新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


July 2020  :  タンザニアの宝石 ( Gemstones from Tanzania)


 
正長石 (Orthoclase) 5.79ct  ジルコン(Zircon) 1.145ct  ダンベリー石(Danburite) 3.35ct


正長石 ( Orthoclase )
         タンザニア産の透明な正長石を入手するのはこれが初めてです。
比重と屈折率とを測ってみるとそれぞれ 2.55 と 1.524 の値が得られたので
紛れもなく正長石と判断しました。
 ただ、写真のように微かにシーンが見られ、光の当たり具合によってはファセット面
が淡い虹色を見せるため、これはムーンストーン効果を示す高温型のサニディン
ではないかと考えられます。 
5.79ct 12.4x9.8x7.1mm   


グリーン・ジルコン (Green Zircon)
       ジルコンには様々な色合いがありますが、緑色は稀で、それも大半は内部に無数の亀裂や包有物を含んで
透明度の低い典型的なロー・ジルコン型の暗緑色のものです。
 これまでに入手した3個の緑色のジルコンは全てスリランカ産でした。
今回初めてタンザニア産の,やや内包物が目立ちますが、透明度の高い鮮明な緑色のルースに出会いました。
 ジルコンの発色は、内包するウランやトリウム等の放射性元素が崩壊するときのアルファ線などに数億年も
曝されて、結晶が壊れ、結晶を構成する元素からイオンが分離し、最終的に結晶内の格子欠陥内の電子井戸
に落ち込んだ電子の様々なエネルギー順位に応じて特定の光の周波数の吸収によると、説明されています。
 こうして結晶構造の一部が破壊されたジルコンは、その程度により密度と屈折率が変化し、 Low, Medium, High
Zircon と呼ばれ、密度が4.00 - 4.70、屈折率が 1.810 - 2.034 と変化します。 
 写真の標本は屈折率が 1.877 と中間の値です。
 タンザニアからは近年、赤紫の魅力的な色合いのジルコン産するようになりましたが、新たに鮮明な緑のジルコン
出てきたというわけです。 
1.145ct 6.2x5.3x3.1mm  R.I :1.877  


ダンベリー石 (Danburite)
         世界有数の宝石産地のタンザニアからは以前からダンベリー石が見られました。
 ただし、他のマダガスカル、ロシア、メキシコ産と比べると透明度や大きさ等が見劣りする
 標本級でした。
  ところが2006年にモロゴロのペグマタイト鉱床から宝飾品級の透明度が高く淡い金色の
 ダンベリー石が報告されました。
 2008年のツーソンショーに1トンもの結晶が出品され、宝石質結晶は5㎏に過ぎませんでしたが
 最大で22.4カラットのルースが得られたとのことです。
  今回入手したルースの正確な産地は不明ですが、透明度の高い淡い金色は、おそらく新しく
 発見されたモロゴロ産と考えられます。
  このような形状にカットされたルースは写真に撮ると光の反射による影が本体の中心部を
 真っ黒に覆ってしまって写ります。 したがって微妙にレンズの左右の振り角度や高さ、照明
 黒い影を消すための紙や金属板による反射効果等を試しながら、このルースでは20枚余りの 
 写真から選び出したものがこの2枚の写真です。 色合いが随分異なりますが、昼と夜の光、
 照明の色によって驚くほど色が変わります。
3.35ct 12.4x6.0x5.4mm    



TOP Gemhall