天青石(Celestine)
1.90ct 6.7x6.4mm | 0.49ct 6.1x4.1mm | 7x6x5cm |
Sakoany, Madagascar |
化学組成 (Composition) |
結晶系 (Crystal system) |
結晶形 (Crystal form) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density) |
屈折率 (Refractive Index) |
SrSO4 | 斜方晶系 (Orthorhombic) |
3 - 3 1/2 | 3.96−98 | 1.619−632 |
名前と産状
最初に発見されたアメリカ・ペンシルベニア州の淡青色の結晶の色から、ギリシア語とラテン語で”天、空色”を意味する”coelestis”に因んで1798年に命名されました。広範に発見される鉱物にしては発見と命名とが18世紀末と、意外と遅かったのは後述するように、重晶石等の類似した鉱物との識別が出来なかったためと考えられます。ストロンチウムとバリウムとが新元素として確認されたのは1808年のことでした。
天青石とは英名の直訳ですが、詩的な響きを持つ美しい鉱物名です。
主に堆積岩中にノジュール(球状の団塊)として発見されます。平板状、柱状の結晶の他に繊維状、粒状の集合体としても発見されます。
化学組成から分かるように周期律表のIIa族のカルシウム、ストロンチウム、バリウム、と連なるアルカリ土類金属の硫酸塩や炭酸塩鉱物のグループです。イオン半径の近いストロンチウム、バリウムとカルシウムとは交互に硫酸塩鉱物である重晶石(BaSO4)のバリウムや硬石膏(CaSO4)のカルシウム、天青石のストロンチウムとが一部或いは全部が置き換えて入り込んでいる例があります。
そのためこれらの鉱物は外観からは区別が出来ません。
世界中で広範に発見され、酸化ストロンチウムを56%含むため、ストロンチウムの主要鉱石として採掘されます。
世界の天青石結晶(Celestine crystals) 7x5x5cm 6x4x3cm 4.3x4.3x2.2cm 4cm La Parajola Mine, Cartagena, Spain Machów Mine,Tarnobrzeg, Poland Beineu-Kyr,Turkmenistan Sakoany, Madagascar
マダガスカルの天青石産地
島北西部のSakoany村 天青石の産地 青の部分 無数の縦坑が掘られた採掘地 地下15mに達する縦坑 掘り出されたノジュール
現在鉱物市場に流通する天青石の大半はマダガスカルの北西部、ボンベトカ湾に面するサコアニー村の近くのただ一ヶ所の産地からのものです。
豊穣な鉱物資源に恵まれてたマダガスカルですが、全島のほぼ三分の一に相当する島の西側の堆積岩からなる地層には殆ど目ぼしい鉱物を産しません。
2008年央にサコアニーの北東400kmの海岸のマングローブの茂る湿地帯にウラル山脈産のそれに匹敵するデマントイド・ガーネットが発見されましたが、それ以前は1967年に発見されたこの天青石が西海岸の唯一の鉱物産地でした。
サコアニーでは、水辺に洗われて露出した天青石ノジュールに牧童がつまずいたことで発見されたと言い伝えられています。
この地の天青石は凡そ6000万年昔の新生代第三期初め、暁新世の頃に生成されたと考えられています。浅い海岸の泥と砂の地層で分解された有機物からの硫黄と海水中のストロンチウムとが反応して温度の安定した海岸の泥の中でゆっくりと硫酸ストロンチウムの結晶が成長したのでしょう。
ノジュールは地下30mの深さに二層で発見され、2〜5mの厚さの上層部には2cmの長さの結晶を含む10cmの大きさの、より深部の下層部からはさらに大きな結晶を含む10〜20cmの、時には長さが1m、重さが100kgものノジュールが発見されます。
最初に天青石が発見された当初は、1〜2mも掘ればノジュール層に行き当たりましたが、間もなく掘りつくされ、現在では10〜15mも掘る必要があります。
凡そ10km四方の広さの鉱区があり、70人ほどの村人が乾季の間だけ手作業で採掘しています。
採掘されたノジュールは全てが標本として世界の鉱物市場に流通してゆきます。
恐ろしく交通が不便な土地での人手による採掘が行われているため、今後も安定した天青石標本の供給が期待できるでしょう。
天青石ルース
アメリカやスペイン、イタリア、ポーランド等、世界各地から綺麗な天青石の結晶が採れますが、宝石としてカット可能な大きな結晶が安定して採れるのはほぼマダガスカルのみです。
かなり大きな宝石質の結晶が採れますが、それにしてはこれまで市場で天青石のルースを見る機会は全くありませんでした。
今回入手して、なぜ天青石がカットされないのかようやく分かりました。
写真のように全く見映えがしません。元々かすかに青い色が、小さなルースにカットされてしまうと、完全に失われてしまいます。
モース硬度が低く完全な劈開性があってカットが難しい上に、出来映えが今ひとつというのでは、カットされないのも止むを得ません。
美しい名前の天青石はその涼しげな結晶の姿を楽しむべし。
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