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August 2022 : ブラジルの宝石 (Gemstones from Brazil)


         
燐灰石 (Apatite)  1.65ct 10.6x6.0x3.6mm   薔薇石英 (Rose Quartz)   7.25ct 15.32x11.68x5.56x6.36mm
赤い燐灰石 (Red Apatite)

  ブラジル産のレッド・アパタイトと称するルースを見かけて入手しました。
赤というより、むしろ朱色ですが、こんな色合いのアパタイトは見たことがありません。
 外見からは何なのか判断は出来ませんが、屈折率を測ってみると、 1.64 と、確かにアパタイトの価を示します。
 朱色は初めてですが、ピンクのアパタイトはパキスタン、アフガニスタンのペグマタイト起源、さらにコロンビアのエメラルド鉱山等から極めて稀ではありますが産出することがあります。
 ピンクの発色は、燐灰石 【Ca
5(PO4)3(F,OH,Cl)】 を構成する弗素原子の一部が欠落し、その欠落部に捕捉された電子による吸収が原因と1979年に解明されています。
 今回入手した朱色は、弗素の欠落が大量に起きたために、光の吸収が多くなり、ピンクより濃い朱色になったと、あるいは鉄やチタンのようなその他の遷移金属が加わった発色かとも考えられます。
 大量に出回れば Gems & Gemology 誌に分析された論文でも出ることでしょう。
 下のピンクの結晶の写真は、昔入手した結晶と、”Mineralogical Record” 誌に掲載されたコレクターの稀少な標本です。 
ピンクの燐灰石結晶
       
 31x25mm 11.5cm  2cm   4.5㎝
Nagar, Pakistan   Afghanistan Marina Mine, Boyaca Colombia

薔薇石英 (Rose Quartz)

 冒頭の薔薇石英は、ブラジルには決して珍しいものではありませんが、一般に透明度が低く淡いピンクの色合いが大半な標本の中で、珍しく色が濃く、透明度が高いので、入手してみたものです。
 合成の可能性もありますが、水晶の場合、天然の水晶を材料に、再結晶させるため、天然と合成との識別は困難です。 
 合成でもこれ程色の濃い例はありませんから、恐らくブラジル産の天然の薔薇石英であろうと考えています。


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