新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


2011 December  : カナダの宝石 (Canadian Gemstones)

カナダ産宝石 (Canadian gemstones) 0.10 − 3.74ct
    カナダ産の宝石は21世紀初頭から生産が始まり、世界屈指のダイアモンドが有名です。
  が、その他の宝石となると、コレクター向きの標本級が稀に市場に姿を見せるのみです。
  今回カナダ産の稀少な宝石をまとめて入手しました。
サファイア(Sapphire)
0.10ct Ø2.9mm 0.32ct 4.3mm サファイアの採掘 母岩中の結晶とルース
Aqpik Zone, Nunavut Beluga Zone, Nunavut Nunavut, Baffin Island, Canada
 カナダの北東、北極圏にあるバフィン島最南端の海岸にあるKimmirutの小村落近郊のNunavutで2002年にサファイアが発見されました。
 数百メートル四方の範囲に宝石質のサファイアを含む岩脈の露頭が散在していて、最大で7.7x2.1cmの大きさの無色ー淡黄ー濃紺の結晶が採集されました。
 大理石に覆われた石灰岩ー珪質岩のレンズ中に斜長石、単斜輝石、金雲母、白雲母、方解石、黒鉛、霞石、柱石と共に産する、典型的な変成起源のサファイアです。
 バフィン島南部はアフガニスタンからヴェトナムに至るインドーアジアと同じ大陸衝突起源の地質なのです。
 しかしバフィン島のサファイアはアジア程に豊穣ではなく、産出量は年間数百カラット程度と微々たる量に過ぎません。
 極めて稀にビルマやスリランカ産の最上級品を偲ばせる1カラットに満たない小さいながら美しいルースが得られます。が、それは例外的な存在。大半は殆ど無色か淡い色むらの多い0.5カラット以下のあまり見映えのしないルースです。

ムーンストーン(Moonstone)
 サファイアの発見後、2004年に同じバフィン島のKimmirutの小村落で
ムーンストーンが発見されました。
 最大では10カラットを越える半透明のカボションがカットされています。
 ほぼ純粋な灰長石に近い成分を持つ斜長石です。 
3.14ct 12.1x8.1mm
Kimmirut, Baffin Island
ペリドット (Peridote)
  橄欖石は玄武岩質の溶岩や火山弾などに含まれていて、世界中で発見されるありふれた鉱物です。ところが宝石質となると意外と少なくアリゾナ州とビルマと中国が主要な産地です。
 カナダ産の宝石質のペリドットの存在はは今回初めて知りました。
 小さいながら色合い、透明度共に美しいものです。
0.84ct 8.0x5.1mm 0.52ct 5.4mm
William's Lake, British Columbia
トルマリン(Tourmaline)
 ユーコン州との州境に近いO'Grandy湖周辺のペグマタイト地帯から宝石質のトルマリンが1994年に発見されました。
 大きい結晶は10cm程に達するとのことですが、カットできる透明な部分は少なく、亀裂や包有物が多い標本級の小さなルースが得られるのみです。
 さて、カナダには氷河が残した湖が無数にあります。グーグルの地図でさえも O'Grady湖が何処にあるのか掲載されていませんが、タングステンという町の北北西110kmにある湖とのことです。
0.55ct 6.1x4.1mm 5cm
O'Grandy Lake, North West Territory
灰重石 (Scheelite)
 19世紀末にゴールド・ラッシュで賑わったカナダ北極圏のユーコン河流域は、100年後の20世紀末に再び活発な鉱物資源開発が再開されました。
 天藍石やラドラム鉄鉱、アウゲライト等の美しい結晶で鉱物愛好家には馴染みの地域です。
 カナダには同名の湖が複数あるのだそうですが、写真の灰重石は、宝石のエメラルドが発見されたロス川流域の北北西185kmにあるエメラルド湖岸の崖を300mほどよじ登ったペグマタイト鉱脈の晶洞中に煙水晶、黄水晶、ショール、燐灰石と共に発見されたもの。
 よくぞ辺境の地の危険な場所に鉱脈を発見して採集したと、感嘆するしかありません。
 このルースは1994年と1996年に採集された結晶をカットしたもの。やや透明度に欠けますが、珍しい産地の貴重な逸品です。
3.21ct 8.2x6.0mm
Emerald Lake, Yukon
菱マンガン鉱(Rhodochrosite)
 一般に菱マンガン鉱は銀や鉛、マンガン鉱山に脈石として発見されますが、稀にペグマタイト鉱脈からも発見されます。
 カナダのモン・サン・チレールは稀な閃長岩ペグマタイトに400種余りの珍しい鉱物を産します。更に世界の他の産地ではただの鉱物標本級の鉱物が、ここでは宝石質の大きな結晶で発見されるという稀有な鉱物産地として知られています。
 モン・サン・チレールでは包有物の多い、小さな菱マンガン鉱の結晶が稀に発見されます。従って1カラットを越えるルースは滅多なことでは得られません。
 この二つのルースは小さく、色合いも地味ですが、比較的透明度が高い貴重な標本です。
6.5mm
0.67ct 6.1x4.0mm 0.31ct 5.0x3.1mm 7mm
Mont Saint Hilaire, Quebec
グロシュラー・ガーネット(Grossularite garnet)
 カナダのケベック州はかつて世界で有数の石綿の産地でしたが、石綿の発癌性が明らかになり、全ての鉱山が閉山となりました。
 中でもとりわけ美しいジェフリー鉱山産のヴェスヴ石やグロシュラー・ガーネットが時々市場にまとまって姿を見せることがあります。どうやら標本目当ての小規模な採掘が細々と行われているようです。
 この1カラットのルースは淡い薔薇色と橙のジェフリー産に特有の色合いです。
僅かに包有物がありますが、そんなことは問題ではありません。
 他の産地なら無数にあるグロシュラー・ガーネットですが、ジェフリー産は過去30年でこれが3個目の稀なる出会いです。
1.00ct 7.1x5.1mm
Jeffrey Mine, Asbestos, Quebec
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