新着結晶展示室
December 2025 : 岩手県越喜来湾・崎浜のトルマリン
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| 崎浜産トルマリン結晶 |
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| 1.68ct 6.94x4.73x5.92mm | 3.2ct 6.56x6.09x8.53mm | 3.25ct 12.92x5.78x5.25mm | 2.43ct 10.8x5.74x3.31mm | 2.11ct 8.24x5.70x4.90mm |
岩手県南端の大船渡の東15km程の越喜来湾の崎浜にて、正確な年代は不明ですが、明治時代に海岸で美しいトルマリン結晶が発見されました。
余りにも美しい結晶なので、沖合で難破した外国船から流出した標本なのだろうと憶測されたほど。
ところが昭和13年にここを訪れた鉱物マニアが海岸の転石中に色とりどりのエルバイト・トルマリンを採集しました。
この転石は、当時、海岸から海中に伸びるペグマタイトを掘り崩して港の工事用に使っていた岩脈の一部であったと判明しました。
かくして、貴重なエルバイト・トルマリン結晶は港の防波堤の中に埋められてしまったわけです。
が、ペグマタイト岩脈の一部は駆け付けた鉱物マニアや地元の人々によって採集され、最大で10cmにも達する結晶が残されました。
と、日本で唯一、宝石質のエルバイト・トルマリン結晶を産出した岩手県・越喜来湾・崎浜のトルマリン結晶がどんなものであったか、長年見たいものだと思っていました。 何しろ写真さえ見る機会がありませんでした。
ところが、最近ネット市場に、崎浜産と称するトルマリン結晶が登場しました。
冒頭の写真のように、確かに小さな結晶片ではありますが、ブラジルやモザンビーク産に匹敵する宝石質結晶です。
出品者によると、かつて採集された結晶を、20年余り昔にまとめて入手したものとのことです。
青森県と岩手県県境の太平洋東海岸沿いに花崗岩帯が南に延びています。
この花崗岩体は主に白亜紀(1億5000万年 ー 6600万年昔)に生成されたものです。
この花崗岩帯の最東南端が越喜来湾・崎浜にまで伸びています。
崎浜漁港の海に延びる花崗岩ペグマタイト脈中に、最大で20cmに達する、日本ではほぼ唯一の宝石質の
エルバイト・トルマリン結晶が見られました。
日本各地の花崗岩ペグマタイトの中でエルバイト・トルマリンは、福岡県長垂と、茨城県の妙見山から、
青、緑、ピンクの美しい結晶を産しましたが、いずれも不透明な結晶標本級の品質でした。
宝石質の透明度の高い結晶を産したのは、唯一、岩手県、越喜来湾・崎浜のペグマタイトでした。
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| 岩手県・越喜来湾・崎浜港のトルマリン結晶を含むペグマタイト岩塊 2007年撮影 | ||
かつて日本で唯一宝石質のトルマリンを産した、崎浜漁港近くのペグマタイト岩塊には無数のショール(黒い電気石)結晶を見ることが出来ました。
残念ながら、2011年の東北大地震で東北から茨城、千葉県に至る海岸一帯が最大で20mに達する津波で壊滅的な被害を受けました。
その後の復興事業にて、津波被害を受けた海岸一帯に大規模な防波堤と地上げ工事が行われました。
最新のグーグルアースの写真を見る限り、崎浜漁港一帯も、写真の海岸に隣接するペグマタイト岩脈はすっかり整地されて、失われてしまったようです。