新着宝石展示室
August 2023 : ガーネット (Garnets)
近年宝石の産出地としてアフリカの台頭は目覚ましく、多種多様な宝石がアフリカ各地からもたらされます。
アフリカ産のガーネットの産地名が明らかにされることは滅多にありません。
大半はタイとスリランカでカットされ、単にアフリカ産として流通するのですが、今回は全て産出国が明記されたアフリカ各地産のガーネットを紹介します ;
ナミビアのスペッサータイン(Namibian Spessartine)
ナミビア最北西部のアンゴラ国境地帯のクネーネ川 流域で明るいオレンジ色のガーネットが発見されたのは18世紀末のことでした。
が、長年忘れ去れられていて、漸く1990年代央に再発見されました。
このスペッサータインは輝かしい金色ーオレンジ色で、市場ではマンダリンとして、最上級品ではカラット500ドルという、ガーネットとしては異例の高値で取引されるほどの人気を呼びました。
マンダリンの産出はその後激減し、さらにその後ナミビア各地で10か所を超えるスペッサータインの産地が開発され、現在見かけるのは、クネーネ以外の産地の 濃い赤みを帯びた褐色ものが大半になっています。
今回入手したものも赤みを帯びた種類で、正体を確かめるために屈折率を測定したところ、1.804 と紛れもなくスペッサータインでした。2.03ct 8.0x6.8x3.0mm R.I : 1.804
マダガスカルのロードライト(Malagasy Rhodolite)
いろいろルースを購入したオマケでいただいた
ロードライト・ガーネットです。
調べてみたら、マダガスカル産のロードライトは持ってなかったので嬉しいオマケでした。
これは色合いからしてロードライトですが、屈折率も1.746 と紛れもなくパイロープとアルマンダインの中間の値いを示しました。
拡大すると内部に包有物がみえますが、肉眼では全く気にならない、美しいロードライトです。
2.17ct 8.0x6.8x3.8mm RI:1.746
ナイジェリアのスペッサータイン (Nigerian Spessartine)
ナイジェリア南西部のトルマリン産地として名高い Ilorin に近い Iseyan の恐らくペグマタイト鉱床からでしょう、最大2cmに達する透明度の高いオレンジ色のスペッサータインが1990年代末に報告されました。
最大では20カラットと、ガーネットとしては異例の大きなルースが得られたとのことで、2000年代始めには、ルースが時折市場に姿を見せましたが、近年は全く途絶えていました。
したがって、久しぶりに、如何にもスペッサータインそのもののマンダリン・カラーのルースです。1.38ct 7.5x5.9x4.9mm R.I : 1.805
マリのグロシュラー・アンドラダイト(Grossular Andradite from Mali)
ルースと宝石質結晶 1.85ct 7.9x6.9x4.0mm RI : 1.775 3.47ct 8.2x7.2x6.0mm
この色合いのガーネットは、マリ最西部、モーリタニアとセネガル国境に近い Diakon 付近のカンブリア紀最後期の苦灰岩と石灰岩からなる堆積層に輝緑岩脈が貫入した接触変成作用で緑簾石、葡萄石、蛍石、ヴェスヴ石と共に生成したグロシュラーとアンドラダイト・ガーネットとの固溶体として生成した新種のガーネットです。
結晶は10cm超の大きなものが、実は1914年に既に報告されていました。
しかし、外観が全く不透明な石の塊のような団塊だったため、宝石になるとは考えられず、80年余り放置されていました。
この不透明な団塊の内部に僅かに透明な部分があり、これが宝石としてカットされるとわかり、一躍世界の宝石界の注目を集めたという次第です。
最上の品質のルースはカラット当たり500ドルと、ガーネットしては異例な高値で取引されました。
今回、久しぶりのルースと共に、宝石質の結晶片を入手することが出来ました。
やや内包物が多いのですが、しかし透明度の高き、金色の美しいルースです。