新着宝石展示室
2025 November : 水晶 (Quartzs)
|
|||
| 紫水晶 | 黄水晶 | 薔薇水晶 | ミスティック水晶 |
水晶は最もありふれた鉱物で大量に採掘されるため、手頃な値段で供給されます。
しかも、モース硬度が7と硬すぎも、柔らかすぎもせず、その上劈開性が無いため、複雑で繊細な加工が容易です。
近年、水晶のこうした特性を利用して、冒頭の写真の様な、複雑で手の込んだ研磨が施された水晶のルースが登場してきました。
|
![]() |
![]() |
| 11.88ct 14.4x14.4x8.5mm | ||
黄水晶は天然には極めて稀で、例え遭遇しても小さく、さらに、地味な色合いのため、宝飾品としてカットされることは滅多にありません。
したがって、市場で大量に見かける輝かしい色合いの美しい黄水晶は、全てが天然の紫水晶を加熱処理したものです。
写真の黄水晶は複雑な加工がされているように見えますが、実は花弁のようにカットして、背面に8本の溝を切っただけの、比較的単純な処理がされているだけです。
しかし正面から見ると、華やかな効果が印象的です。
大量に産する紫水晶を加熱加工して、研磨しただけですから、カラット当たり単価も100円程度と手頃な水準ですから、結構見栄えのするアクセサリーには格好の素材となります。
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
| 5.63ct 12.4x11.7x8.5mm | 6.17ct 12.0x12.0x7.9mm | |||
薔薇水晶と紫水晶を金平糖の様な複雑な研磨で仕上げたルースです。
前述のように、劈開性がなく、モース硬度が7と加工性が容易な水晶ならではの、複雑で繊細な加工が活かされたルースです。
このような研磨加工はレーザーによる三次元加工でないと、到底不可能と考えられます。
最近では、水晶同様、大量に得られ、複雑な加工が出来るガーネットにも、このような加工を施したルースが姿を見せるようになりました。
|
![]() |
| 2.70ct 12.0x8.0x4.3mm | |
これは、研磨ではなく、ペアカットされたルースの表面に金属イオンを蒸着させる、スパッターリングという処置で着色したルースです。
現在は主に、天然のトパーズに同様の処理を施したものが、安価な宝飾品用に大量に姿を見せます。
水晶への金属蒸着加工は1980年代に、始めは金の薄膜を蒸着させたものが ”アクアオーラ” の呼び名で姿を見せました。
金の被膜の厚いものは金色に、薄い場合にはアクアマリンの様な水色でしたが。
その後、金ではコストが高いせいでしょう、1990年代になって、チタン等様々なイオン化された金属を高速で蒸着する技術が発達し、主にレンズのコーティングや半導体製造過程で一般化されるようになりました。
産業用の技術ですから、耐久性もあり、様々な金属と蒸着層の厚さの調整とにより多彩な色合いが出せるようになりました。
この技術は1990年代になって、宝飾品としては人気がなく、大量に捨てられていた無色のトパーズに用いられ、メーカーにより様々な名前で販売されるようになりました。
現在では一般的にミスティック・トパーズと呼ばれます。
ガラス、プラスティック、水晶等、透明な素材であれば、金属イオン蒸着加工は出来ますが、何故か大半はトパーズ、一部は大きなガラスにこの加工を施した製品があるものの、ミスティック水晶は滅多に見かけません。
今回、初めて入手しました。
多彩な色合いの発色は、恐らく、蒸着された金属の層の厚みがファセット面により異なるために、光の屈折が変化するため起こるためと考えられます。