新着結晶展示室
(New Crystal Gallery)


September 2023 : ヴェイリネン石(Väyrynenite)


     
0.66ct 15.1x3.2x1.9mm   0.04ct(3.5mm) - 0.09ct(5.1mm) 
Shengus, Pakistan 
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 マンガンとベリリウムの水酸基を含む燐酸塩という組成のヴェイリネン石 〖Mn2+Be(PO4)・OH〗は1934年にフィンランドのペグマタイト鉱床で、不透明ながらピンクの結晶団塊が発見され、その後も世界各地のペグマタイトから報告されていました。
 しかし、大半は黒く不透明なマンガン鉱物の団塊中に僅かにピンクのヴェイリネン石が埋もれている様な産状でしかなく、よほどの鉱物マニアでもない限り、注目を浴びることはありませんでした。
 したがって、1994年にパキスタン、シェンガスのペグマタイトから、さらに2000年代に入ってアフガニスタンのパプロックとマヴィのペグマタイト鉱床から宝石質の透明なピンクの結晶が発見されたニュースには驚かされたものです。
 最大では2カラットを超えるルースまでカットされましたが、もちろん、それは博物館級の逸品で、ごく稀に姿を見せるルースは大きくても0.2カラット程度の小さなものでした。
 結晶標本も大半は不透明な団塊にすぎず、透明で結晶端を示す、ヴェイリネン石の本来の姿が窺えるような標本は皆無に近いというのが、実情でありました。
 アフガニスタンとパキスタンからは、その後散発的に0.1カラット程の小さなルースが姿を見せるのみでした。
 が、、ごく最近パキスタンのシェンガス・ペグマタイトにて大きな晶洞が発見されたらしく、ヴェイリネン石の結晶としては異例の大きさの1㎝を超える端正な結晶や、小さいながら、透明な結晶片等の標本が姿を見せました。
 今回入手したのは1.5㎝の結晶端を見せる、完全に透明な双晶と、数㎜の、しかし透明なピンクの結晶片ですが、ともあれ、博物館級の結晶です。 


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