ガラス(Glass)

 

古代西アジアのガラスのネックレス
(Glass necklace from ancient Western Asia)
宝石のようなガラス ??? ハラッパ出土のガラス装飾品  古代ローマガラスの
 ペンダント
天然の黒曜石 ? 6x4cm 600ct  メキシコ
Glasses like gemstones ??? Glass and jewelery
Harappa, India
Natural Obsidian ?  Mexico
Roman glass pendant
古代, ガラスは宝石だった

 宝石・結晶博物館に何故結晶でもないガラスが登場するのか ? と思われるかも知れません。
確かに、ガラスは正確には鉱物ではなく、また結晶でもありません。しかし古代、ガラスは宝石でありました。
その透明な美しさと多彩な色は、実際、如何なる宝石と比べても遜色がありません。
 冒頭の最初の掌の上の、透明で無傷で鮮やかな色彩で,その上とてつもなく巨大な品々を黙って見せられたら,”これはガラスさ !!! ” と誰もが言うに違いありません。
 何故なら、こんな完全無欠な宝石はまずあり得ません。 宝石と言うものは,第一に小さくて、色彩もこんなに鮮やかではなく、大抵は色むらがあったり、内部に傷や不透明な部分があるのが普通です。 それが常識と言うものです。 
 ところが、これらのガラスの様に美しい代物は,実は全て天然の至高の宝石なのです。
 持ち主は世界一の宝石商,ハリー・ウィンストンの、まるでガラスのような宝石は左から右へ、上から下へ、順に : 

Top left photos (From left to right, top to bottom) ;
 Star of the East Diamond 95ct, Hope Diamond 45ct, Idol's Eye Diamond 70ct, Indore pear Shape Diamond 47ct,Grand Duchess Vladimir of Russia Emerald 62ct, Jonker Diamond 126ct, Catherine the Great Sapphire 337ct, Burma Ruby 14ct
もう一つの Indore Pear Shape Diamond
47ct

 
締めて100億円は軽く超えるという、途方も無い価値の宝石なのです。

 でもやっぱりガラスの様に見えますね。

  かくの如く、ガラスは実に美しく、古代から様々な形で宝石として世界中で重宝されていたのも当然であります。
二番目の写真は、恐らく古代西アジアから出土したガラスのネックレスです。
まるで天然のガーネットの結晶のような偏菱型12面体のカットは現代にも通用するでしょう
 紀元前2500年に遡る古代のインダス文明を代表する都市ハラッパからも、瑪瑙やチャート(珪石)と共にガラスでトルコ石、ラピス・ラズリや縞瑪瑙を模した130を超える装飾用のビーズや魔よけが1996年の発掘の際に発見されました。
 また古代ローマ時代のガラスが現代のビーズと組み合わされて魅力的なペンダントになっています。
冒頭右の写真は天然の黒曜石をカットしたものですが、まるでペリドットのような色合いです。

様々な天然ガラス

 

緑色の透明な黒曜石 メキシコ
 右 水晶の形の研磨品 中 600ct
左 天然の透明な黒曜石の破片 11x8cm
虹の黒曜石 (レインボー・オブシディアン)
(Rainbow Obsidian)
Mexico

1. 黒曜石(Obsidian)

  黒曜石は火山岩が冷える時にガラス質の部分が固まった出来た天然ガラスです。 世界の火山地帯に発見され,古来からナイフや、鏃等多様な用途に使われていました。 日本でも北海道から産出する黒曜石は十勝石として、広範な遺跡から発見されます。一般には鉱物質の不純物を含み漆黒や褐色,濃緑の不透明なものが大半です。  しかし北アメリカやメキシコからは白い長石等の破片を含む”スノーフレーク”や”アパッチの涙”等と呼ばれる種類や,ペリドットのような透明な緑色,また1990年代半ばにメキシコで光の干渉により虹色の煌きを見せる,レインボー・オブシディアンが発見され、独特の色彩の宝石や装飾品に加工されます。
 ペリドットのような600ctのオブシディアンとガラスの原石はいずれもメキシコ産の黒曜石ガラスとしてスペインとフランスとで別々に入手したものです。
 これらが天然なのか、あるいは鉄鉱石精錬時の鉱宰のような人工のものなのか ?

 レインボー・オブシディアンは、メキシコのハリスコ州にて大量に採掘され,30トンの原石から10%ほどがこのような虹色の煌きを示します。 大量に採れるので、手頃な値段のアクセサリーとして出回っています。
 右の写真は、優れた彫刻家の手になる、素材の美しさを余すところなく活かした作品です。
この虹色の原因は光の干渉によるものと考えられていましたが、1998年になって、棒状の角閃石結晶が平行して並んでいるために起こることが確認されました。 結晶の大きさと間隔と、並んでいる方向,それに黒曜石を研磨する際の角閃石の並びに対する角度等の条件が重なって顕著な虹色が現れることが判明しました。


2. セント・ヘレナ火山ガラスの宝石 


噴火前
  噴火後



 
 1980年5月18日の朝、アメリカ西海岸ワシントン州の標高2950mのセント・ヘレナ火山が噴火しました。
写真は噴火前後の様子の比較ですが,数十平方kmに及ぶ地域が爆発的な噴火により一変してしまったことが良く分かります。 
 事前に予測されていたため、噴火の状況は様々な地点から記録されており、この爆発の規模が如何に凄まじかったかを示しています。 この爆発によりおよそ1立方km,4億トンのガスや灰,岩石が放出されましたが、それでも歴史的には比較的に小規模な噴火でした。
 セントヘレナ山は過去にも噴火を繰り返していて、1500年には同規模の,紀元前1900年にはその四倍の規模の噴火をしています。
しかし、1883年,インドネシアのクラカトア火山の爆発の規模はその18倍、同じくインドネシアのタムボラ山の1815年の爆発の規模は恐らく史上最大で80立方kmの噴出物があったと推定されています。 因みにナポリのポンペイの町が滅んだ紀元79年のイタリア、ヴェスヴィオ火山爆発の噴出規模は3立方kmであったと推定されています。

 

0.5 - 2.6ct 気泡 30x 渦状縞模様 20x 気泡と渦状縞模様 25x


 と、長々とセント・ヘレナ火山について述べたのは、1980年代終わり頃からアメリカ市場に ”エメラルド・オブシディアナイト” なる、美しいガラスが登場したからです。
 曰く、セント・ヘレナの火山灰から作られたガラスで、エメラルド色の黒曜石とのこと。
 実際、合成エメラルドを思わせる魅力的な色合いなので、思わず大量に買い込んでしまった次第。 が、このガラスには後日談がありました。 
 その素性を疑ったアメリカ宝石学協会がセント・ヘレナ火山の灰を採集してガラスを作ったところ、どうしても真っ黒な黒曜石にしかならなかったのです。
 結論は、セント・ヘレナの火山灰ではエメラルド色のガラスは出来ない。
その後このガラスを売り出したエメラルド・フォックス社から、原料は火山灰ではなく、粉砕した火山岩に若干のクロムと鉄と銅を添加したものとの説明がありました。
 結局ただのガラスに過ぎなかったわけですが、折りよく噴火した火山の名に便乗した詐欺まがいの商法であったことが判明しました。

 肉眼ではなかなか気づきませんが、ルーペや顕微鏡で拡大すると、内部に写真のような気泡や、ガラスに特有の冷却時に出来る渦状の縞模様が見える場合があります。

2.08ct 8.2x8.2mm 1.59ct 9.8x5.9mm 2.03ct 9.2x9.1mm 2.6ct 13.4x9.2mm

 ただのガラスではありますが、こうしてカットされると最上級のコロンビアのエメラルドを思わせる美しさです。
天然や熱水合成エメラルドには最上品であってもそれぞれ特有の内包物が必ずあるので、例え色合いがそっくりでもほぼ完全な透明度を持つガラスとは識別が可能です。

3. モルダバイト(Moldavite)

 2.25ct(11x8mm)   1.43ct 2.62ct 9.3x5.1mm 22.7ct 21x17x13mm 1480万年前に衝突した隕石孔の
上にあるネルトリンゲンの街

Nörtlingen on meteor crator
   
 
 モルダバイトはチェコのボヘミアとモラビアのモルダウ川周辺の約5500平方kmの範囲に発見される隕石ガラスの一種でテクタイトと呼ばれる天然ガラスです。 テクタイトは世界の各地に発見されますが、モルダバイトは透明で美しい緑色をしていているので、しばしばカットされたり、あるいは彫刻を施されて、手軽な宝飾品となります。
 含まれる微量の放射性元素の分析により、1430〜50万年昔に地球に落ちた巨大な隕石によるものと推定されました。
 ドイツのシュトゥットガルトの東凡そ120kmにあるネルトリンゲン(N
ördlingen)の町が直径24kmの巨大な隕石孔の上にあります。その隕石孔を作った直径1500mの隕石の衝突で、隕石の一部あるいは、地上の岩石が吹き飛ばされて、ガラス成分が空中で冷えてテクタイトとして450km東のボヘミア・モルダビア地方に降ったのだろうと推定されています。

 アフリカのリビア砂漠からもリビア・グラスと呼ばれる天然のガラスが発見されます。モルダバイトと同じく隕石が落ちた際の熱と衝撃とで砂漠の砂が溶けてガラスになったものと考えられています。が、乳白色で透明度の低いリビアグラスは宝石としては魅力がありません。
 ところが近年、ジャワ島、あるいはラオス産のテクタイトと称するアクアマリンのようなカット石を時折ネット市場で見かけます。
 インドシナ半島でもテクタイトが発見されますが真っ黒で不透明な代物でこんな美しい色合いではありません。
 一体何なのか入手して調べてみました。屈折率が1.516と普通のガラスです。前述のセント・ヘレナのガラスと同様、火山で有名なジャワ島を騙っただけのただのガラスに過ぎません。
リビアグラス 
(Libya Glass)
12.28ct 19.1x18.8mm
ジャワ島のテクタイト ???
3.50ct 11x9mm

隕石が地球に運んだもの

 
   人工衛星からの地球の探査の結果、近年では世界中に5000を超える隕石孔が発見されています。
カナダのサドベリーのニッケル鉱山、南アフリカの金や白金の鉱山、またシベリア北部のポパガイ隕石孔から発見された1cm程のダイアモンド多結晶など、地球の少なからぬ資源が、実は隕石によって地球にもたらされたという事実が近年の研究で次々と明らかになっています。
 因みに前述のドイツのノルトリンゲンの町に衝突した隕石は衝撃により直径が0.2mm以下のダイアモンドを生成したと推定されています。
 したがってノルトリンゲンから掘り出された石材には無数の微小なダイアモンドが含まれているのだそうです。 
 長年、地球科学者の間で、何故金や白金などの極めて稀少でしかも重い金属が、地球の中心に沈み込まずに地表近くに大量に存在するのだろうかと頭を悩ませていました。 
 その疑問がこうしてようやく解明されたわけです。
 さらに地球に豊富に存在する水も実は宇宙から運ばれたという説があります。
 太陽系の最外周にはオールトの雲と呼ばれる無数の小天体が集まっている地帯があって、ハレー彗星やへ−ルボップ彗星などの故郷と考えられています。
 巨大な彗星だけではなく、一軒の家くらいの大きさの小さな氷の塊も存在し、現在も毎日100万個も地球に降り注いでいて、それが地球の豊富な水の源となっているのだと言う説です。
 NASAの科学者が衛星から撮影した地球の写真を分析していて発見した事実から唱えた説で、“水の惑星”という本になっています。
  貴金属や水資源だけではなく、実は地球上の生命そのものが隕石によってもたらされたという説が、もはや仮説ではなく、アミノ酸の研究等の様々な旁証により、疑いない事実として認められています。 
  天文学の発展によって、宇宙の星間ガスの濃い空間では、炭素や水素の分子が集まり、簡単な有機物から、複雑なアミノ酸までもが生成されている事実が観測されています。 
 さらには宇宙空間でダイアモンドまでが合成されているというわくわくするような事実が分かって来ました。
 これは宇宙空間に漂うメタンやホルムアルデヒド、シアンなどの炭化水素分子が、超新星爆発によって放出される重力波の衝撃によって炭素成分がダイアモンドに変換されるというものです。
 この説は1980年代の後半に提唱されていましたが、1993年頃にNASAの科学者の赤外線による観測によって確認されました。
 一般には超高圧,超高温でできるダイアモンドが、宇宙空間の殆ど真空の,しかも絶対温度で零度に近い条件下で生成されていると言う事実には驚かされます。 
 さらに宇宙空間には天然の核融合炉(恒星のことですが)はもちろん、シンクロトロン、果ては天然のレーザーが火星や木星の大気上空で発生している等々、驚くばかりの事実が最近の研究により次々と明らかになって来ています。


 

人工のガラス (Artificial glasses)
レーザ-ガラスの多彩な色の研磨品
(Faceted laser glasses)

3.28ct(16.2x8.1mm) - 7.30ct(14.2x12.2mm)
アレクサンドライト効果を示すネオジウム添加ガラス 10.10ct(Ø14mm)  3.24ct(Ø10.8mm)
(Neodium doped glass shows alexandrite-effect)
白熱光(Incandesxcent light) 蛍光灯(Fluorescent light)

1.最先端技術用特殊光学ガラス
  (Optical glasses for advanced technologies)
 上の写真は,宝石用にカットされていますが,本来はレーザーの発振用やその他の最先端技術用として開発された特殊ガラスです。レーザー用ガラスは内部に気泡や、密度の違いによる渦などがあると使い物になりませんから,製造には高度な技術が必要となります。
 多彩な色合いはレーザーの発振の為に、ネオジウムやディスプロシウム、プラセオジウム等の希土類元素が添加されているためです。 ネオジウムを添加したガラスはアレクサンドライト効果を示します。

 

   2.一般の宝飾用ガラス
2.89ct(11.2x7.9mm) - 50ct(Ø25.0mm)
エメラルド色のスワロ・グリーン・ガラス トパーズ、ベリル、アクアマリンのイミテーション・ガラス ガラスビーズのネックレス
Svarogreen glass Glass immitation of topaz, beryl and aquamarine Glass beed necklace

 ガラスが宝石と見紛うばかりの美しさを持っている上に、値段も安く、どのような色でも形でも自由に創造することが出来ます。
 したがってコスチューム・ジュエリーとして手軽なアクセサリーや、また芝居やオペラ,バレーなどの舞台での装飾品等に大量に使われています。
 もちろん天然の宝石と異なり、それ自身の商業的な価値は殆どありません。 が、その美しさは宝石と比べ全く遜色がありません。
 かつて、蒋介石夫人の宋美玲夫人がアメリカを訪問した際に、身につけていた翡翠のネックレスは数百万ドルもの価値云々・・・と報道されたのが実は10セントのガラスであったという逸話があります。 
 この話が果たして実話なのか作り話なのかはともかく、例えガラスであっても、それ相応の人が身につければ立派な宝石として通用するという例でしょう。
3.装飾用のガラス





クリスタルガラス内部にレーザーで3次元加工
したガラスの置物 右 8cm  ロシア
タンポポの部分の拡大 ムンシュタイナー
のアクアマリン彫刻
35cm 10,395ct

 最近,テレビのハイビジョン番組で”アメリカのガラス工芸”のプログラムが放送されました。 ガラスを素材とした多彩な創作活動と作品の美しさには圧倒されました。
 いずれも美術館に展示されるような超一流の作家の作品ですからガラスの美しさが余すところなく活かされていますが,もちろん一般の手に入るような代物ではありません。
 さて、最近,あちこちの鉱物・宝石フェアや、あるいは観光地のお土産店などで上記のような透明で泡や歪み等の欠陥が皆無のガラスの内部にレーザーで三次元彫刻を施した装飾品を見かけます。 
 今日のコンピューター制御による高い機械加工技術ならこれくらいの加工は可能とは分かっていても、実に繊細な出来映えには、やはり感心してしまいます。レーザー加工の場合には、内部に気泡や歪があると正確に光の焦点を合わせることが出来ませんが、いずれのガラスもかなりの大きさにも拘らず欠陥が内部に全く見当たらないのは見事なものです。
 レーザーによる造形加工はガラスだけではなく、最近は宝石結晶にも欧州やアメリカでも盛んに行われるようになっています。その代表的な作家、ベルント・ムンシュタイナーは宝石を素材に、まるでガラスの様に自由な造形を展開して注目されています。 もちろんムンシュタイナーの作品は飛び切りの逸品であって、美術館とか富豪のコレクターでもなければとても手が出ません。 が、このロシア製のガラスの三次元彫刻なら1個数千円くらいですから,手軽に入手が出来ます。
 最近はさらにトパーズやキュービック・ジルコニア等、耐久性が高く、より加工の難しい宝石を素材に同様の彫刻が出まわり始めました。
スリランカのガラス (Ancient artificial glass of Srilanka)
様々な色のピット・グラス 右 135x75x64mm 940g カットされたガラス クロムと銅の着色
15x15x10mm
   スリランカは全島の約4分の1の広大な面積から数十種類もの宝石を産する土地です。
 宝石は田んぼや川の砂利の層の下から磨耗礫として発見されます。
 ところで、こうした宝石に混じって、少なからぬガラス礫が発見されることがありました。
さらに様々な異なる地質の地層表面からも発見されため、シンハリ語で地面のガラスを意味する、”Bin Vitro”、英語でグラウンド・グラス(Ground Glass)または宝石のピット(Pit =縦坑)から見つかるためピット・グラスとも呼ばれます。
 1グラム以下の小さなものから数kg 、また時には数十kgもの大きなガラス礫まで、様々な大きさのものがあります。
これらのガラス礫は透明なものはファセットに、不透明なものはカボション・カットされて、多くは隕石ガラスとして、露天で安い値段で観光客等に売られているのだそうです。
 さて、これが本当に隕石か否か ? 分析の結果、ナトリウム分を10%以上含み、カルシウム分も10%を超える標本もあり、さらにクロム、コバルト、鉛、銅、ニッケル,カドミウム,マンガン、チタン,ジルコニウム、セレン,時には金等の多様な元素が検出されました。 
一方、隕石ガラスでは珪酸分やアルミニウム分の比率が高いのです。
 しかしスリランカのガラスの成分はそれとは異なるため、隕石ガラスではなく、多くの着色成分を加えた人工のガラスであることが判明しました。
 すると,このガラスが何時,何処で作られたのかが問題となります。 産出状況や磨耗の様子から新しいものではなく、相当古く、恐らく紀元前のガラスであろうと考えられています。 また数十kgを超える大きさの礫も珍しくはないことから、スリランカで作られたガラスであろうと考えられています。 ただし,ソーダ等の主成分やコバルト等の着色成分は古代エジプトやメソポタミアから輸入された可能性が考えられます。
 スリランカは古代の海のシルクロードの重要な中継基地であったからです。
 豊富に宝石を産するスリランカにて、敢えて宝石用のガラスが生産されていたというのは意外な気がしますが、しかしガラスには宝石では得られない多彩な色彩や加工や寸法も自由に処理できる等様々な利点があり、宝石と同じ位珍重されたに違いありません。
 スリランカのガラス製造はしかし、主に燃料の不足等から13世紀頃には途絶えてしまったとようです。 1kgのガラスの製造には2立方メートルもの木材を消費するため、長年のガラス製造で周囲の豊かな熱帯雨林資源が枯渇してしまったのだと考えられています。
 と言う事になると、観光客相手に宝石のイミテーションとして安く売られている古代ガラスは貴重な骨董品としての新たな脚光を浴びる可能性があります。

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