ニューハンプシャー州の蛍石
(Fluorites from New Hampshire, U.S.A.)


 
ニューハンプシャー州ウェストモアランド周辺の鉱山産の蛍石結晶、劈開標本とファセットされたルース
(Fluorites from New Hampshire, U.S.A.)
  アメリカの東海岸、ニューハンプシャーの西部、コネチカット川を挟んで隣のヴァーモント州に近いウェストモアランドの周囲、半径20㎞内に16の蛍石鉱山があります。
 鉱山が開発され、稼働したのは19世紀末から1920年代初頭までの30年余りでした。
蛍石は主に製鉄用の溶融材として採掘されました。当時は世界的な鉱物標本市場は現在ほど発展してはなかったことですから、この地の蛍石を知る人は限られれていたことでしょう。
 しかし、この地の中心的な鉱山であったウィリアム・ワイズ鉱山(William Wise Mine) の美しい緑の蛍石は標本としても人気があったようです。
 鉱山閉鎖後も、標本採集のために断続的な採集活動が行われて来ました。
近年も重機を用いた大掛かりな採掘によって、ファセット可能な宝石質の結晶が採集され、市場に姿を見せます。

ワイズ鉱山の蛍石( Fluorites from William Wise Mine)
     
自然光  長波紫外線で 強蛍光性を示す 結晶 42x30x33mm、48g と ルース 0.91-104.28ct 


         
0.91ct 6.6x5.1x3.4mm  2.59ct 9.0x6.8x5.2mm  3.75ct 10.2x8.4x6.1mm  3.83ct 9.2x9.1x6.8mm  4.48ct 9.9x9.7x7.4mm 


       
6.81ct 11.5x104x8.00mm  7.90ct 13.5x9.6mm   104.28ct 31.8x19.1x22.3mm 
 ワイズ鉱山産の緑の蛍石結晶は30年余り昔にツーソン・ショーで入手しました。
7.9カラットと104.28カラットの濃緑色のルースは、蛍石の世界的なカッターである、Coast to Coast の John Bradshaw が手掛けたものです。
 ブラッドショーは、同じニュー・ハンプシャー州のナシュア(Nashua)に住んでいて、ワイズ鉱山へは80㎞程しか離れていませんから、おそらくは、鉱山で採集された結晶を直接入手出来たのだろうと思われます。 
 その他の6点の淡青緑色のルースも2018年に Coast to Coast から入手したものですが、これはブラッドショーが手掛けたものではありません。 彼も老齢ですから、もはや、蛍石のような繊細な石のカットが出来なくなっているのでしょう。

 ワイズ鉱山の蛍石は長波紫外線にて強い蛍光性を示します。
 ワイズ鉱山での採掘光景
   

ワイズ鉱山周辺鉱山の蛍石 (Fluorites from mines, surrounding William Wise mine, New Hampshire)
  ワイズ鉱山の周辺、半径 20㎞ 内に 15 の蛍石鉱山がありました。
いずれも1890年代から1920年代初頭まで稼働し、現在は閉鎖された鉱山です。
 ワイズ鉱山のみが、輝かしいエメラルド・グリーンの蛍石を産したために、現在に至るまで、断続的に標本採集のための採掘が行われているのでしょう。
 下記のファントムを見せる淡紫色の結晶と、青い八面体の劈開標本は、いずれも 1980 年代後半~ 1990 年代前半にかけてツーソンやフランスのショーで入手したものです。 
 単にニュー・ハンプシャーとのみの表示があり、正確な鉱山名がなかったこと、更に紫外線照射に反応しないことから、恐らくワイズ鉱山ではなく、周囲のその他の鉱山産ではないかと考えられます。
 その後、ニューハンプシャー州産の蛍石を市場で見かける機会はありませんでしたから、今となっては貴重な標本です。
     
 74x58x51mm  299g 52x51x34mm 95g  43x40x33mm 63g 


       
29x29mm 16g  23x23mm 7.2g
 
正八面体の劈開結晶 64x64mm 204g  25x25mm 7.6g  20x20mm 4.9g
 
   これらの青い蛍石は、全て天然の結晶に衝撃を与えて人為的に作られた正八面体の結晶標本です。
大きな結晶から、どのような歩留まりで正八面体の結晶を得られるのか興味がありますが、自分の手持ちの大きな結晶で試そうという気には到底なりません。
 理屈ではきれいな劈開結晶が出来ると分かっているのですが、大半が粉々に飛び散ってしまうのではないかと心配です。
 
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