新着宝石展示室 (New Gemstone Gallery)

October 2014 :  スピネル (Spinel)



Spinels from Tanzania, Burma、Srilanka and Pamir Mtns.  1.00 - 1.64ct

タンザニアのスピネル (Tanzanian Spinel)

1.64ct 8.2x6.0mm 1.44ct 7.4x5.5mm 1.02ct 7.6x4.8mm  6.77ct                12.07ct
52kgの結晶からカットされたスピネル
Mahenge, Tanzania
 1950年代末頃から、多彩な宝石が次々発見され続けているタンザニアは、現在では世界有数の宝石産地となっています。
 スピネルは世界的に産地が限られ、産出量も極めて少ない宝石ですが、近年タンザニアからは魅力的なピンクやラズベリー、パパラチヤ・サファイア色のスピネルがかなりの量、安定して出荷されています。
 ラズベリー色のスピネルはかつてはスリランカの特産でしたが、現在はむしろタンザニアが主産地となっています。
 これらの色合いのスピネルは、古くからの産地であるウンバ川の漂砂鉱床と共に、中南部のマヘンゲにて1990年代末に発見された崩落鉱床と漂砂鉱床とが主産地となっています。
 とりわけ、マヘンゲでは今世紀に入ってからは重機による生産性の高い採掘が進み、この2〜3年、最も人気の高いパパラチア・サファイアのような色合いのスピネルが続々と登場しています。
 天然の宝石ですから品質は様々ですが、内包物を含んで、やや透明度に欠けるようなルースもシルキー・ピンクと称して市場に出ています。 
 もちろん美しさに比例して値段もピンからキリまでと、選り取り見取りですが、ともあれ、スピネルという宝石の魅力が、ようやく一般に認められるようになったことは喜ばしいことです。

パミール山脈のスピネル (Pamir Mtn. Spinel )
 123.14ct (Cut from 532ct of rough piece)
Evan Caplan Collection
1.26ct 8.5x5.8mm 1.00ct 7.15x5.65mm パミール産結晶 8mm
Kukh-i-Lal,  Pamir Mtns.
 イギリスやロシア等、ヨーロッパ王室の王冠等に使われて長らくルビーと考えられていた赤い宝石が、実はスピネルであったという逸話が少なからずあります。 
 これらのスピネルの産地はビルマやスリランカと共にパミール山脈でした。
  しかし、パミール山脈の何処で採れるのか? 未だに正確な位置は不明です。
Min-Dat で調べるとクヒラル(Kukh-i-Lal)等、数ヶ所の地名が出てきます。
 いずれも Viloyati Mukhtori, Gorno-Badakhshan、Pamir Mtns. とありますが、グーグルの地図でいくら探しもパミール高地は広大な空白地帯です。
 何しろ周囲には7500m級の山々が聳え立つ無人の一帯ですから、地名があるだけでも驚きです。
どうやら タジキスタン東南部の中国につながるワハン回廊の北、100km程にある広大なバダフシャン国立公園の中にスピネル、ルビー、斜ヒューム石を産するペグマタイト鉱脈が存在するようです。
 無人の道もない高山地帯とあれば、採掘が可能なのは夏のほんのわずかな期間のみ、人手による細々とした採掘が紀元前から続いてきたのでしょう。
 それでも500カラットを超える宝石質の巨大な結晶が採れるということは余程豊穣な鉱脈があるに違いありませんが、ようやく探し当てた結晶の写真を見ると、一次鉱床から掘り出されたものです。
 したがって得られる結晶の数は微々たるものとなります。 そんな訳で、パミール産のスピネルを市場で見かける機会はまずありません。
 20年余り捜し求め続けてようやく2個のルースに出会いました。


ビルマのスピネル (Burma Spinel)
Man Sin Mine,
Chaung Gyi Valley、Mogok
Neon Pink spinel 7 〜 8ct
Man Sin Mine, Mogok
Neon pink spinel crystals
Mogok, Burma
1.17ct 6.3x5.8mm

 タンザニアのマヘンゲ産のホット・ピンク、ネオン・ピンクと人気のあるスピネルは色は美しいのですが、一般に内包物を含み透明度がやや低く、霞がかかっているようなルースが大半です。
 一方、ビルマのモゴクの北数kmのChaung Gyi 渓谷のMan Sin,Pyan Gyi, Dattaw, Pain Pyit, Ta Yan Shan 鉱山でごく最近採掘され始めたのは、写真のように素晴らしい透明度と色合いの、空前のスピネルです。
 ルビー、サファイア、翡翠、ペリドットと、主要な宝石では圧倒的な高品質を誇るモゴクですが、スピネルも同様に至高の品質と、あらためてモゴクという宝石産地の底知れぬ豊穣さに感嘆するのみです。 
 ルビーやサファイアの影で存在感の薄かったスピネルですが、こんなルースが出てきたら人気が沸騰するのも当然と言えましょう。
 残念ながら値段も一介のコレクターには到底手が出ないほどの水準に跳ね上がっています。
 したがって写真を眺めて楽しむのみです。
 1.17カラットの見事なプロポーションと高い透明度の赤紫のルースはごく普通のスピネルです。
 この色合いは特に人気があるわけではありませんから、カラット当たり3000円程度と、依然として不当としか思えないバーゲン価格です。
 スピネルはまだまだ掘り出し物が隠れている宝石です。


スリランカのスピネル (Srilanka Spinel)


   濃いラズベリー色は典型的なスリランカのスピネルの色合いです。
カットの水準が低く、プロポーションのバランスが取れていないのは、内包物が多く品質が良くない石を、初心者が練習用にカットしたものかとも思われるルースです。
 したがって値段もカラット当たり2000円にもならない手ごろな水準ですが、魅惑的な色合いを鑑みれば、十分に存在価値のあるルースと言えましょう。
 
1.17ct 6.6x5.6mm

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