新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)
November 2021 : パキスタンの結晶 ( Crystals from Pakistan)
アマゾナイト(Amazonit)、方解石とスフェーン(Sphene in Calcite) 曹長石(Albite), トルマリン (Elbaite Tourmaline) |
微斜長石( Microcline var. Amazonite)
無数のペグマタイト鉱床に恵まれたパキスタンですからアマゾナイト等いくらでもありそうですが、不思議なことに、これまでパキスタン産のアマゾナイトを見かけたことがありません。
アマゾナイトの青緑の色は不純物として含まれるウランが核分裂により最終的に変換された鉛に因る発色です。
ウラン235の半減期は7億年と長く、仮に微斜長石にウランが含まれていても、数千万年前と新しいヒマラヤ造山運動で生成されたペグマタイトの微斜長石には青緑の発色を引き起こす鉛が十分に蓄積される時間が足りない筈と気づきました。
するとこの青緑のアマゾナイトに含まれる鉛は何処から来たのかという疑問が生じます。
世界でアマゾナイトを産するのは、ウラル山脈、北米のロッキー山脈、ブラジルミナス・ジェライス等10億年以上昔の古い地層の地域です。
考えられる可能性としては、6億年昔のゴンドワナ大陸よりさらに古い超大陸の地層に含まれていたウランの名残がヒマラヤ造山運動時に紛れ込んだのかもしれません。35x27x27mm Chilas, Diamar District Gilgit-Baltistan
曹長石 (Albite)
赤い曹長石としてネット市場に見かけた結晶標本です。
赤い色は曹長石本体の色ではなく、酸化鉄を含む粘土質の土砂に覆われているだけの事です。
この標本に注目したのは、産地がパキスタンとの国境のハイバル峠に近い
ゼイギー丘陵 (Zagi Mtn.) 産という事実です。
ここはランタノイド系の希土類元素に富む、世界でも稀な宝石質のバストネス石の産地として知られた土地です。
バストネス石のような特異な鉱物以外にも、ペグマタイト鉱床やアルプス型の熱水起源の蛍石、ジルコン、金紅石、石英、微斜長石、スフェーン等々、多彩な鉱物の産地と資料にあり、一体どんな鉱物が採れるのか、大いに興味がありましたが、ようやくその一つに出会った次第です。
9 - 14mm
Zagi Mtn, near Kyber Pass, Pakistan
方解石とチタナイト (Sphene in Calcite)
スフェーン結晶を包有する方解石 73x55x45mm スフェーン(Sphene) 10x5㎜ 詳細な産地は不明ですが、方解石の群晶中に端正な姿のスフェーンの結晶が鎮座する標本です。
エルバイト・トルマリン (Elbaite Tourmaline)
パキスタン産と称するピンクのパステルカラーのエルバイト・トルマリンをネット・オークションで見かけて落札しました。
詳細な産地のデータがないので、出品者の他の品があれば参考になるかも、と思って探したのですが、ローマのコイン、古代のアクセサリー等々、雑多な品ばかり、鉱物標本の専門店でもないのに何故、こんな美しい結晶標本を持っているのか不思議です。
パキスタン産のトルマリン結晶は少なからず入手したり、あちこちの標本を見てはいますが、ついぞ、このようなピンクのパステルカラーのものは見た記憶がありません。
よくあることですが、アフガニスタン産の宝石の大半は国境を越えてパキスタン経由で流通しますから、恐らくこの結晶は、アフガニスタン、ヌーリスタンの Mawi, Paprok, Kunar 等のペグマタイト産ではないかと考えられます。
この結晶は小さく、無数の亀裂や内包物で透明度が失われてはいますが、しかし半透明の美しいピンクのパステルカラーが魅力的な結晶標本です。35.0x8.7x6.0mm 3.5g Pakistan ??