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July 2017 : カボションとカーヴィング

   
Pietersite,  K2 stone,  Seraphinite
Ruby/Fuchsite,  Matrix Opal,  Charoite 
 桃簾石の猫  
23g  40x26x16mm
 天河石の天使
39g 50x33x17mm


ピーターサイト( Pietersite )
           
25.46ct 37x22x4mm 角礫岩化したピーターサイト 12㎝
(Brecciated Pietersite rough) 
ピーターサイト片 3 - 6cm 
(Pietersite rough)
研磨品 80.76g 
(Polished Pietersite)
ピーターサイト・カボション 39.85g
(Pietersite cabochon) 
 
Namibia  China   
 ピーターサイト(Pietersite)とは、虎目石(鷹目石)が角礫岩化したものです。
ナミビアの前カンブリア紀の鉄鉱床が地殻変動により熱水作用を受けて石英、青石綿、石灰岩、鉄鉱等が反応して生成したものです。
 装飾品用のピーターサイトはナミビアのクラマン地方と中国の四川省と河南省から発見されます。
ピーターサイトの名は1962年にクラマン地方でこの石を発見した宝石、鉱物商の名に因みます。
 その後1966年に中国でも同様の石が発見され、宝飾市場に登場してきました。"

 ナミビア産は青味を帯びた鷹目石に黄色味を帯びた虎目石が混入した色合いですが、中国産のものは全体的に虎目石からなるものが多いとのことです。
 因みに、鷹目石とは石英が繊維状のクロシド閃石(青石綿)を取り込んだもので、クロシド閃石が酸化して黄~褐色となったものを石英が取り込み、あるいは交代したのが虎目石です。
 いずれもカボションに磨くと繊維状鉱物に共通の一条の光芒が現れるので、ホークス・アイ、タイガーズ・アイと呼ばれます。

 さて、当初、この石の正体が不明であったため、Mindat.で調べたところ、同じピーターサイトの名の、正しくは綴りが一字異なる ”Petersite : (Y,Ce,Nd,Ca)Cu6(PO4)(OH)6・3(H2O)" なる複雑な成分の鉱物があったので、それかと思って紹介しました。
 しかし手元のピーターサイトを調べてみると、比重が2.56、屈折率が1.55と、どう見ても石英の値なので、8か月ほど調べなおした結果、Pietersite の素性が判明したので訂正する次第です。 
 もっとも、以前のテキストにも、これはどう見ても鷹目石のように見えると説明していたのですが、やはりそのとおりでありました。
 

 K2ストーン (K2 Stone)
     最近パキスタン北部カラコルム山脈の、世界第二の高峰K2から採掘され、その名もK2 ストーンと称するカボションカットされた石です。
 白いグラナイト(花崗岩)に紺色のアズライトの斑点があり、色の取り合わせが美しく、確かにアクセサリーに使えます。
 さて、この青い部分が本当にアズライト(Azurite :  藍銅鉱 :Cu3(CO3)2(OH)2)
なのか、あるいはラズライト (Lazulite :  天藍石 :MgAl2(PO4)2(OH)2 かあるいはラピスラズリ(青金石・瑠璃)なのか、成分分析でもしない限り、外見からは判断ができません。時に緑の孔雀石を伴うことがあるという情報からするとアズライトの可能性が高いのですが。
 正確な産地が何処かは不明ですが、地殻変動でヒマラヤ山脈が形成されたときに、熱水作用で花崗岩の亀裂中に藍銅鉱が入り込んで出来たのだろうと思われます。 
  14ct 26x14x4mm
Pakistan
 


セラフィナイト(Seraphinite)
       セラフィナイトは斜緑泥石:Clinoclore : (Mg,Fe)5Al(Si3Al)10(OH)8のロシア、シベリア, Zhelenznogorsk, Korsunovskoye 鉄鉱山から副産物として採れる美しい変種の商品名です。
 普通の斜緑泥石は、ただの石ころですが、セラフィナイトの羽毛状の模様が熾天使(セラフィン : Seraphin) の羽を思わせることから命名されたものです。
 セラフィナイトが鉄鉱山から採れるということから、恐らく緑泥石の岩盤に鉄を含む高温の熱水が貫入した際の熱変性作用により、緑泥石が繊維状に結晶したのだろうと考えられます。
 何処でも起こりうる産状で長らくロシアが、世界で唯一の産地でしたが、ごく最近、アフリカ産が出現したとのこと。
 ロシア産と全く見分けが付かないという未確認情報です。
 58.6ct 33x25x6mm  Russia  


チャロアイト(Charoite)
      チャロアイトはロシアのシベリア、サハ共和国、ムルン山塊のチャロ川にて1978年に発見された単斜晶系に属する鉱物です。
  化学組成は K(Ca,Na)2SiO10(OH・F)n・H2O モース硬度 :5-6
 石灰岩、霞石閃長岩/錐輝石閃長岩の接触地帯に発達したカリ長石を主とする交代岩中に集合体を成して産する。
 魅力的な色合いはマンガンの不純物による発色で、南アフリカのマンガン鉱山から採れる杉石(スギライト)によく似ています。
 39.45ct 24x23x6mm  Russia    


ルビー、フックサイト(クロム雲母)
     タンザニア産のゾイサイト中のルビーによく似ていますが、これはごく最近出現したインド産のクロム雲母(Fuchsite) と藍晶石(Kyanite)とに含まれるルビーを研磨したものです。
 正確な産地は不明ですが、おそらく、南インド、マイソールのルビー鉱床の周辺で新たに発見されたのではないかと思われます。

 緑色のクロム雲母と赤いルビーはそれと分かりますが、青いはずの藍晶石が見当たりません。 おそらくは白い部分が、藍晶石とは同質異像の関係にある紅柱石 (Andalucite)か珪線石 (Sillimanite) なのではないかと考えられます。 
 22ct 22.7x17.8x3.9mm
India
 

マトリクスオパール (Matrix Opal)
   マトリクスオパール・オパールとは母岩の中にオパールの細粒が入り込んでいるものです。オパールの 部分だけを取り出すことができないので、母岩ごと研磨して装飾用に使うものです。
 殆どが母岩のようなものですから、純粋なオパールと比べると格安でオパールを楽しめるという利点があります。
 少ないオパールの部分が目立つように、多孔質の母岩に砂糖液を浸み込ませ、全体を希硫酸液に浸して砂糖を炭化させるという処理が一般に行われています。
 このカボションには僅かに緑色のオパールが含まれて入れ、角度により緑色が浮き出して見えます。
  
 12.13ct 27x20x3mm Australia  


桃簾石(Thulite)と天河石(Amazonite)のカーヴィング
     猫のカーヴィングはスーライトとの表示があり、一体何の石かと思って入手したのですが、実は桃簾石(チューライト)の読み間違いであったと判明しました。
 淡青色の天使像は確かにアマゾナイトです。
ほとんどただの石ころのような鉱物でしかありませんが、団塊の鉱物標本を眺めるよりは、こうして加工されたものを眺めるのも一興というものです。


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