コールマン石(Colemanite)
15”スクリーンで実物大 | |||||
6.79ct 13.9x13.9x8.8mm | Coast to Coast の写真 | ||||
Ryan, California |
化学組成 (Formula) |
結晶系 (Crystal System) |
結晶形 (Crystal Form) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density ) |
屈折率 (Refractive Index) |
複屈折 (Birefringence) |
Ca2B6O11・5H2O | 単斜晶系 (Monoclinic) |
4 - 4½ | 2.42 | 1.584-614 | 0.028 |
名前と産状「Name and Occurence)
コールマン石は他の硼素鉱物と同様、硼素に富む火山性の熱水や海水溜まりが蒸発して堆積した層に生成したものです。
このような地層は地中海沿岸のトルコ西部やロシア、カザフスタン、チベット、アルゼンチン、ボリビア等世界各地にありますが、特に名高いのはアメリカ、カリフォルニア北東部のデス・ヴァレーからモハーヴェ砂漠に至る一帯です。
冒頭のルースを産したライアン (Ryan) は東側のラスベガスと西のセコイア国立公園との中間にあり、グーグルアースの地図と写真とを拡大すると巨大な露天掘り鉱がはっきりと確認できます。
この地の硼素鉱床は2000万年昔の噴火の際に噴出した硼素に富む熱水が低地に堆積して生成されたもので、世界で有数の硼素鉱床です。
因みに世界で最大の硼素鉱の埋蔵量があるのはトルコで、世界の総埋蔵量2億トンの70%余りを占めています。
次がアメリカで20%と、この二国で世界の大半を占めています。
トルコの膨大な埋蔵量は、地中海の地質学的な歴史と大いに関係があります ; 地中海は、今から596万年前から533万年前までの63万年の間、
イベリア半島とアフリカ大陸とが地殻変動によって出来た陸橋で堰き止められたために完全に干上がっていました。
とりわけ地中海東部とエーゲ海ともともと塩分濃度の高かった地域では大量の塩分や硼酸成分の厚い堆積層が生成され、その後の地殻変動で隆起した一帯に厚い硼酸塩鉱床が生成されたのだと考えられます。
デス・ヴァレー一帯に硼素鉱脈が発見されたのは1870年のことで、採掘権を買い取り硼素鉱山の経営者となったWilliam. T. Coleman に因んで命名されたのがコールマン石です。
その他、産地のケルン郡に因むケルン石、インヨー郡に因むインヨー石、繊維状の結晶の集合がレンズ状の効果を見せる事から、一般にテレビ石と呼ばれるウレックス石 (Ulexite), 等の硼素鉱物と共にコールマン石が採掘されています。
デス・ヴァレー一帯には有名、無名の無数の硼素鉱山があり、地下100m程の深さに堆積する、厚さが50-100m、広さが数平方㎞に及ぶ硼素鉱脈があちこちで掘られています。
硼素化合物は昔から主に硼砂として知られ数千年の昔から、金細工の蝋付けの際の溶融材として世界の古代文明が利用していました。
現在では、硼酸ガラスや耐火材、薬品等、広範な分野で利用されています。
United States Borax Mine、Death Valley, California | US Borax Openpit, Kern Co., California |
コールマン石 結晶( Colemanite Crystal) | |||
1.5㎝ Boron Open Pit | 276mm Death Valley. California |
その他の硼素鉱物 (Other Boron Minierals) | |||
硼砂 ( Borax ) 60mm | インヨー石(Inyoite) | ケルン石(Kernite) 100mm | Ulexite 20mm |
Na2B4 5(OH)4・8H2O | CaB3O3(OH)5・4H2O | Na2B4O6(OH2) ・3H2O | NaCaB5O6(OH)6・5H2O |
Searles Lake, California | Kirka, Turkey | Boron, California | Death Valley, California |
コールマン石のルース(Colemanite loose)
硼酸塩を含む鉱物の宝石質のルースは世界で広範に発見されるトルマリンを例外として、他にはシンハリ石、エレミア石、ペイン石、ハンベリー石、ダンベリー石、グランディディエ石、と稀産の鉱物が殆どです。
大量に産出するコールマン石の宝石質のルースは半世紀余りのコレクションを通して、初めてお目にかかりました。
Mindat には数少ないルース何点かの写真が掲載されていますが、いずれも内包物を含む透明度が低いものが多く、宝石としてカットされるような透明度の高い結晶は極めて稀にしか採れないことが分かります。
冒頭のルースは肉眼ではクリスタル・クリアーというべき透明度の高いものですが、10倍余りに拡大された写真で見ると光の反射と屈折により真っ黒に写ってしまいます。
照明や角度を調整しながら50枚ほど撮って何とか見られるようになったのが左の写真です。
とりわけトライアングル・カットのルースは色付きの石でも、暗い影の処理には注意が必要ですが、無色透明な石の場合は肉眼ではほとんど気にならない黒い影が写真に撮って拡大されると盛大に目立ってしまいます。
右側の影の多い写真は、カットした Coast to Coast の手になるものです。 彼らも専門のカッターとして無数のルースの写真を撮っていて、いずれも見事な写真ばかりですが、さすがの彼らもコールマン石の撮影にはお手上げだったようです。
コールマン石は、採掘鉱山と結晶標本の写真からも分かりますが、普通は白い粉の団塊のような状態で掘り出され、稀に採れる結晶も小さく、凡そルースとしてカットされるような大きく透明度の高い結晶は滅多にありません。