デュモルチエ石
(Dumortierite)
蝋石中のデュモルチエ石 13.34ct 29.5x14.3mm 那須蝋石鉱山(Nasu, Japan) |
水晶中の針状結晶 1.64ct 9.5x6.1mm Brazil |
デュモルチエ石入り水晶 6.95ct 18.7x8.9mm Brazil |
水晶中の結晶 最大 3mm (Dumortierite crystals in quartz) Serra do Espinhaço, Bahia, Brazil |
那須蝋石鉱山 栃木県那須黒磯市百村 Momura, Nasu, Tochigi, Japan |
Soavina, Madagascar | 6x3cm Dehasa, Alpine San Diego Co., CA U.S.A. |
ブラジル、バイア州で新たに発見された水晶中に結晶形を見せるデュモルチエ石
最大の結晶 139.79ct ファセット 15.47ct | 水晶中の結晶群 幅 6.5o | 針状結晶 2o |
Serra do Espinhaço, Bahia, Brazil |
化学組成 (Formula) |
結晶系 (Crystal Sustem) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density) |
屈折率 (Refractive Index) |
Al7BO3(SiO4)3(O・OH)3 | 直方晶系 (Orthorhombic) |
7 - 8½ | 3.3-4 | 1.659-692 |
名前の由来
デュモルチエ石はフランスのリヨン中心部から南西に2 km程のボーナン(Beaunant)にてこの鉱物を発見し、報告したフランスの古生物学者、ウジェーヌ・デュモルチエ (Eugène Dumortier : 1803−1873)に因んで1881年に命名されました。
デュモルチエ石の産状
デュモルチエ石は、片麻岩や片岩等の、アルミニウムと硼素に富む岩盤が変成作用を受けた ; 超変成岩、 ペグマタイト、熱水による変成岩中に藍晶石、菫青石、紅柱石やトルマリンなどと共に発見されます。
このような地質条件は世界に無数にあり、世界各地に数十を超える産地がありますが鉱物としては比較的に稀な種類です。
そしてほぼ全てのデュモルチエ石は超微細な羽毛状結晶として他の鉱物中に含まれて発見されます。
したがって単独の鉱物として見かける機会は皆無と言える鉱物です。
ごく稀に石英や蝋石中に微細な青い結晶片を含み美しいものはカボション、あるいは工芸品として加工されることがあります。
大量に産出する場合は高級な磁器、絶縁材、スパーク・プラグ等の原料として採掘されます。
宝石質のデュモルチエ石 (Gemmy dumortierites, reported in Gems & Gemmology)
0.79ct
5.67x5.26x3.52mm G&G Spring 2000 Srilanka |
2.06ct | 1.18ct | 0.61ct | 5.16ct 12.6x10.3x4.7mm | 2.59ct |
G&G Winter 2007 Tundru Tanzania | G&G Spring 2013 India |
写真の水磨礫から研磨されたルース | |
2.14ct 7.80x6.26x5.50o | |
左 サファイ鉱床で発見された橙色のデュモルチエ石結晶 | |
Umba Valley, Tanzania | |
Pala International Specimen |
ほぼ全てのデュモルチエ石が微細な羽毛状、繊維状、あるいは薄片として他の鉱物中に包有物として発見される産状です。
したがって単独の鉱物として発見されることは際めて稀であり、あっても結晶は大きくても長さが 1mm 程度の微細な針状結晶でした。
過去30年の間に、那須黒磯の百村産の淡青色の蝋石ごと研磨したものと、ブラジルの石英に含まれる青いカボションの2個を入手したのみでした。
今回新たにブラジル、バイア州の セラ・ド・エスピニャーソ ( Serra do Espinhaço) で発見された、透明な水晶中に針状結晶が群生する標本を入手しました。
冒頭の拡大写真のように最大で3mmとデュモルチエ石としては異例の大きさの結晶が含まれています。
さて、結晶標本すら見たことが無い鉱物ですから、ファセット・カットが可能な結晶がある筈が無いとは思いましたが、念のためと、 Gems & Gemology 誌の索引を見直したところ、何とファセット・カットされたものが報告されていました ;
G&G 誌の Spring 2000 には スリランカ産の青い 0.79 カラットのエメラルドカット、
同じく Winter 2007 には タンザニアのトゥンドゥルー産のピンクと茶褐色の2点、
更に Spring 2013 には、ファセット級ではありませんが、インド、ジャイプールの研究所にサファイアとして判定を依頼された美しい色合いの石が、ラマン分光分析の結果、水晶 55%とデュモルチエ石45%からなるカボションと平板の研磨品であったという報告でした。
この発色は、青いサファイアと同様、鉄とチタンによる電荷移動 (Fe2+ - Ti4+)と考えられます。
恐らく他の産地の青い発色も同様の原因と考えられます。
デュモルチエ石にはその他、紫、赤褐色などがありますが、不純物の鉄とチタンがこれらの発色の原因と考えられています。
G&G誌の80年に及ぶ歴史の中で、デュモルチエ石のファセットされたルースが、今世紀になってようやく 4 個報告されたほどの稀産の宝石ですから、今後も多くは期待できませんが、しかし手持ちのルースを調べなおせば、ひょっとしてファセットされたものが見つかるかもしれません。
というのは、スリランカとタンザニアのトゥンドゥルー及びウンバ川共に、漂砂鉱床であり、発見されて水磨礫からカットされたルースの中で、たまたま専門家により精密な検証を受けたものが上記のルースです。
とりわけタンザニアの茶褐色のルースは、外観からは低品質のアクシナイト(斧石)、エンスタタイト(頑火輝石)、シリマナイト(珪線石)、ダイオプサイド(透輝石)、コーネルピン等と見分けが付きません。
これらはいずれも成因も屈折率や比重などの特性もデュモルチエ石とは殆んど同じですから、精密な化学分析によって硼素を含むと判明すればデュモルチエ石と判断される可能性があり得ます。
この展示を準備中に、アメリカの Pala International 社の2015年10月の月報に、新たにタンザニアで発見された2.14カラットの赤橙色のルースが報告されていました。
ウンバ川のサファイア鉱床から水磨礫として採掘され、保存されていたファンシー・カラーのサファイアの中に研磨して調べてみたところ、極めて稀な、かつて報告された中では最も大きく美しい宝石質のデュモルチエ石の発見でした。
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