新着宝石展示室(New Gemstone Gallery)

August 01 2011  : マンガン発色の宝石


マンガン発色の稀少宝石( Manganese colored raregems)
桃簾石(チューレ石) 薔薇輝石   菱マンガン鉱
    (Thulite) (Rhodonite)(Rhodochrosites)
 

 桃簾石とはピンクの黝簾石〈ゾイサイト:Ca2Al3OH(SiO4)3〉です。
この色は三価のマンガンイオンによる発色です。
 美しい色合いの石はチューライトとしてアクセサリーに用いられます。
 古代ローマ人がアイスランドやシェトランド諸島等、北方の島をチューレと呼んでいました。 スカンジナビアの伝説の王国もチューレとよばれていました。
 ノルウェーのオスロの西80kmのテレマーク地方で発見された桃色の変種がチューレ石と命名されたのは、こうした古来の名に因るものです。
 主にヨーロッパ北部と北アメリカ等に産しますが、日本でも静岡県から研磨されるほどの標本が採れます。
 写真の石は透明な石英中に包有物として含まれて美しい光沢を持つために一般的なカボションではなくファセット・カットされています。
桃簾石(Thulite) 2.41ct 11.8x6.9mm Norway


 宝石質の薔薇輝石を産するのは実質的にブラジル、ミナス・ジェライス、コンセリェイロ・ラファイエテ近郊のモロ・ダ・ミーナ鉱山のみです。
 既に閉山となったマンガン鉱山ですが、世界でも稀な薔薇輝石の標本採集のために再開され、近年、美しい結晶標本が続々と市場に姿を見せ始めました。
 5cm程の結晶でも透明な結晶面を見せる場合は数十万円と、卒倒しそうな値が付けられる、最も人気のある結晶標本です。
 一方、標本としては価値の無い、透明な結晶片からカットされたものが、稀ではありますが、しかし昔と比べれば頻繁に、1カラットを越える大きなルースが比較的に手頃な値段で出回るようになりました。
 ただしかなりの包有物が含まれるのが大半です。したがって、例え小さなものでも、ほぼ無傷のこのルースは大変貴重なものです。
Rhodonite 0.68ct 7.85c4.10mm
Morro da Mina, Conselleiro Lafaiete,
Minas Gerais, Brazil


    この数年来、中国の菱マンガン鉱の結晶とルースがちらほらと市場に姿を見せ始めました。
 "中国の皇帝”と命名された結晶は2011年のデンバー・ショーに同じく"中国の王妃”と命名された39x33cmの結晶と共に出品されたものです。
 コロラドのスイート・ホーム鉱山産とは結晶形も異なり、不透明な結晶ですがしかし見事な標本です。
 結晶の殆どが不透明なため稀に1カラット程度の小さなルースを見かけます。
0.28ct 5.0x3.1mm  
菱マンガン鉱結晶 "中国の皇帝” 60x40cm 
中国広西壮族自治区梧州市武東鉱山
Rhodochrosite "The Emperor of China" Wudong Mine Wuzhou, China
 


 南アフリカやアメリカ、コロラド州のスイート・ホーム鉱山の菱マンガン鉱が途絶えて以来、ペルーがほぼ唯一、この鉱物の宝石質の結晶の供給地となっています。
 ただし、カット可能な結晶はごく少なく、しかも小さなものが多く、ペルー産のルースはこの30年来一度見かけて入手したのみです。
 したがって、たとえこのようなカボション級でもなかなか貴重な品と言えましょう。
菱マンガン鉱 2.85ct Ø8.1x4.2mm
Rhodochrosite
 Peru


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