新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


August 2021 : モンタナ・サファイア (Montana Sapphire)


 
0.225ct ( Ø3.5 x 2.25mm) - 0.45ct ( Ø4.4x2.9mm) 0.115ct ( Ø2.75x1.7mm) - 0.34ct ( Ø4.0x2.6mm)
Rock Creek, Montana, U.S.A.


 

 
0.125ct ( Ø2.9x1.65mm) - 0.180ct (Ø3.0x2.2mm)  モンタナサファイア原石(上:加熱前 下:加熱後) 
Rock Creek, Montana, U.S.A.
 
 アメリカ北西部のモンタナ州でサファイアが発見されたのは18世紀半ばから末にかけての事、砂金採集時に1㎝未満の平板状の小さく、透明な結晶が認められていました。
 サファイアに限りませんが、宝石の原石の多くは写真のように、ただの石ころにしか見えません。
 したがって、ティファニー宝石店のクンツ博士によって1890年代になって認められるまでは、これが宝石質のサファイアであるとは誰も気が付きませんでした。
 モンタナ・サファイアが宝石としてカットされたのは、唯一、ヨーゴ峡谷の初生鉱床から採掘される、セイロンのサファイアのような加熱処理無しの天然のままでも透明度の高い濃青色の結晶だけでした。 
 ロック峡谷やエルドラド砂州、スポーケン砂州等、他の漂砂鉱床から採れる透明度の高い平板状の結晶の大半は、時計の軸受け等の精密工業用の材料として採掘され、第一次のサファイア・ラッシュが起きました。
 しかしながら、20世紀初頭にフランスのヴェルヌヌイユによる火炎溶融法の合成技術の発明で高品質のルビーとサファイアが大量生産されたため、競争力を失ったモンタナ・サファイアの採掘は中断しました。
 しかし1970年代になり、不透明な灰色のサファイア原石が加熱処理により、透明度の高い、美しい色合いに変貌することが明らかになり、再び注目されたモンタナでの第二次サファイア・ラッシュが起きました。
 小さいながら透明度の高い、様々な色合いのサファイアは世界的な人気を呼び、1980年代央には、年間100万カラットを超えるサファイアが採掘されたほどでした。
 その後採掘量の減少や、タンザニアやマダガスカル等、アフリカ各地でサファイアが発見され、安価で市場に溢れるようになり、21世紀初頭には、モンタナのサファイア採掘は再び停止されていました。
 しかしながら、近年、細々ではありますが、採掘が再開されたようです。
 今回、30年ぶりに入手したのは、ロック峡谷で採掘されたものです。
新しい産地では、年間数十㎏のサファイア結晶が採集されているとのこと。
 最盛期と比べれば微々たる量にしか過ぎませんが、同時に得られる砂金が、近年の金価格により高収益が挙げられるので、サファイア採掘が続けられるとのことです。
 最大でも0.5カラット未満と、小さいながら、多彩な色合いの透明度の高いモンタナのサファイを再び見ることができるようになり、まことに嬉しい限りです。


TOP  New Gemstone Gallery  Gemhall