菫青石(Iolite・Cordierite・Dichroite/Water Sapphire)

 

菫青石 0.32-7.84ct


7.84ct 12.5x11.8mm
Burma
1.72ct 8.25x5.39mm
Burma
2.82ct 11.0x7.0mm
Srilanka
3.84ct 16.6x8.5mm
 Srilanka
       
ブラッドショット・アイオライト
(Blood shot Iolite)
1.39ct 7.7x6.0mm
India
3.86ct 12.2x10.1mm
Orissa, India
アイオライト・キャッツアイ
6.4ct 13x9mm
Orissa, India
2.44ct 9.67x6.66mm
India

 

1.76ct 9.78x7.96mm
India
多色性を見せる宝石質の菫青石結晶片 18x13x10.5mm
Madagascar
5.46ct13.27x11.13mm
Madagascar


多色性を示すカボション
      
 9.42ct 14.0x12.0x7.0mm  Madagascr



 化学組成
(Composition)
結晶形
(Crystal form)
結晶系
(Crystal system)
モース硬度
(Hardness)
比重
(Density)
屈折率
(Refractive Index)
Mg2Al3[AlSi5O18] 直方晶系
(Orthorhombic)
7−71/2 2.63 1.53-55


 

桜石(菫青石仮晶)
Cerasite 5-8mm
京都府亀岡市稗田野町湯ノ花
多色性を示すアイオライト
 8.25ct 11.3x9x6.6mm
 
Madagascar
 異例の巨大なルース
 111ct        44ct       98ct 
 India
 菫青石は変成岩,火成岩,ペグマタイト等に見つかる鉱物で,産出は比較的稀な鉱物です。
 日本では宝石級は採れませんが、京都の亀岡,桜天神や栃木県の足尾銅山に菫青石ホルンフェルスとして,桜の花びらのような結晶が見つかります。
 10cm余りに達する大きな菫青石を含む岩を磨いたものは水石の分野では桜石と呼ばれ、大変愛好されています。


ホルンフェルス

 
代表的な接触変成岩。花崗岩などの高温の火成岩の貫入を受けた岩石がその熱のために変成作用を受けてもとの鉱物がほぼ完全に改変させられて、新たな微細な結晶となった(再結晶作用と呼ばれる)岩石を指します。
 京都の桜石は天然記念物となっています。 硬質の黒い変成粘板岩の中に菫青石の四角柱状の三つの結晶が集まり、その柱面が平行につき抜けて相互に重なり合う透入三連晶という形をとり,その断面が花びらのように 見えるものです。

 名前の由来

 冒頭に多くの名前がありますが、正式な鉱物名はフランスの地質学者 P.L.A.Cordier (1777-1861)に因むコルディエライトです。
アイオライトとは宝石名です。 

 日本名はそのものずばり、菫のような青い色に因む命名ですが、英名のIoliteもギリシア語の"ion=すみれ”に因みます。
 結晶軸の方向により青,菫色,淡灰黄色と多色性を示し、これによりダイクロアイト(Dichroite=2色の石の意味)とも呼ばれることがあります。 実際には,さらに結晶を回転させると無色に近い灰黄色をも示すため、正確にはPleochroite=多色の石とでも呼ぶべきでしょう。
 バイキングの伝説によると、霧の深い海を航海する際に、透明なアイオライトの薄片が太陽の方向を指す、とのことです。
しかし、太陽の方向を示す偏光特性のある結晶などは存在しませんから、あくまでも伝説として受け取るべきでしょう。 
  が、彼らの故郷のスカンジナビアの、ノルウェー、スウェーデン,フィンランド、アイスランドと、アイオライトが豊富に発見されるのは事実です。
 青い宝石の種類が少なかった時代には、一見、サファイアを偲ばせるアイオライトは人気のある宝石だったようです。
宝石業界ではアイオライトの他にも Water Sapphire、Lynx Stone, Peliom, Prismatic Quartz, Sapphire d'eau, Steinheilite, Spanish Lazulite, Violet Stone 等々,地味な宝石の割には実に多様な呼び名があります。
 アメリカではしかし依然としてサファイアの代用品となる廉価な青い宝石として人気が高く,しばしばTVショッピングに登場しています。 
日本でもときたま宝石店で見かけることがあります。
 カラット当たり普通は10ドル程度、極め付きの逸品でもせいぜい80ドル程度と、手軽に入手できるため、とり立てて話題になる宝石ではありませんが、こうして写真撮影のためにじっくりと眺めると、風情のある控えめな美しさはサファイアやタンザナイトと比べて遜色がありません。
 文献によると緑色の石もあるようです。またヘマタイト(赤鉄鉱)やレピドクロサイト(鱗鉄鉱)の微細結晶片が内包物として含まれる場合があり、ブラッドショット アイオライト(Blood shot Iolite)と呼ばれる赤い変種もあります。
 冒頭の写真右のスリランカ産のアイオライトの様に稀に無色のものがあります。これは特定の方向だけではなく、どの結晶軸の方向から見ても無色です。
アイオライトの青・菫色は不純物の二価と三価の鉄イオンが酸素イオンを介して電荷を交換しあう、電荷移動と呼ばれる発色の仕組みで起こります。
  ただし、結晶軸の方向により光の波長の吸収が変って黄や灰色味を帯びる顕著な多色性があります。
 不純物の鉄の量が少ない場合には発色が弱く無色になります。
 
 宝石級のアイオライトはビルマ,スリランカ、インド、タンザニア、ジンバブエ、マダガスカル,ブラジル等の主に漂砂鉱床に水磨礫として発見され,本来の結晶形を保つ宝石級の結晶は稀です。 そして10カラットを超える大きさのルースは滅多にありません。
 上の写真の100カラットを超える大きなルースはアイオライトとしては記録的な大きさですが、この三つのルースは一つの結晶塊からカットされたとのことです。
 フィンランド,ノルウェー、ドイツでは標本級の結晶が見つかります。また日本でも長野県浅間山山麓の火山岩の中や,茨城県,日立鉱山のズリ石の中から青紫の結晶が発見されます。


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