エカナイト(Ekanite)


0.31ct 4.6x3.9mm
Sri Lanka
0.96ct 6.6x5.5mm
Sri Lanka
3.59ct
Sri Lanka
メタミクト・ルース 1.27 0.75ct 
Sri Lanka

 

 
 エカナイトの結晶形 エカナイト結晶 中央 17x13mm
Poudrette Quarry
 Mt.St.Hilaire 
Quebec Canada
宝石質エカナイト結晶 
2.8x1.8x1cm

Ratnapura, Srilanka
8本のスターを示すルース
33x25x20mm 161ct
Sri Lanka


 結晶系 
(Crystal System)
  化学組成 
  (Formula)  
 モース硬度 
   (Hardness)  
比重 
   (Density)   
屈折率 
   (Refractive Index)   
正方晶系
(Orthorhombic) 
 (Th,U)(Ca,Na,Pb2)(Si8O20  6 - 6 1/2  3.08-30  1.590-596 

 

 エカナイトは1953年にスリランカではじめて発見され、発見者の宝石学者、F.L.D.Ekanayake の名に因み1961年に新鉱物として公表された鉱物です。
 化学組成から分かるように主成分として放射性元素のトリウムを含む (しばしば微量のウラニウムを伴う)  ため放射性の宝石として知られています。
 冒頭の写真の3.59ctのルースはトルマリンのような色合いと透明度を示すものですが、ガイガー・カウンターでは85カウントを示し紛れもなく放射性のエカナイトであることが分かります。
 X線フィルムの上に2日間置いて、フィルムを感光させましたが、この程度の放射線の量では身につけていても健康上の問題にはなりません。
 しかし数億年と言う長い年月に放射線を浴び続けた結晶はその格子構造が破壊され,一部または大部分が非晶質になっている例があり、メタミクト結晶と呼ばれます。
 この現象は不純物としてトリウムを含む事が多いジルコンに良く見られます。
メタミクト化が進んだジルコンは比重と屈折率とが低くなるのでロー・ジルコンと呼ばれ独特の潤んだような光沢を示します。これは結晶構造の破壊が進んでいるために光が乱反射するためと思われます。
 冒頭の右端のルースはメタミクト化が進んだエカナイトの例で、右側の淡緑のルースはその典型的な光沢を見せています。 メタミクト化した結晶は熱を加えることで再び結晶構造が再生されます。 

 さて、エカナイトは近年ではスリランカ以外にも、カナダのモン・サンチレールやユーコン州の Tombstone 山地、イタリア、マレンコ渓谷の Vetarella、シベリア、サハ共和国のトルガ川盆地、チャラ川、ムルン山地、さらにタジキスタンの天山山脈の Dara Pioz 氷河等から産出の報告がありますが、いずれも鉱物標本級の結晶に止まります。
 宝石質の結晶は依然としてスリランカ各地の漂砂鉱床から水磨礫として発見されるのみです。
 発見後半世紀が経っていますが、スリランカの漂砂鉱床からは散発的に,時にはまとめて数十kgに達する原石が発見されることがあります。 
 これまでに発見された最大の原石は1.5kg、カットされた最大のルースは351カラットのものが報告されています。
 冒頭の写真の3.59カラットのルースは80カラットの原石からカットされた3.59から18.29カラットまでの4つのルースの一つです。
 また極めて稀な例として4本,または8本のスターを示すルースが報告されています。
冒頭の写真の161カラットものルースは1990年代後半にスリランカで発見された原石をカットしたもので、この種のルースとしては空前絶後の標本です。 
 エカナイトは大変稀な宝石ではありますが、写真のように暗い緑や褐色の魅力のある色合いとは言えません。 
 したがって価格も手頃な水準で、各地の宝石フェアでは他の華やかな宝石に混じって1カラット程度の小さなルースが30ドル程度でひっそりと展示されているのを稀に見かけます。
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