マダガスカルのデマントイド
(Malagasy demantoid)


デマントイド(Demantoid)
1.75ct 6.60x6.05x5.05mm

Ambanja, northern Madagascar
 マダガスカル北西部のアンバンジャ近郊にて2008年半ばにデマントイドが発見されました。
マングローブの沼地で蟹を捕っていた漁師が見つけた緑色の石が首都のアンタナリヴォに運ばれ, デマントイドと確認されたのです。
 ”高価な緑のサファイア” 発見の噂を聞きつけた北部のアンボンドロミフェイのサファイア鉱床の鉱夫たちが移動して採掘を初め、2009年4月には数百人の鉱夫と内外の仲買人とが殺到し、5月末には鉱夫の数が2000人にまで増えていました。

 In mid-2008, crab fishermen in northern Madagascar found some green stones in a mangrove swamps. These were brought to Antananarivo, where they were identified as demantoid. Eventually, sapphire diggers from Ambondromifehy heard the news and started to work the area. Beginning April 2009, rumors of a new find of expensive "green sapphire" spread and several hundreds miners, buyers and brokers - both Malagasy and foreign - rushed to the site, where, about 2000 miners were digging as of late My 2009.

 
マングローブの沼地での採掘光景
Mining site at mangrove swamp near Ambanja
 
デマントイド結晶(demantoid crystals)
max 3.1g 16.5x12.3x8.6mm

 マングローブでの採掘は干潮時にしかできません。
満潮時には海水が侵入するため、トンネル内の水を汲みださないと採掘が出来ません。
 発見当初はトンネルが浅かったため、水を汲みだすのも簡単でしたが、トンネルの深さが増すにつれて、排水が困難となり、1年も経たずに、採掘が不可能となりました。
 しかし、地下には砂岩と石灰岩とからなるスカルン層に貫入した煌班岩 (Lamprophyre : 斑晶微斜長岩、斑晶角閃岩、斑晶透輝石等からなる塩基性の火成岩脈)中に膨大な量のデマントイド・ガーネットが含まれていると考えられます。
 したがって、アメリカの企業が、マングローブ一帯を囲む、高さ6mのダムを建設する工事を2018年に着手し、ダムの完成後には重機による効率的な採掘が可能になると期待されます。
  
母岩付き結晶 (Demantoid matrix)
85x70mm 19x18x10mm 20x18x10mm
Ambanja, northern Madagascar

地質と産状(Geology and occurences)

 
粘土と結晶岩に囲まれた白いスカルン層の10cm程の大きさの空洞の割れ目にシャープな結晶面を持つデマントイド結晶が発見されます。母岩は極めて硬かったのでしょうが、すっかりした風化した500mx500の鉱床がマングローブの沼地に広がっており、引き潮時に鉱夫たちがシャベルやバケツ等で6−11mの深さの縦坑を掘って採掘しています。一つの空洞からバケツ半分ほどの結晶が採掘されることがあります。
 黄色や茶色のアンドラダイト結晶に最大で2gほどの宝石質の部分が含まれています。
毎週少なくとも20kgほどの結晶が採掘されていると推測され、そのうちの数kgの結晶は1−3gの大きさです。 5%ほどがファセット級の品質ですが2カラットを越えるエメラルド色の透明なルースは僅かしか得られません。が、2−5カラット級のオリーブ緑のルースは相当量が得られます。
 因みに、その後の専門家による分析の結果、マダガスカル産のデマントイド・ガーネットの発色にはつうじょう、エメラルド・グリーンの発色をもたらすクロムとヴァナジウムの含有量は1ppmほどの極微量と少なく、発色は3価の鉄イオンによるものと解明されています。
 しかし、最上のルースの色合いはロシア産の最上級品に匹敵するものです

 The demantoid is hosted by an altered whitish skarn layer, surrounded by clays and crystalline rocks. The crystals are found lining fractures of cavities (of decimeter dimensions). The host rock can be quite hard, although it is typically completely weathered.
 Using hand tools, the miners dig pits 6-11m deep in the mangrove swamp at low tide.
The deposit measures 〜500mx500m. Some pockets have yielded a half-bucket of crystals.

 The recovered demantoid crystals are yellow and brown andradite , with gem-quality areas weighing up to 2g. It is estimated that at least 20kg of mine-run demantoid is recovered each week with several kilograms in the 1-3g range. About 5% of the material is facetable. Eye-clean stones of good "emerald" green color above 2 carat is scarce, while those with "olive" green color are more frequently seen in 2 - 5ct range.
 

マダガスカル産デマントイドの評価(Evaluation of Malagasy demantoid)

 冒頭の写真はつい最近入手したばかりのマダガスカル産デマントイドです。
1.75ctの透明度が高く深い青緑色のルースは専門の宝石商なら直ちにロシア・ウラル産の最上のデマントイドと判断するでしょう。
 デマントイドの特徴であるホース・テイル・インクルージョンこそありませんが、それはむしろ好都合というものです。 ホース・テイルをむやみに珍重する傾向が見られますが、所詮は邪魔な包有物に過ぎません。
 写真で茶色に写っているのは肉眼では金色のファイアーです。これだけ色の濃いデマントイドで自然光の下でふんだんにファイアーが見られるのは初めての経験です。
 ロシア産デマントイドでこの大きさと透明度と深い色合いのルースは稀です。
もし遭遇すればカラット当たり数千ドルでも不思議ではありません。
 もっと淡い色合いのナミビア産の最上級品でも1000ドルと、デマントイドはガーネットの中では破格の存在です。
 ところが冒頭のルースはオークションで入手したのですが、ごく普通のガーネットと大して変わらない値段でした。数十倍高くても不思議ではありませんから、実物を見るまで品質と真偽にいささかの危惧を抱いていたのですが、現物は一目瞭然、豪勢に放たれるファイアーと、念のために測定した屈折率が1.877とデマントイドそのものでした。新産地のために市場の評価が定まっていないのかもしれません。
 上述のように、初生の崩落鉱床からかなりの量が採掘され始めたマダガスカル産のデマントイドは、ロシアやナミビア等、他産地と同様に標本級の結晶が大半と思われます。
 しかし中にはロシア産に匹敵する品質の結晶が得られる産地として注目に値します。

 A faceted demantoid of the top photo is a Malagasy origine I acquired recently through net auction. A professional gem trader will immediately declare this stone as the best Russion one for its color, transparecy and size. Despite it's saturated blue-green color, plenty of fire is radiated even under normal daylight.
 Based on the pre-informations as mentioned above, and the bid off price of the 1.75 stone, that was much far lower than the trade standard, I did not expect the quality of the Malagasy demantoid, until I received the actual one. To my pleasant surprise, the stone is indeed the genuine demantoid of ideal color, transparency. The R.I. showed 1.877.
 This new locality is worth paying careful attention for its high potential of the best demantoid producer.
 
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