新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)
2020 April : サファイア (Sapphires)
インド、タイ、アフガニスタンのサファイア ( Sapphires from India, Thailand and Afghanistan ) |
インドのサファイア (Sapphires from India)
2.96ct 7.7x7.4x5.5mm | 2.32ct 8.5x6.1x4.3mm | 0.99ct 6.3x4.9x2.9mm |
インド産のファセット・カットされたサファイア・ルースを初めて入手しました。
如何にも玄武岩起源を示す濃緑青色の透明度の低いサファイアですが、ともかくファセット・カットされた標本級のルースです。
写真の2.96カラットと0.99カラットのルースは緑青色や青の透明な色ですが、中央の2.32カラットのルースは暗緑青の全く不透明なブラック・サファイアです。
インドのコランダムは南部のマイソール産の透明度が低くあずき色のスター・ルビーを宝石フェア等で見かけますが、さて、写真のルースの詳細な産地情報が何処なのか、あらゆる資料を探しても見つかりません。
インドのコランダム産地については Gems & Gemology 2014 Spring に、南部のタミール・ナードゥ州の Karur-Kangayamu Corundum Belt にルビーとサファイアを産出するとの記事が掲載されました。
この地域は5億年ほど昔、ゴンドワナ大陸が分裂する時代は、現在のアフリカと一体であった場所で、地質学的にはモザンビークのルビー産地のモンテプエスに類似しているとのことです。
ただしこの地のルビーの品質は極めて低く、大きいが不透明なルビーは低品質のカボション級が得られるのみです。
サファイアも写真もないくらいですから宝石質が採れるとは考えられません。
ついでながら、前述の低品質のスタールビーで名高いマイソールはこの地域の100㎞程北にあり、5億年昔はマダガスカルのルビー産地の Ambatomena に隣接していました。
アフガニスタンのサファイア (Afghan Sapphire)
0.85ct 6.21x5.26x2.63mm 0.40ct 0.77ct 最大の結晶 4g Afghanistan Medan Khar, Vardak Province,
west of Kabur, Afghanistannear Village of Sar-e-Sang,
Badakhshan, Afghanistan
今回初めてアフガニスタン産の、小さいながら透明度の高いインディゴライトを思わせるルースを入手しました。
アフガニスタンでは、高品質で名高いルビー産地の Jegdalek でカボション級の不透明なサファイアが採れる以外には、目ぼしい産地がなく、2008年にバダフシャン州、サーレ・サンのラピスラズリ産地の村の近くでサファイアが発見されたました。
写真のように美しい色合いの結晶ですが、大半がインド市場に向けられているという情報を鑑みるとファセット級ではなくビーズに加工されている思われます。
今回入手したサファイアの詳細な情報はありませんが、調べてみると、 Gems& Gemology Summer 2002 の Gem News にカブールの西に隣接する Vardak 州の Medan Khar にて2001年10月に発見され、採掘が始まったサファイアの写真を見つけました。
2kgの結晶が採掘され、最大で2カラットのルースを含む1000カラット程のルースが主にパキスタンのぺシャワールへ運ばれて販売されたとのことです。
グーグル・アースで見ると、カブールの西のヴァルダク地方は殆どが砂漠と山岳地帯でメダン・ハールなる地名も、たいていの鉱物産地同様、地図には記されていません。
が、今回入手したルースと、おそらくは同じ産地と思われるメダン・ハール産のルースの写真の色とアフガニスタンの地質とを鑑みると、このサファイアは典型的な変成岩起源の高品質なサファイアであると思われます。
タイのサファイア(Sapphire from Thailand)
1970年代の最盛期には世界のサファイアの半分を産するほどの大サファイア産地だったタイですが、大規模な採掘により10年余りで鉱床が枯渇し、現在はチャンタブリーの2か所で小規模な採掘が行われているに過ぎません。
しかしながら、近年になって、かつて市場で販売された宝飾品からの還流品を含め、タイ産のアルカリ玄武岩起源とは思えないほど、美しいルースをちらほらと見かけるようになりました。
今回入手したのは、加熱処理と明記してはありますが、スリランカ産の上級品に匹敵する美しいルースです。
市場ではルビーでもサファイアでも非加熱処理のルースの人気が圧倒的に高いのですが、資産価値が云々されるような大粒の宝飾品クラスならともかく、普通にコレクションとして持つのであれば、まずは美しいルースであることが重要です。
何といってもタイ産の美しいサファイは今となっては稀なる存在なのですから。1.31ct 7.0x5.7x3.3mm