新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)


April 2011



孔雀石 (マラカイト:Malachite : Cu2(OH)2CO3


   孔雀石は銅鉱床の酸化地帯にて黄銅鉱等の鉱石が大気中の二酸化炭素が雨水や地下水と反応して生成する二次鉱物です。
 多くは塊状、葡萄状で産します。
同心円状に堆積した孔雀石はその美しい模様を生かして磨かれ、装飾品用に加工されます。
 ロシア映画 "石の花” は孔雀石の工芸品が主題となっています。
 写真の孔雀石は針状の結晶が集合してビロードのような光沢を見せる美しい標本です。
66x52x40mm Mashamba West Mine, Congo

天河石 (アマゾナイト:Amazonite)
46x42x40mm
Crystal Jack Mine,
Florissant, Colorado, U.S.A.
緑の正長石 (Green faceted orthoclase)
1.31-3.68ct
Minh Tien, Northern Vietnam
緑の正長石とカボション 12.7ct
(Green Feldspar and cabochon)
Pazunseik, Mogok, Burma
 美しい空色のアマゾナイトは微斜長石の一種です。
空色は鉛イオンによるカラー・センターによる発色です。
 この鉛は微量に含まれるウランが崩壊し最終的に安定核種の鉛に変わったものです。
天然ウランの半減期は7億年 (235U) 〜 45億年 (238U) と極めて長いため、青く色づくほどに鉛が蓄積するためには膨大な年月がかかります。
 したがって日本のような地質年代の新しい土地では微斜長石は採れても青い天河石はありません。
 この10年ほどブラジル、エチオピア、アメリカのコロラド州等から、透明度が高く美しいアマゾナイトが採れ、宝飾品にも加工されています。
 結晶標本もごく稀に市場に出てきますが、数が少なく人気が高いので瞬く間に売り切れてしまい、10年ほど待って、今回ようやく写真の標本を入手できました。 透明度が高く、色も姿も美しい天河石です。
 残念ながらファセット・カットが可能なほど透明な天河石の結晶は未発見です。 
 2005年頃から天河石としてファセット、或いはカボションカットされた透明な緑の石が報告されました。
が、専門家による精密な分析により、いずれも微斜長石ではなく鉛を含む正長石であると判明しました。
 オーストラリアの Broken Hill, 北部ヴェトナムの Luc Yen の南 15km にある  Min Tien のペグマタイト鉱床、ビルマのモゴクの Pazunsei です。
さらにブラジルのミナス・ジェライス州からはヴァナジウム発色による透明な緑の正長石が報告されています。
 

紅柱石 (アンダルーサイト:Andalucite)
結晶軸の方向で顕著な色違いを見せる 3.01ct 12.7x7.7mm Brazil
8.05ct 21x9x5mm Brazil
  紅柱石の名はスペインのアンダルシア地方に因みます。
宝石質の石はブラジルとスリランカが主産地ですが、いずれも水磨礫からカットされるので、宝石質の結晶を見る機会は全くありませんでした。
 が、Gems & Gemmology Summer 2009 に初めて、インドの宝石商が入手した宝石質結晶の記事と写真とが載っていました。
 正確な産地は不明です。 最近入手した結晶片は恐らく同じ産地と思われます。
 以前入手していたブラジル産の緑のアンダルーサイトの緑色のル−スと良く似た色合いですが、この結晶はどの角度から見ても多色性を示しません。ペンライトで照らした時のみうっすらと朱色になります。

蛋白石 (オパール : Opal)

 1993年にエチオピアの Mezozo 地方にて宝石質のオパールが発見されました。
  濃いチョコレート色の地に遊色が浮かび上がるもの、メキシコのファイアーオパールのような金色や無色のもの、亜透明の地に遊色が浮かぶもの、背面からの透過光に遊色が浮かぶもの、水を吸って透明になるハイドロフェーンと、実に多彩な種類のオパールを産する産地です。
 さらに 2008 年にさに 200km 北の Wollo 地方からも同様に多彩なオパールの発見があり、続いて隣のスーダンからもハイドロフェーン・オパールと、新種のオパールが続々と市場に登場し始めました。
 写真のマトリクスは、Mezezo 産の母岩付きのハイドロフェーン・オパールです。
28x18x12mm Yita Ridge, Mezozo, Ethiopia

方曹達石 (ソーダライトSodalite)

 この一年ほどのことですが、アフガニスタンのサーレ・サン産の明るく深い青い色の透明な結晶が市場に姿を現しました。
 同産地のこの青い透明な結晶を見れば、コレクターなら誰しも藍方石 (アウイン) かと興奮せずにはいられません。 
 サーレ・サンの世界で最上のラピスラズリには同じグループの藍方石が含まれていますから、美しい単独の結晶が新たに発見されても不思議はありません。
 宝石質の藍方石はドイツのラーハー湖周辺が世界で唯一の産地ですが、惜しむらくはこの地の結晶は流紋岩の空隙に小さな粒状の団塊として発見され、美しい結晶形を見せることはありません。
  一方、サーレ・サンでは美しい結晶形を見せるラピス・ラズリが発見されます。
 ならば藍方石の美しい結晶も、と誰もが期待を抱いたのも無理からぬことでありました。
 ひと騒動を巻き起こした写真の結晶は、しかし藍方石ではなく、同じ鉱物グループの方曹達石 (恐らくは硫黄を含む変種、ハックマナイト) と判明しました。
 方曹達石だったとしても、しかし素晴らしく美しい色の結晶には違いありません。
方曹達石(Sodalite) 5x5x3mm
Sar-E-sang, Afghanistan

パライバ・トルマリン (Paraiba Tourmaline)

 1989年にブラジル北東部のパライバ州で発見された新種のトルマリンは世界の宝石界に大きな反響を呼びました。
 銅とマンガンとを含み、熱帯の珊瑚礁の海のような輝かしい青ー紫ー緑のトルマリンは、パライバ・トルマリンとして人気のある宝石となりました。
 その後、同様の色合いのトルマリンがナイジェリアとモザンビークからも相次いで発見され、今では産地に拘わらずパライバ・トルマリンとして流通しています。
 ブラジル・パライバの原産地では地続きのリオ・グランジ・ド・ノルチ州も含めて5ヶ所の産地がありますが、初期に掘りつくされ、現在では殆ど採れなくなりました。
 写真はパライバ・トルマリンの中で最も人気の高いトルコ石の青の透明度の高い結晶です。
 最近入手しましたが、原産地のバターリャ鉱山にてごく初期に採掘された標本と思われます。
 包有物が多いためカットされずに残された貴重な標本です。よくぞ今まで残っていたものです。
石英上の結晶 12x7x7mm
Batalha, Paraiba, Brazil


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