新着結晶展示室
(New Specimen Gallery)


December 2014  日本の結晶




佐賀県富士町杉山佐嘉鉱山のアクアマリン

  佐賀県富士町杉佐嘉鉱山のペグマタイトについての詳細な情報はありません。
かつてはベリリウム鉱の採集用に採掘されていたとの情報もあります。 
 確かに緑柱石はベリリウム鉱物ではありますが、しかし酸化ベリリウムが14%しか含まれていませんから、緑柱石の大岩脈でもない限りとても採算が採れなかったでしょう。
 むしろ近隣の有田焼の陶石用に採石が行われていたのではないかと思われます。
が、現在ではすっかり掘り尽くされて跡形もないようです。
 しかしながら、かつてこの地で採集された緑柱石の標本は細々ながら、鉱物市場に出回っています。 
 多くは不透明な結晶が大半ですが、中には小さいながら色が濃く半透明のアクアマリンと呼べる結晶も見かけます。
 写真の上の結晶は8mmと小さいながら完全に透明な宝石質です。
 日本では他に岐阜県苗木や茨城県の山の尾近隣と福島県の石川町でかつて緑柱石を産しましたが佐賀県富士町杉山がもっとも美しいアクアマリンを産したと言って良いでしょう。
石英中のアクアマリン 5x5x3cm 8mm 16mm

茨城県妙見山のトルマリン
48x39x28mm 紅電気石結晶 15mm 紅電気石群晶  59x39x55mm
 茨城県北部の久慈郡里美村の妙見山にリチウム・ペグマタイトが発見されたのは昭和30年 (1955年)頃とのこと。
しかしこの発見が公にされることはなく、20年近く情報は埋もれたままになっていました。
 昭和40年代の終わり頃になって、一部の鉱物最終家達がおぼろげな情報を頼りにこの一帯でペグマタイトを探し始めましたが、最終的に鉱床を再発見したのは桜井欽一先生のグループで、発見後の一年ほどじっくりと採集を独占し、その後ようやく公表したと言う逸話が草下英明さんの ”鉱物採集フィールドガイド” に紹介されています。
 公表された産地はあっというまに掘り尽くされてしまいましたが、それでも 2000年初めに訪れた際には散乱する岩の破片からリチア雲母の塊や青緑色のトルマリンの群晶が採集できたものでした。 
 その後、鉱脈は重機で土地をごっそりと削り取られて跡形もなく消え失せてしまったとのことです。
 しかし公表されてから30年余りの間に採集された標本が現在も細々と市場に姿を見せています。
 真っ黒な電気石でさえもかつては垂涎の的でしたから、ともあれ日本では稀な紅電気石を入手できたのは嬉しい限りです。

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