいました。
 これはコレクションを始めた頃に、得体の知れないルースなら嬉しくて何でも飛びついた、無知ゆえの賜物でした。
 稀少ではあっても見映えのしないルースで、カラット当たり10ドルもしませんから手軽に入手できたわけです。

 

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