新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )


August 2021 : コレクターストーン (Collector Stones)


 
緑簾石(Epidote)、菱マンガン鉱 (Rhodochrosite)と緑のジルコン(Green Zircon)

パキスタンの緑簾石 ( Epidote from Pakistan )
       
 2.20ct 22.6x3.9x2.4mm  
  エピドートは火成岩や熱水鉱脈、接触交代鉱床等に産しますが、暗緑色で不透明な結晶が多く、ルースとしてカットされることは稀な鉱物です。 それでも過去30年の間にブラジル、マダガスカル、パキスタン、スリランカ、福島県塙町矢塚産のルースを大小合計20個ほど入手して来ました。
 今回パキスタン産の金色のエピドートに出会いました。
 写真のように透明度が高く、明るい金色なので、当初は殆んど同じ化学組成(僅かに鉄成分比が低いだけ)と結晶系と物理特性を示す斜灰簾石 (Clinozoisite) ではないかと思われました。
 斜灰簾石は緑簾石と同様の成因で出来る鉱物ですが、かなり大きな鉱物図鑑にも掲載されない稀な鉱物です。
 しかしながら、稀に発見される結晶は緑簾石と比較して透明度が高く、明るい金色、褐色等の美しいものが多く、過去にブラジル、マダガスカル、パキスタン、アフガニスタン、パキスタン産の美しいルースに出会っていました。 
 しかし、今回新たに入手したルースを明るい照明下で回転させると、一瞬緑の煌めきが見えることに気づきました。 
 緑と褐色の顕著な二色性を示すのは緑簾石の特徴ですから、新たに入手したこのルースはやはりエピドートとして分類することにしました。
 前述のように、エピドートから100年近く遅れて発見されたクリーノゾイサイトが、殆んど同じ鉱物なのに何故別種として分類されたのか分かりませんから、どちらであろうと問題ではありませんが、褐色や暗緑色の不透明なルースしか得られないエピドートのコレクションに素晴らしく明るく美しい金色のルースが加わるのも悪くはないという気分です。


マダガスカルのジルコン ( Malagasy Zircon )
   
0.985ct 6.9x3.6x3.1mm R.I : 1.935
  多彩な色を持つジルコンの中で、透明度の低い、くすんだ緑色の種類があります。
このような特徴を示すのは、不純物として含まれるウランやトリウム等の放射性元素により気の遠くなるような長年の照射で結晶構造の一部が壊れたジルコンです。
 このようなジルコンはメタミクト・ジルコン、あるいはロー・ジルコン( Low Zircon ) と呼ばれます。
結晶構造の一部が壊れたため、比重や屈折率とモース硬度が低くなるためです。
 そして一様に、くすんだ緑色の、光の乱反射のために潤んだような外観を示します。
ところが、稀に鮮明な緑色のジルコンが存在します。
 今回入手したルースも、透明度が高い緑色ですが、やや黄色の部分もある多色のジルコンです。
屈折率 (Refractive Index) を測って見ると 1.935 と、普通のハイ・ジルコンの値を示します。
 恐らく、これはメタミクト化されたものではなく、緑色の発色は別の原因で起こっている種類のジルコンなのだろうと推測されます。


北海道・稲倉石鉱山の菱マンガン鉱 (Rhodochrosite from In akuraishi Mifne, Hokkaido
   
 0.67ct 6.2x4.4x3.4mm  0.56ct 6.1x4.2x3.1mm
  稲倉石鉱山産菱マンガン鉱結晶の、比較的透明度の高い部分をカットしたルースです。
 宝石からは程遠い標本級に過ぎませんが、ともあれ、かつて日本のマンガン鉱山からも世界的に水準の高い結晶を産した事実を偲ばせるものです。 
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