新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)
March 2020 : デマントイド・ガーネット(Demantoid Garnets)
3.5x5mm 0.39ct |
4.5x6.0mm 0.655ct |
3.0x4.0mm 0.41ct |
5.0x5.6mm 0.49ct |
1.8mm(0.085ct)- 3.7mm (0.33ct) |
Kladovka, Ural Mountains, Russia | Khuzdar Area, Baluchistan, Pakistan |
ウラル山脈のデマントイド
ロシアのウラル山脈で宝石質のデマントイドが発見されたのは18世紀半ばでした。
ロシア革命の頃まではウラル山脈が世界でほぼ唯一のデマントイドの産地でしたが、社会主義革命により、産業用途には使えないガーネットの採掘は途絶え、デマントイドは幻の宝石となっていました。
ソヴィエト連邦崩壊後の20世紀末にようやく漂砂鉱床から採れる僅かな結晶がカットされ、世界市場に細々と供給されるようになりました。 が、供給量は極めて少なく、デマントイドは依然として極めて稀少な宝石であり、濃い緑色の透明度の高い最上の1カラットのルースはカラット当たり
1万ドルもの水準の、最も高価な宝石でした。
2002年にアメリカの鉱物・宝石商のパラ・インターナショナルとロシアの専門家による調査の結果、初めて宝石質のデマントイドの一次鉱床が発見されました。
しかし、宝石の鉱床は、一般の金属のような豊穣な鉱脈が存在するわけではなく、世界で最上のロシアのデマントイドは依然として、僅かな量が流通する極めて稀少な宝石のままです。
カットされたルースだけではなく、ウラル産のデマントイド結晶標本が市場に姿を見せることも殆どなく、半世紀余りのコレクションを通して、見たこともありませんでした。
今回ようやく入手したのが冒頭の小さな結晶標本です ; 1-2mm大の小粒の結晶のクラスターでしかありませんが、それでも個々の結晶が摩耗しないで連なっているのは、これらが漂砂鉱床ではなく、一時鉱床から採集されたものと判断できる、貴重な標本です。
パキスタンのデマントイド
2012年頃からパキスタンのバルチスタン地方から小さいながら、透明度が高く美しいデマントイドが発見されたというニュースが鉱物専門誌に出始めていましたが、 Gems& Gemology 誌の Winter2014 Gem Newsに詳しい記事が掲載されました。
この号に掲載されたのは、5-10mmの大きさの透明度に欠ける標本でしたが、後日ネット市場で見かけて入手したのは冒頭の写真のように、小さいながら透明度が高く形の整った結晶でした。
このガーネットは蛇紋岩化した橄欖岩塊の地層から採集され、結晶内部に蛇紋岩のホース・テールと黒い磁鉄鉱のインクルージョンが含まれています。
分析の結果では 98mol % とほぼ純粋なアンドラダイトであり、屈折率は1.70、比重が3.80-90、クロムの含有量は測定限度の2ppmー10ppmです。
やや色が濃い結晶はルースとしてカットされましたが、0.05-0.10ct
と小さく、標本程度でしかありません。
が、左の写真のように、沃化メチレン液に浸し、強い光の照明で虹色の分散光を発散します。
直径8.8mmの結晶の [110] 面に平行にカットされた窓から
沃化メチレンに浸して、交差偏光照明で見た内部