新着宝石展示室(New Gemstone Gallery)

2020    February     :   合成オパール(Synthetic Opals)


 
ロシアの合成オパール試作品とキョーセラの合成オパール 

ロシアの合成オパール(Russian Synthetic Opal)
   
 6.60ct 14.4x10.6x8.1mm  6.38ct 22.4x11.6x7.7mm
 合成宝石では世界をリードするロシアですが、唯一オパールだけは量産が出来ませんでした。
乾燥でひび割れるなど、耐久性の問題を解決できなかったこと、更に他の合成宝石は産業用や軍事用の使途がありますが、流石に宝石用にしか使い道のない合成オパールに予算や人材を投入することは出来なかったと考えられます。
 1990年代初頭に試作品がツーソン・ショーに出品されたもの、さらにカボションカットされた写真を Gems & Gemology 誌で見かけましたが、実物はついぞお目にかかる機会がありませんでした。
 近年タイの合弁会社を通して、様々なロシア製合成宝石の、おそらくは試作品の結晶の在庫などがカットされて市場に姿を見せるようになりました。
 写真の合成オパール片もその一例です。 
 ようやくロシア製の合成オパールの実物を入手できました。


キョーセラの合成オパール(Kyocera Synthetic Opal)
   
1.83ct
10.5x8.3x3.7mm 
 1.30ct
8.9x7.2x3.7nn
1.73ct
9.5x7.7x4.9mm 
 0.57ct
9.4x5.4x2.5mm

 世界で初めて合成オパールの商品化に成功したのはフランスのピエール・ギルソンで1972年のことでした。 
 彼はもともとフランスの高級陶磁器製造会社の経営者でしたが、合成宝石に情熱を傾け、エメラルド、オパール、ラピス・ラズリ、トルコ石と、様々な合成宝石を市場に送り出してきました。
 合成オパールもブラック・オパール、ホワイト・オパール、ウォーター・オパールと多彩な種類を作り出しましたが、1990年頃に引退し、その技術は大阪にある中住クリスタルに受け継がれて生産が行なわれていました。
 合成宝石が全く人気のない日本では販売されずに、その大半がアメリカ市場に輸出されていたと思われます。
 10年ほど昔まで、その在庫がアメリカの商社で扱われていました。
現在、世界で唯一多彩な種類のオパールを生産販売しているのはキョーセラです。
 もともと京都セラミックとしてギルソン同様、高級セラミックの技術を基に、電子部品等に進出して世界的な地位を築いた企業ですが、宝石の分野でもオパール以外にルビー・サファイア、エメラルド、アレクサンドライト等々、多彩な宝石を現在も製造、販売しています。
 オパールの合成を開始したのは1983年ですが、市場では人気の高いブラック・オパールを主に見かけます。
 今回入手したのも天然のブラック・オパールに遜色のない見事なファイアーを見せる逸品です。
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