新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)


April 2025 : スーパーレインボーガーネット(Super Rainbow Garnet)


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結晶と研磨品 奈良県吉野郡天川村行者還岳

 レインボーガーネットとは、虹のような光沢を見せるガーネットの商品名で、1980 年代後半にメキシコのソノラ州で発見され、ごくわずかな研磨されたルースがツーソンショーで出回ったのみで、その後姿を消してしまったガーネットです。
 種類としては灰鉄柘榴石〖 Andradite  : Ca3Fe2(SiO4)3 〗に属します。
 一般に灰鉄柘榴石は濃褐色、黒色、の不透明な結晶が大半で、イギリスのエリザベス朝時代には漆黒の結晶を磨いて
モーニング( moaning : 悼む)ジュエリーとして使われたことがあるくらいで、稀少なデマントイド以外は宝石として使われることはありませんでした。
 アンドラダイト・ガーネットのクロムを含む変種にエメラルドグリーンのデマントイドがあります。
19世紀半ばにロシアのウラル山脈で発見され、数ある宝石の中で最も稀少な宝石として珍重されましたが、鉱山は20世紀初頭の革命で閉鎖され、供給が途絶えて100年近く幻の宝石でありました。
 その後20世紀末にナミビアで、21世紀初頭にはマダガスカルとウラル山脈での新しい鉱床の発見があり、現在では数は少ないながら、一定の供給が続いていますが、依然として稀少な宝石として、最上級品はカラット当たり1万ドルを超える水準です。
 レインボー・ガーネットは宝石というよりは、鉱物コレクターの標本として位置づけられるものですが、メキシコの産出が途絶えて以来、幻の鉱物となっていました。
 ところが、2004 年に日本で宝石質のアンドラダイト・ガーネットが発見されました。
その品質は、かつてメキシコでごく少量産したレインボーガーネットを凌ぐ見事なもので、研磨された結晶片は宝飾品に使えるような金色、青、緑、赤の金属光沢を見せるために、スーパーレインボーガーネットと呼ばれる程の品質でした。
 この光沢は、地殻変動による高温の熱水が灰鉄柘榴石の鉱床に繰り返し侵入し、何度も溶融作用を受けた結晶表面が薄膜構造になったために起きる光学効果に因るものです。
 元々、高い屈折率と、ダイアモンドを凌ぐ光の分散効果により、見る角度が僅かにずれるだけで、表面から放たれる光の波長が様々に変化してシャボン玉のような虹色の効果が顕著に現れるのが特徴です。
 天川村の産地は、鉱物愛好家が発見したものですが、噂を聞きつけた愛好家が押し寄せて至る所を掘り返したために、まもなく採集禁止となってしまいました。
 その間採集された結晶は恐らく数百kgに達したと考えられ、20年を経た現在も鉱物市場に姿を見せます。
 殆どの結晶は鉱物標本として、主にネット市場にて流通していますが、稀に1㎝を超える大きな結晶は、研磨されて、ごく稀に宝飾品に使われることがあります。 

研磨されたガーネット結晶片
         
8.96ct 15.2x13.6x6.4mm 


       
1.47ct 9.0x6.0x3.4mm 
       
       
2.28ct 8.2x6.5x4.0mm 
       
       
2.49ct 7.4x6.5x5.5mm 

ガーネット結晶
     
6.44ct 11.5x10.5x7.0mm
     
     
4.43ct 10.0x7.4x6.8mm 
     
     
9.99ct 11.0x9.6x10.0mm 

 今回入手したのは20年余り昔に採集された結晶と大きな結晶片を研磨した標本です。
採集された方が自ら研磨したとのことですが、脆く欠け易い結晶品を見事に研磨したものと感嘆するしかありません。
 結晶も小さいながら、虹色の反射光が盛大に振り撒かれる美しいものです。

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