カヴァンシ石とペンタゴン石
(Cavansite and Pentagonite)
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カヴァンシ石 (Cavansite) 6x4x3.5cm | ペンタゴン石 (Pentagonite) 3.4x2.4x2.2cm | |
Wagholi Quarry, Pune, Maharashtra, India |
カヴァンシ石とペンタゴン石とは冒頭の写真のようによく似た色合いの放射状の結晶を見せる鉱物です。
いずれも1960年代にアメリカ・オレゴン州のオワイイー湖 (Lake Owayhee ) 国立公園で発見され、1973年に新鉱物として公表された鉱物です。
これらの鉱物が一般に知られるようになったのは、その後インドのマハーラーシュトラ州、プネーの採石場にてカヴァンシ石が発見され、世界の鉱物市場に大量かつ、継続的に出回ったためです。
当初はカヴァンシ石が、次いで、2000年代初頭から少量のペンタゴ石が姿を見せました。
カヴァンシ石もペンタゴ石は外見や色合いがそっくりですが、ほぼ同じ組成と結晶系の鉱物です。
名前と成因
カヴァンシ石は主成分のカルシウム(Ca) 、ヴァナジウム (V) 、と珪素 (Si) の三つ頭文字部の読みを併せて命名された鉱物名です。
ペンタゴン石は、結晶が双晶となった場合に上から見ると5角形(Pentagon)を示すことから命名されたとのことですが、実は拡大写真をいくら眺めても、違いが分かりません。
この、同じ組成の二つの鉱物が現れた時、どう違うのかと不審で、ずっと気になっていましたが、今回、よくよく調べて、その違いが明らかになりました ;
成因について
インドの広大なデカン高原は数百メートルの厚さのアルカリ玄武岩層で覆われ、種々の沸石類を産します。
カヴァンシ石とペンタゴン石とは、デカン高原東部のマハーラーシュトラ州のプネー(植民地時代には英語読みで Poona : プーナ 呼ばれていましたが、1999年以降、マラーティー語で Pune と変わった)郊外のワホリ (Wagholi) 採石場で発見されました。
玄武岩層中に、高温の熱水で破砕作用を受けた安山岩の割れ目に結晶が晶出したものです。
この高温の超臨界状態の熱水中に含まれるカルシウム、ヴァナジウムと珪酸成分とが、300℃以下で珪酸の四面体が四環と八環との結合した結晶となったのがカヴァンシ石で、熱水の温度が300℃以上に高い時、珪酸の四面体が四環で結合した結晶がペンタゴン石とのことです。
ペンタゴン石結晶の複数の双晶が擬 5 回対称となった場合に、結晶をC軸方向から見ると5角形に見えるためにペンタゴン石と命名されたとのことです。
発色について
カヴァンシ石とペンタゴン石の鮮烈な青い色は四価のヴァナジウムイオンによる発色です。
インドの広大なアルカリ玄武岩には平均で 300ppm、Pune 付近では最大で 1500ppm もの高濃度でヴァナジウムが含まれています。
アメリカ、オレゴン州産も同様に鮮烈な青い色ですが、稀に若葉色の発色のペンタゴン石が報告されています。
恐らく、インドのデカン高原産の緑色の魚眼石と同様に、歪んだ八面体配位を形成する四価のヴァナジウム・イオンによる発色ではないかと思われます。
化学組成 (Formula) |
結晶系 (Crystal System) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density) |
屈折率 (Refractive Index) |
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カヴァンシ石 (Cavansite) |
Ca(VO)Si4O10・4(H2O) | 直方晶系 (Orthorhombic) |
3 - 4 | 2.21-31 | 1.542-547 |
ペンタゴン石 (Penagonite) |
Ca(VO)Si4O10・4(H2O) | 3 - 4 | 2.33 | 1.533-547 |
オレゴン州のカヴァンシ石とペンタゴン石
(Cavansite and Pentagonite from Lake Owyhee,Oregon, U.S.A.)
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1960年代初頭、最初にカヴァンシ石が発見されたオレゴン州オワイイー湖畔の断層と採掘光景 | オレゴンのカヴァンシ石 径2㎜ |
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Cavansite Field 1㎜ | Cavansite 2.6x1.5x1.3㎝ | Pentagonite Field 1.5mm | Green Pentagonite Field 1.1mm |
1960年代初頭、アメリカ、オレゴン州再東南のオワイイー湖畔の断層崖にて、大きさが 1㎜ にも満たない程の、小さいながら、美しい色合いの放射状結晶が発見されました。
世界で初めてのカヴァンシ石と、後に青と、稀に緑色のペンタゴン石も発見されました。
インドのカヴァンシ石とペンタゴン石 (Cavansite and Pentagonite from India)
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ワホリ採石場 (Wagohli quarries, Pune, Maharashtra, India) |
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白い輝沸石(Heudlandite) 上のカヴァンシ石 結晶集合 |
インドのカヴァンシ石はオレゴン産と比べると結晶が10㎜から最大では40㎜と大きく、大量に産します。
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Cavansite 15x11x7mm | Cavansite 4㎜ | Cavansite 4.0x2.9x2.3cm | Cavansite 3.7cm |
Wagohli, Pune, India |
ペンタゴン石 (Pentagonite)
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Pentagonite 1,5x1cm | Pentagonite 2.5mm | Pentagonite 3.1cm | Pentagonite 4x2.0x1.5cm |
Wagohli, Pune, India |
双晶が五角形を示す結晶
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1㎜ | 3mm | 2.5mm | |
Wagohli, Pune, India | Lake Owhyee, Oregon, USA. |
鮮烈な色合いのカヴァンシ石が市場に姿を見せてからしばらくして、同様の鮮烈な色のペンタゴン石が登場しました。
数が少なく、1㎜ 程の小さな結晶を眺めてもどう違うのか全く分からなかったというのが実情でした。
今回、いろいろと調べてみて、前述のように、結晶生成時の温度の違いにより、高温では珪酸の四面体の四環で結合したペンタゴン石がの複数の結晶が擬 5回対称を見せる場合にC軸方向から見ると5面体に見えることで命名されたと資料にありました。
しかし、全ての結晶は形も色合いもカヴァンシ石とそっくりで、Mindat 等の膨大な写真の中から、どうやら5面体を見せるごく小さな結晶の写真を探し出しました。