新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)


July 2024 : デュモルチエライト(Dumortierite) ???


     
水晶の晶洞 ( 63x46x27mm・68g ) 中の放射状の結晶


   
亜透明の水晶晶洞中の背面から入る光の中に放射状の結晶が浮かび上がる 

類似の産状の針状結晶
       
Natrolite : Na2Al2Si3O10・2H2 Hydromagnesite :
 Mg5(CO3)4(OH)2・4H2
 Cyanotrichite :
 Cu4Al2[(OH)12(SO4)]・2H2O 
Brochantite : Cu4SO4(OH)6 
 Poona, India Esfandaque, Iran  Grandview, Arizona  Branchard Mine, New Mexico 

 ごく最近、ネット市場に突然姿を現した水晶晶洞中の放射状の青い結晶。
”正体不明の鉱物、一般に天然、あるいは合成のデュモルチエライト、と呼ばれている”、と
 業者の説明では仕入れ先の中国の業者がモロッコ産としているとのこと。

 青い放射状の結晶を見る限り、数年前にブラジル、バイア州のセラ・ド・エスピニャーソ (Serra do Espinhaço) に産した、デュモルチエライト [ (Al7BO3(SiO4)3(O・OH)3 : 直方晶系 ]を 思わせます。
 さらに針状結晶が晶洞中に鎮座する様子はインドのプーナ等、アルカリ玄武岩に産する中沸石 ( Mesolite : Na2Ca2Al6Si9O30・8H2O) やソーダ沸石 (Natrolite) を思わせます。
 ただし沸石はアルカリ玄武岩のような塩基性岩中に発見され、酸性岩の石英晶洞中に生成することは考えにく いことです。
 では、果たしてこれが何なのか ?
 入手して調べてみようと思ったのですが、余りにも細い針状結晶では屈折率や比重を測りようもありません。
ブラジル、バイア産のデュモルチエライトは最大でも長さが3㎜程度の針状結晶が水晶の中に閉じ込められていますが、今回入手した標本では、細いながら最長では20㎜に達する放射状の結晶群が晶洞中に完全に独立しています 
 余りにも美しく見事な結晶なので、合成ではないかと考えられるのも無理からぬことです.
もしこの結晶がデュモルチエライトであれば、人の手でこのような産状の結晶を作るのは至難の業、というよりむしろ不可能としか言いようがありません。
 しかしながら、明礬、硫酸銅、燐酸アンモニウムのような、常温、常圧で結晶する水溶性の化学物質であれば、単に熱湯に溶かして静かに置いておけば 3日~1週間程度で樹脂状、放射状、八面体等の結晶が得られます。
 これらの結晶作成キットはマジック・クリスタル等の名前で少なからぬ種類がアマゾン等で手に入ります。
 そうした物質を水晶の晶洞内で結晶として成長させた可能性も大いにあります。
 この結晶の正体が何か、何処でどのような産状で発見されたのか、いずれ判明するだろうと期待して、とりあえずは、天然のデュモルチエライトか ??? としておきます。


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