新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


January 2022 : カボション (Cabochons)


 
装飾用に研磨された世界各地の宝石  2.63ct - 105ct
インドネシアのドラゴン・アゲート (Dragon Agate from Indonesia)
     最近ちらほらと散見するのが ドラゴンアゲートと呼ばれる瑪瑙の装飾用に加工したもの。
 瑪瑙や玉髄を研磨した後で、おそらく加熱後に急冷して人為的にひび割れを起こし、その空隙に着色剤を浸透させたものと考えられます。
 ひび割れがドラゴンの鱗を連想させることからドラゴンアゲートと命名したものと思われます。
 結構な大きさですが、数百円と格安で、なかなかきれいなので、すでに入手済みの色や形が異なるものに追加するべく入手しました。 
 21g Ø44.4mm x6.5mm  

ブラジルの方曹達石 (Sodalite from Bahía, Brazil)
    方曹達石は世界各地で産出しますが、ブラジルのバイア州のイタジュー・ダ・コローニアが、装飾用、建築材用途の曹達石の産地として名高い産地です。
 写真の鮮明な色合いのカボションも、単にブラジル産としか分かりませんが、まずバイア州の産地からと考えられます。
 大量に採れますからごく安価ですが、実はカボションにカットしたものを見たのが初めて、滅多にお目にかからないものです。
 なかなかきれいです。
 23.35ct 36.4x17.4x4.7mm  
Itaju da Colonia, Bahía, Brazil   

ブラジルの鱗雲母・レピドライト (Brazildian Lepidolite)
        
  レピドライト(鱗雲母)はリチウム・ペグマタイトに多く見かける雲母の一種です。
 ギリシア語で鱗を意味する ”Lepidion” に因んで命名されました。
 どの雲母も鱗のように薄片に劈開するのですが、リチウムを主成分とするレピドライトがその美しさと、比較的に産出量が多いことから注目を浴びての命名でしょう。
 とりわけ、ブラジルのミナスゼライス州、アラスアイ州のピアウイ川沿いのペグマタイト地帯からは、かつて数十センチメートルにも達する大きく美しい結晶が採れ、装飾品として加工されたとのことです。
 右の写真の結晶はクルゼイロ鉱山産の宝石質の結晶です。 この色合いはしかし、背後から強い光を当てて透明感を強調したものとのことで、例えばトルマリンのようにファセットカット出来るほどの水準ではありません。 
 ラルースの大宝石百科辞典によると、レピドライトはカボションにカットされるとあり、長年探していたのですが、ようやく遭遇したのが23カラットのカボションです。
 クルゼイロ鉱山の結晶とは格が違いますが、しかし装飾用としては何とか様になる水準です。
 ただし、この色や艶が天然のものなのか、あるいは何らかの処理がされているものなのかは不明です。
 モース硬度が3以下の柔らかく傷つきやすい鉱物ですから、恐らくは耐久性を増すために樹脂等による加工がされたものと考えています。
 紫-ピンクの発色はマンガンイオンに因るものです。
 23.02ct 26.5x18.3x5.5mm  稀な宝石質のレピドライト結晶 Cruzeiro Mine  
 Minas Gerais, Brazil  

翡翠と類似石 (Jade, Serpentine/Williamsite, Chrysoprase)
       
  サーペンタイン
(Serpentine : Williamsite)
 翡翠(Jade) クリソプレース 
(Chrysoprase) 
サーペンタイン  10.38ct 15.4x12.0x7.2㎜ 翡翠  14.99ct 15.3x11.6x8.6mm  クリソプレース 8.1ct
14.1x9.3x4.4㎜
 R.I. 1.517    1.663 1.548  South America Burma  Australia 
  これら緑色のカボションは、並べて見ただけでは殆んど正体が分かりかねます。
しかし、レーザーによる反射-屈折率換算計で屈折率を測ってみると、見当がつきます。
 濃緑の南アフリカ産のサーペンタイン(蛇紋岩)は例外的に透明度が高く美しいものです。
普通はただの石ころに過ぎない蛇紋岩ですが、稀にこれ程の美しいものがあったのかと驚かされます。
 Richard Liddicoat の ”Handbook of Gem Identification” に亜透明の濃緑の蛇紋石、Williamsite の写真があったので、半世紀前の久米武夫の新宝石辞典を調べると、その旨説明があったのには感服。
 次はビルマ産の翡翠ですが、さて、これが樹脂充填等、何らかの加工が施されているのか否か定かではありません。何しろカラット数百円という値段ですから真正な翡翠とは思えませんが、しかし美しい翡翠ではあります。
 翡翠やブラックオパールは、一見同じように見えるものが、百~千倍もの値差があるという怪しげな宝石なのでずっと敬遠しているようなわけですが、数千円なら何でもよかろうと入手したような次第です。
 オーストラリアのクリソプレースも、一見すると翡翠と見分けが付かないくらい美しいものです。
天然のクリソプレースはニッケル発色による透明度の高い美しいものがありますが、その他、人為的に着色や、樹脂充填加工したものも多数あるとのことです。
 これは30年も昔に何処かのショーにてカラット当たり1ドルほどで入手したものです。

ナミビアの紫石 (Purpurite from Namibia)
        紫石 (Purpurite : Mn3+, Fe3+【PO4】) の名はラテン語の”Purpureus : 緋、深紅) に因む命名ですが、恐らくは古代フェニキア人がアクキガイの分泌物を染料とした,皇帝や教皇等、限られた階級にだけ許された衣装の色合いである濃い紫に因む色のことでしょう。
 紫石は稀産の鉱物ですが、ナミビア、エロンゴ山の燐酸ペグマタイトからの濃い色合いの岩塊がカボションに研磨されるとあります。
 
 2.63ct 11.0x10.0x2.0㎜ Purpurite  Sandamab Pegmatite, Erongo, Namibia  


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