新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)


November 2024  : フランスの蛍石 (French Fluorites)

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42g 44x29x29mm  65g 50x38x27mm 
Mont Sainte Odile, France Marsanges Mine,  Langeac, Auvergnes, France

 フランスの蛍石はタルン県 ル・ビュール(Le Burg) の素晴らしい青緑色と、シャモニー等、アルプス産の赤ーピンクのものが有名です。
 ル・ビュール産は、写真で見るだけで、恐らく絶産になったのではないかと思われます。
アルプスの赤ーピンクの蛍石は現在も息をのむような結晶が採集されていて、雑誌には姿を見せますが、天文学的な値段です。 
 アルプスの危険な高所にて命がけで採掘されているのですから、それも已むを得ません。
 滅多に姿を見せないフランス産蛍石ですが、最近立て続けに2点の結晶を入手しました。

モン・サントディールの蛍石 (Fluorite from Mont Sainte Odile)

  この標本を購入した際にモン・サントディール産と明記されていたので、何時ものように Mindat にて如何なる産状なのか調べてみました。
 Mindat によると、フランスには463の蛍石産地があるとのことです。
グーグルの地図で調べると、フランス東部、ドイツ国境の都市、ストラスブールの南西30km程のヴォージュ山脈中に、確かに標高700mほどのサントディール山があります。この山は歴史的な教会がある観光名所となっています。
 この一帯は世界的な鉱物フェアで名高いサント・マリー・オ・ミーヌ (Sainte Marie aux Mines : 鉱山の聖母マリア) に近い鉱山地帯で、20~30の蛍石産地があります。
 しかし、蛍石の産地としてモン・サントディールは記されてはいません。
この地から2km 程離れた所に サン・ナボール(Saint Nabor)採石場があって、年間 50 万トンの蛍石が採掘されているとのことです。
 ただし、その用途は舗装道路建設の敷石用とあり、相当品位の低い蛍石と思われます。
今回入手したのは中々きれいな結晶で、道路の敷石級ではありません。
 稀に採集された標本級を近くの有名な観光地の山に因んで産地としたという可能性は考えられます。
 したがって、産地の信憑性は不明です。

マルサンジュ鉱山の蛍石 ( Fluorite from Marsanges Mine, Auvergne, France)
     
 無色透明の6面体結晶  背面の結晶は淡緑色  重晶石(黄色)を伴う青緑色の蛍石 94x83x57mm

 無色透明の蛍石は中々見かけないのですが、この標本は無色の六面体の結晶群と背面の淡緑色の蛍石との組み合わせです。
Mindat で調べると、この鉱山はフランスのオーヴェルニュ地方ランジャックの町にほど近い鉱山です。
 1830年にアンチモン鉱山として開発されたが、ほどなく豊穣な蛍石の採掘が主となり、1977年までに93万トンの蛍石が採掘され、オーヴェルニュでは屈指の蛍石の鉱山となった。
 閉山後の2017年以降は、標本採取用の鉱山として運営されているとのことです。
 その他には、白鉛鉱 (PbCO3), 方鉛鉱 (PbS)、重晶石 ( BaSO4)、石膏 (CaSO4)、菱鉄鉱 (FeSO4)、車骨鉱 (PbCuSbS3)、輝安鉱 (Sb2S3) を産したとのことですから、どのような産状であったかは想像がつきます。
Mindat にはこの鉱山産の鉱物の写真を100枚余りを見ることができますが、多くの蛍石が無色透明な品質と、美しい青緑色の魅力的な蛍石を産したことが分かります。 上右の写真は、その一枚で、この鉱山産結晶の高品質が窺えます。
 実は、この鉱山があるオーヴェルニュ地方のランジャックという町は、20年ほど昔に訪れて、サファイアの採集を試みたことがあります。
 フランスの”GEO” という雑誌のオーヴェルニュ紹介版の記事に5行ほど掲載された情報を頼りに訪れて、1~2時間、椀掛けをした次第です。
 サファイアこそ採れませんでしたが、オーヴェルニュ地方の美しさにはすっかり魅せられて、その後何度か訪れました。


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