新着結晶展示室
(New Gemcrystal Gallery)

 January 2020  :  稀なる結晶 (Rare crystals) 

 
 


エウリタイト(Eulytite)
     ギリシア語の ”Eulitos :  液化し易い” にちなんで命名された、Bi2(GeO)3という組成の、等軸晶系、モース硬度が4½、比重が6.6、屈折率が 2.07-10 の鉱物。
 酸化ビスマスが85%を占めるので融点が低く溶け易いのだろう。
 天然にはビスマスの鉱脈に副産物として発見されるという。 
ただし天然には同じ結晶系で ビスマスの一部が鉛やバリウムに、さらに珪酸塩がヴァナジウム酸やリン酸に置き換わった、Pb3・Bi (VO4 、Ba3・Bi (PO4)3 なる鉱物と固溶体を作っているという。400℃程の融点ですから、引き上げ法かフラックス法合成と考えられます。
結晶端がきれいに出ているのが印象的です。
 今回新着結晶として紹介しましたが、実は入手したのは20年以上昔、ミュンヘン・ショーにロシアで作られた合成結晶を多種出品していた、モスクワにあるフェルスマン博物館でした。
 新宿や池袋のフェアに出店していた、あのおじさんです。
 中々きれいな結晶なので、何時の日かカットされたルースでも出たらと考えて入手したもの。 しかしカットしたルースなど何時になっても出てこないし、第一エウリタイトなる鉱物の正体すら長年分からずにいたものでした。
 最近ネットで検索したところ、結構な情報が見つかり、ドイツのザクセン産の天然の結晶写真まで見つかった。 色こそ違え結晶の形まで似ているのにはただただ感心。 
 合成エウリタイト  天然のエウリタイト結晶 1mm
 39.0x10.3x7.5mm  Schneeberg, Saxony, Germany

ロシアのピンク・トパーズ(Russian Pink Topaz)
     昔馴染みの鉱物ショップが開催するフェアを冷やかしで訪ねた際に見つけたのがこの小さいながらピンクのトパーズ結晶。
 おお、サナルカ川産かと驚いて、良くぞそんな産地から手に入ったと感心したら、実はロシア産とだけで、正確な産地は分からなかったが、ネットであれこれ調べところ、ロシアのピンク・トパーズ産地はウラル山脈のサナルカ川でかつて産したという情報があったから、それに決めたという。
 何のことはない、その情報源とは我がホームページだったのだ。
従って、サナルカ川産というのは当てにならないが、しかし他の土地から発見されたという情報は皆無です。
 ロシアに限らず、ピンクのトパーズはブラジル、ミナス・ジェライス州のオウロプレトから稀に採れるのみ、
あるいはバイア州のブルマードとパキスタンのカトランとでかつてほんの少量のみ産したが、いずれも今は絶産状態になっている。
 そんなわけで、100年前に絶産となった筈のロシア産のピンクのトパーズは小さいながら貴重な標本です。
 7.5x2.7x1.5mm
Sanarka River, Ural Mtns.
 


モゴクのペリドット結晶(Mogok Peridot Crystals)
      世界的な宝石産地であるビルマのモゴク周辺ではルビー、サファイア、スピネル、更にペリドットとそれぞれ産状のが全く異なる宝石の、世界で最上の大きく美しい宝石結晶を産する驚異の土地です。
 世界の博物館や王室が所有する100カラットもあるペリドットのルースやそれを使った宝飾品の多くがビルマ産です。
 ペリドットの正確な産地はモゴクの北35㎞にある Pyanggaun 村にそびえる
標高2250mのKyaukpon 山の北西斜面の岩盤の亀裂の中から発見されるとのことです。 が、この地についてのレポートは皆無に近く、詳細は不明です。
 さらに素晴らしいルースは市場でよく見かけるのですが、結晶は滅多に姿を見せません。
 今回ようやく小さいながら表面が溶融した柱状の結晶を入手しました。
結晶面こそ定かではありませんが、結晶が成長した後で熱水によるエッチング作用を受けたという、産状を伺わせる貴重な標本です。
 13x4mm  14.x4mm  10x3mm  
Mogok, Burma   


アフガニスタンの藍方石(Afghan Haüyn)
       
アフガニスタンで宝石質のアウインが発見されたのはごく最近のこと。Gems & Gemology 誌には結晶やカットされた1カラットほどの大きさのルースの写真が掲載されましたが、ドイツのアイフェル産地で採れる0.1カラットと小さいながら目の覚めるような鮮やかなアウインとは異なり、不透明でくすんだ色合いのあまり魅力のあるものではありません。
 そのうえ、実はアウインではなく、ごく組成の近い方ソーダ石やノゼアンやアフガナイトを含む霰石だなどという情報が飛び交って少なからず市場が混乱したものです。
 これらの鉱物は精密に分析をしない限り区別が困難です。
そんなわけで今回新たに入手したのが確かにアウインか否か定かではありません。
 1cmにも満たない不透明な小片ですが、強い光を当てると透過光で、アウインのような鮮烈な青い色が印象的です。
   
 6 - 9mm
Sar-e-sang, Badakhshan, Afghanistan
 

マダガスカルのグランディディエライト(Malagasy Grandidierite)
    マダガスカルの最南端のトラノマロに宝石質のグランディディエライト鉱床が発見されたのは2014年の5月。
 2016年3月までに800㎏のラフが採掘され、透明な部分60gから30個ほどの、1カラットを超えるルースは10個、残りは1カラット未満とごく僅かなルースが世界市場に出回った時の狂乱状況は凄まじいものだった。
 1cm未満の不透明な結晶片が1万円を超える値を呼び、0.1 カラットの透明なルースには数十万円という途方もない値が付いたものだ。
 3年ぐらい経って、継続的な採掘により安定した供給が続いて、ようやく写真のような結晶標本が数百円、一つ買ったら、もう一つがおまけについてきた。 低品質のアクアマリンにしか見えない 0.1 カラット足らずのルースに数十万円も払った御仁は今どんな思いでいることやら。
  13x5x3mm
Tranomaro, Madagascar
 




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