新着結晶展示室
(New Gem Crystal Gallery )
February 2024 : マダガスカルのスピネル結晶
Spinel crystrals 0.85ct(5.0x4.9x3.5mm) - 1.77ct(10.8x4.4x4.1mm) |
Madagascar |
多彩な宝石を産するマダガスカルですが、スピネルの産出は比較的稀で、ルースを見かける機会は滅多にありません。
そして結晶標本となると、写真さえ見る機会もありませんでしたが、漸く水摩礫を入手出来ました。
詳細な産地は不明ですが、恐らくイラカカ川の漂砂鉱床から採れたものと考えられます。
結晶面がすっかり失わるほどの摩耗が進んでいて、屈折率の測定が出来ず、サファイア等、他の結晶の可能性もあり得ますが、しかし色合いからは、まずスピネルと考えられます。
念のため比重を測ってみると、平均で 3.65 とまさしくスピネルでした。
透明度の高い宝石質の結晶ですが、宝石ルースとしてカットするには厚さが 2,3㎜ 程足りません。
そのため、結晶標本として売り出されたのでしょう。 おかげで結晶標本に遭遇できたというわけです。
結晶質の大理石岩脈にルビーやサファイアと同じ産状で発見されるスピネルですが、量が圧倒的に少ないのは何故かと長年不思議に思っていましたが、ヴェトナム産スピネルの産状を研究した、Gems & Gemology 誌 2012 Fall 号 に下記のようなスピネル生成のダイアグラムがありました ;
Al2O3 + CaMg(CO3)2 → Al2MgO4 + CaCO3 + CO2 コランダム 苦灰岩 スピネル 石灰岩 二酸化炭素
即ち、苦灰岩中に結晶していたコランダムが地殻変動で熱変成作用を受けてスピネルに変わり、母岩の苦灰岩のマグネシウムが奪われて、石灰岩(結晶大理石)へと変貌したという解釈です。
苦灰岩層に含まれるコランダムがスピネルに変貌するような温度と圧力条件とが保たれる地殻変動が常に起きるとは限らず、熱変成作用が不十分で、コランダムと共にスピネルが共生するような産状も多々あります。
したがって、世界にルビーやサファイアの産地は数多くありますが、スピネルは稀で、産出量も圧倒的に少ない理由が、これではっきりしました。