新着結晶標本室
(New Crystal Gallery)
August 2005
この1年余りの間に増えた結晶コレクションを整理してみました。
全てが宝石質ではありませんが、新しい産地や既に絶産のもの、採集禁止となった鉱山など貴重なものが含まれています。
New crystals collected during past one year are shown here. All are not gem quality, but important specimens ; some from new locality, some are from localities where veins are exhausted and, or mining is prohibited, etc.
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蛍石
(Fluorite) left : 64x47/52x58mm 河西省( Chong San、Jiangxi) right : 劈開結晶 43mm 湖南省 (Hunan) China |
鉄礬柘榴石(Almandine) 最大の結晶 Max. 18x17mm 愛媛県宇摩郡土居町関川 Ehime, Japan |
満礬柘榴石 Spessartine Garnet 5〜7mm 長野県和田峠 Nagano, Japan |
デマントイド Demantoid Garnet 14x14mm Iran |
蛍石 (Fluorite)
最近中国各地の新しい産地から蛍石が次々と登場してきます。
最初の写真,河西省産の蛍石はイギリスロジャーリー産とそっくりの青緑に紫の美しい宝石となります。
次の湖南省産の蛍石は劈開による八面体の結晶です。
中国南部の貴州省、湖南省,河西省、福建省、広東省、広西荘族j自治区の広大な一帯にはタングステン、モリブデン、アンチモニー、錫等の重金属の鉱床が無数にあります。
蛍石はこうした重金属鉱床の脈石として産出します。
近年、これらの資源の需要が増えたことにより新たな鉱山が開発され、採掘の際の副産物として蛍石の見事な結晶が次々と発見されているようです。
一昔前の蛍石は団塊状の産状で、もっぱら工芸品等に彫刻されていましたが、最近は宝石質の結晶が多いのが特徴です。今後もどんな蛍石の発見があるのか楽しみです。
These days, China has become the remarkable gemmy fluorite crystal producer, while former fluorites were opaque cluster for carving use. The vast southern area of China lies heavy metal deposits of tungsten, molibden, antimony, tin etc., where fluorite is mined as a bi-product.
柘榴石 (Garnets)
柘榴石は日本でも比較的に多彩な種類が発見されます。
最近宝石質のレインボー・ガーネットが発見されましたが、灰鉄柘榴石(アンドラダイト)など、むしろ世界的な産地といっても良いかも知れません。
これも日本列島が過去の大規模な地殻変動により糸魚川構造線、中央構造線のような大規模な断層構造や領家変成帯、三波川変成帯等の変成帯が形成された賜物でもあります。
愛媛県宇摩郡土居町一帯は調べてみるとまさにその中央構造線の真上に位置していて、各種の柘榴石やクロム透輝石、スピネル等30種余りの鉱物産地でありました。
学習研究社のフィールドベスト図鑑”日本の鉱物”には土居町産の10cmを越える見事な緑閃石の写真があります。
次の満礬柘榴石は名高い長野県和田峠産です。 以前入手したものは大きいものの結晶が不完全でした。今回小粒ではありますが、より完全な結晶です。
和田峠の柘榴石は既に採集禁止となっていますから、こうして古い標本の放出は願ってもない機会です。
イラン産のデマントイド・ガーネットは2002年頃に登場しました。
イラン東南部、イラン高原の標高1500mの石綿質の変成岩中に鉱脈があります。 灼熱の気候のため、涼しい12月から3月が採掘の季節です。
年 20kg 程の結晶が採集され、うち1.5kg がファセット可能な品質で、そこから 2 カラット以上のルースが200g 程得られるとのことですから、歩留まりはかなり高いといえるでしょう。
写真の標本は宝石質ではありませんが大きく形の良い結晶です。
クロムを主成分とするエメラルド色の灰格柘榴石(ウヴァロヴァイト)には宝石質の結晶は存在しませんが、この標本を眺めていると、デマントイドとは実はアンドラダイトとウヴァロヴァイトとの固容体に他ならないという事実に思い当たります。
Although gemmy quality is scarse, Japan is rich in varieties of garnet specimens, thanks to the complicated tectonic events in the geological history. The recent discovery of gemmy rainbow andradite garnet is a good example of diastrophism in the past.
Almandine from Ehime and spessertine from Nagano represent typical specimens of Japanese garnets.
A demantoid from Iran is new since 2001. The mining sight is situated 1,500m avobe sea level in the Plateau of Iran. The demantoid crystals are hosted by regionary metamorphosed asbestiform rocks. Mining is done by hand , mostly in December-March when the wheather is cooler. During 2003−2004 season, approximately 20kg of rough was extracted . Of this, 1.5kg was facet-quality, with about 200g yielding stones mor than 2ct in good color and clarity. Specimen of the photo is not of gem quality but in good color and shape, which reminds me of uvarovite garnet.
アフガン石(Afghanite)
7x5.5x5cm
Sar-e-Sang, Afghanistanサファイア(Sapphire)
10x7x6cm
Mogok, Burma柱石(Scapolite) 49x40x32mm 55x11x7mmm Mpwa Mpwa, Morogoro, Tanzania
アフガン石 (Afghanite) : (Na,Ca,K)8(Si,Al)12O24(SO4,Cl,CO3)3・H2O
最近インターネット等でよく見かける鉱物にアフガン石があります。
標本は全てラピス・ラズリで名高いアフガニスタンのサーレ・サン鉱山で、その上色合いまでそっくりの魅力的な濃紺色なのですが、さてその正体は何かと調べようにも私の持っている2冊の鉱物図鑑には掲載されていません。
色々調べてみて、灰霞石(カンクリン石)の仲間とあるのですが、ではカンクリン石がどんな鉱物か見たことも聞いたこともありませんでした。
私の鉱物図鑑の一つには載っていましたが、しかし写真がなくては化学組成や特性だけでは見当がつきません。
幸い Mineralogy Data Base にて詳細な情報が得られました。
それによるとアフガン石が発見されたのは1968年、サーレ・サン鉱山の特産の鉱物で、名前もアフガニスタンに因むもの。
ラピスラズリとよく似た複雑な化学組成の鉱物で、鮮やかな濃紺色も同様に、分離した硫黄イオンによる発色と推定されます。
私が入手した標本は一般的な濃紺のしかし不透明な結晶とは異なり、淡い色合いですが、透明度が高い結晶です。
実は隣の写真のサファイアとばかり思い込んで、買ってしまっった後で実はこれがアフガナイトであったと気づいた次第。 何しろ同じ六方晶系で、半透明の淡青色の結晶が白い母岩の中からたくさん出ているので、つい間違ってしまった。
宝石鉱物でない結晶を買うことは滅多にありませんが、しかしこれも怪我の功名で、今では結構気に入っています。
Recently, afghanite is often seen in the market. All specimens come from Sar-e-Sang, Afghanistan, the famous Lapis-Lazuri mine. What is Afghanite ? I could not afford to check it because there are no description in my two mineral encyclopedias. They say afghanite belongs to cancrinite, which is unknown to me neither.
Thanks to Mineralogy Data Base, I have got detailed information ; Afghanite was discovered in 1968 at Sar-e-Sang and name derives from Afghanistan. The complicated chemical composition resembles that of Lapis Lazuri and deed blue color seems to be caused by sulfic ion, either.
モゴクのサファイア結晶マトリクス (Mogok Sapphire crystal matrix)
石灰岩の母岩中に無数の平板状のサファイア結晶が埋まっています。
最大の結晶は3cmほどありますが、裏面にはさらに大きな結晶が埋まっていて、塩酸でもあれば母岩を溶かしてサファイア結晶だけを取り出したい誘惑に駆られます。
モゴクはカシミールの鉱脈が遠の昔に枯渇してしまって以来、世界で最も高品質のサファイア産地です。
この標本の結晶は宝石質ではありませんが、色や結晶の透明度は、宝石になる一歩手前のものです。
なるほどこのような産状なら高品質の結晶が出来ても不思議はありません。
A tabular sapphire crystals are in calcite matrix. The biggest crystals is 3cm long but bigger crystals and burried in calcite. Since Kashmir sapphire vein has exhausted 100 years ago, Mogok has been renowned as the bestsapphire locality.
Althoughthis matrix specimen is not of gem quality, yet remind me of the great potential of Mogok area.
タンザニアの柱石 (Tanzanian Scapolite)
何故かモルダバイトを専門に扱うチェコの業者が毎年タンザニアのスカポライトを持ってくるのですが、今年も6月の新宿ショーにて宝石質の結晶を入手しました。
インクルージョンの入り方や結晶の厚みが足りないため、カットを免れた結晶で、そのため値段も格安と願ったり叶ったりの条件です。
Every year, a Czech moldavite dealer brings Tanzanian scapolite crystals to the June Shinzyuku mineral show.
This year two gemmy sapolite crystals but escaped cutting due to inclusions and slim shape.
トルマリンTourmaline 20mm
Mogok, Burmaトルマリン
Achroite 26x8mm
Pakistanトルマリン(Elbaite) 86x81x42mm
茨城県妙見山
Myouken Mtn. Ibaragi, Japanトルマリン(Elbaite) 45mm
茨城県妙見山
Myouken Mtn. Ibaragi, Japanベスブ石(Vesuvianite)
長野県甲武信鉱山
54x41mm Nagano、Japan
曹長石とリシア雲母上の
トルマリン 45x32mm
Tourmaline on
albite and Lepidolite
Nooristan, Afghanistanトルマリン
(エルバイト)
64x31x23mm
Tourmaline(Elbaite)
Afghanistanリシア輝石(Spodumen)
50mm 52g
Afghanistan白雲母(Muscovite) 21x13x7cm
minas Gerais, Brazil
ペグマタイト結晶 (Pegmatite Minerals)
宝石結晶のコレクションとなれば必然的にペグマタイト性の結晶がその中心となります。
とりわけトルマリンは世界各地に次々と新しい産地や新しい色合いの結晶が発見されるために、コレクションは果てしなく増えてゆきます。
とは言っても個人のささやかなコレクションですからたいしたものではありませんが、しかしモゴク産の透明なピンクの結晶、パキスタン産の珍しいアクロアイト、ありふれてはいますがアフガニスタンのパステル・カラーのトルマリンと紫のリシア雲母と白い曹長石との組み合わせ、同じくアフガニスタン産の、こちらはサンディエゴのクイーン・マイン産とそっくりのピンクに緑の帽子を被った結晶といずれも嬉しい標本ばかり。
極めつけは、今は採集禁止となってしまった妙見山の青いトルマリン。
これは6月の新宿ショーと同時に飯田橋で開催された鉱物同好会にて入手しました。
実は妙見山のトルマリンは2000年1月に私自身、青緑色のものを採集しました。
余り結晶形ははっきりしませんが雲母や石英、長石と共に脈状に入っている写真の標本です。
Pegmatite minerals represent major part of gem crystal collection. Tourmalin collection increases endless since new locality and new color variations year by year. My humble collection is not specutaclar at all. Yet it is a great pleasure to see transparent Mogok pink, rare colorless Pakistanese achroite, pastel color Afghan elbaite with purple lepidolite and snow white albite combination and, also Afghan pink elbaite with green cap that resembles typical Queen Mine, San Diego one. The most important
new collection is Myouken Mtn. blue elbaite,which is not gemmy but quite rare elbaite from Japan. I collected myself bluish green one in January, 2000.
リチア輝石 (Spodumen)
無色の宝石質のスポジューメンの結晶で表面は無数のエッチングで覆われています。
内部には殆どインクルージョンがありません。 結晶自体は52g(260ct)あり、うまくカットすれば 100 カラット以上のルースが得られますが、しかし無色のスポジューメンは宝石としては全く価値がありません。
おかげで貴重な宝石質の結晶標本として入手できました。
Although this gemmy spodumen crystal surface is covered with numerous etching, the interior is clean. If carefully facetted by skilful cutter, 100 carat over facetrted stone will be obtained. However, colorless spodumen is valueless as gemstone, I had a lucky opportunity to obtain the valuable gemmy crystal specimen.
白雲母 (Muscovite)
白雲母はペグマタイトにはありふれた鉱物で、しかも宝石になるような代物でもありません。
しかし写真のように 20cm を超える大きさで、その上マンガンによる発色と思いますが、レピドライトのような紫色の結晶となると存在感があります。
Muscovite is abundant in pegmatite and is not gem mineral. However a crystal over 20cm with lepidolike purple color (probably colored by manganese ion) is worth adding to collection.
ベスブ石 (Vesuvianite)
ベスブ石は実はペグマタイト鉱物ではなく、主にスカルン性の接触熱変成によって出来る鉱物です。
ベスブ石は世界的に多様な変種があますが宝石質のものは大変稀な鉱物です。
宝石質でこそありませんが、世界的な水準の美しい結晶が日本各地から産出したことは余り知られていません。
神奈川県箒沢、埼玉県秩父鉱山、岐阜県洞戸鉱山、大分県藤河内、宮崎県岩戸銅山等々中には宝石としてカットされたこともあるほどの結晶を産出しました。
とりわけ見事な結晶を産出し続けて来たのが写真の長野県上川村の梓川上流域にある甲武信鉱山です。濃褐色の光沢の強いベスブ石結晶は世界の他の産地と比べても遜色がありません。
Vesuvianite is not pegmatite origin, but metamorphic, occurs mainly in skarns. Although there are wide varieties in the world, gem crystal is quite rare. I am proud to tell that in Japan, there are lots of world class vesuvianite localities ; Chichibu mine in
Saitama, Horato mine in Gifu, Fujikawauchi in Ooita, Iwato cupper mine in Miyazaki etc. And deep brownish bright crystal from Kobushi mine in Nagano is the most representative one.
桜石(菫青石仮晶) Cerasite 5〜8mm 京都府亀岡市稗田野町湯ノ花 Kyoto, Japan |
トパーズ (Topaz) 70mm Ghundao Hill, Katlang, Pakistan |
トパーズ (Topaz) 49x39mm Thomas Range, Utah |
紫色のトパーズ Purple Topaz 11mm Ouro Preto, Brazil |
葡萄石と緑簾石 Prehnite & Epidote 54x35x20mm Diakon, Nioro du Sahel, Mali |
桜石(菫青石仮晶 : Cerasite )
菫青石そのものはアイオライト、あるいはコルディエライト、あるいはウォーター・サファイアと呼ばれることもあるように、やや陰りを帯びたサファイアのような宝石です。
桜石とは、本来四角柱の結晶形の菫青石の結晶三つが集まり、その柱面が平行に突き抜けて重なり合い組み合わさった透入三連晶と呼ばれる形になったものが風化して雲母になったが、元の菫青石の結晶形だけが残されて、桜の花びらのように見えるものです。
雲母ですから、もはや宝石ではありませんが、黒い粘板岩などの中にきれいな桜の花びらのように見えるため、もっぱら水石愛好家に珍重されています。
世界的に珍しいものですが、日本では栃木県足尾や神奈川県西丹沢、山梨県道志川上流と各地に産しますが、京都の亀岡天神が最も有名です。
既に大正時代末期から天然記念物となってしまっているのだそうです。
したがって自分で掘りに行くことは出来ませんが、時々鉱物フェアで見かけます。
菫青石の結晶は世界的に珍しく、雲母化した仮晶ではあっても、元は菫青石ですから、ようやく入手した次第。
Cordielite itself is a sapphire like dark blue color stone. Sakuraishi : Cerasite( Cherry blossome stone) is widely found in Japan, included in slate, as products of contact metamorphism. Cerasite crystals exibit flower-shaped cross sections due to penetration trilling of hexagonal prismatic crystals almost decomposed into cerisite.
トパーズ (Topazes)
とりたてて珍しいわけではありませんが、3種のトパーズのコレクションが増えました。
最初のパキスタン、カトランのトパーズは既にコレクションにありますが、7cmもある大きな結晶はこの産地としては最大級と思います。
次のアメリカ、ユタ州、トーマス山地のトパーズもいつでも入手できるからと、かつて単結晶を一つ入手しただけでした。今回20年ぶりにマトリクスを入手しました。
3番目のブラジル、オウロ・プレトのトパーズは10年に1度くらいしか産出しない紫色のものです。小さな結晶がまとめて発見されたようです。
Although not extremely rare, 3 topazes were added to my collection. First is from Katlang, Pakistan. 7cm long crystal is the longest from this locality. 2nd is the first matrix crystal collection from Thomas Range, Utah, U..S.A. The last one is a small but rare purple topaz from Ouro Preto, Brazil, where purple crystal is said to appear once for every 10 years.
葡萄石と緑簾石 (Prehnite and Epidote)
マリ産の鉱物といえば1990年代に登場したグロシュラー・アンドラダイト・ガーネットが有名です。
今回惚れ惚れするほどの葡萄石とその背面に葡萄石に包まれた漆黒の緑簾石の結晶の取り合わせに出会いました。
ディアコン、ニオロ デュ サエルという地名には何処かで聞いたことがあると、ひょっとしたらとマリのグランダイトのページを見ると、ちゃんと書いてあるではありませんか !
マリのグランダイトは接触変成鉱床に葡萄石、緑簾石、金緑石等と共に産すると。
すっかり忘れてしまっていたのですが、あの葡萄石と緑簾石とがこんなにも見事な結晶だったとはね。
Mali mineral made a striking debut in mid 1990, with spectacular grossular andradite garnet. This time, another minerals appeared into the market with perfect epidote crystal enbedded in the delicious mascut color prehnite crystal, which locality ; Diakon, Niolo du Saher remind me something. Then I opned my own home page, "grossular garnet" to find that I myself had written that Mali grandite is found with epidote, prehnight and crysoberyl etc. etc. in contact metamorphic zone !! I had totally forgotten what I myself wrote about, which i encountered with pleasant surprise.