新着宝石展示室 (New Gemstone Gallery)


タンザナイト (Tanzanite)


 
15.37ct
19.59x12.69x9.93mm 
7.38ct
14.60x9.61x5.57mm 
4.79ct
12.50x9.30x6.95mm 
 YAGのイミテーション
11.78ct  Ø13.55x6.95mm 
 
 1960年代初頭にタンザニアのメレラニ丘陵で発見されたゾイサイトの変種である、青ー青紫の色合いの宝石に注目したティファニー宝石店が、これを産地に因むタンザナイトと命名し、積極的なプロモーションを展開したことで、20世紀の新しい宝石として、タンザナイトが一躍脚光を浴びました。
 ゾイサイト (灰簾石)にはごく稀に純粋な成分の無色なものがありますが、大半は鉄やマンガン等の不純物により緑色、淡ピンク、淡褐色のものがありましたが、至って地味な色合いで、宝石として扱われることはありませんでした。
 最上級のサファイアに匹敵する美しいタンザナイトは、メレラニ丘陵の地下深くに豊穣な鉱脈があり、年間100万カラットもの安定した供給があるため、宝石市場にしっかりと定着しました。
 上質のサファイアはビルマ産はほぼ枯渇し、スリランカも産出が少なくなり、今日ではマダガスカルが主流となっていますが、全体の供給は激減し、価格が高騰しています。
 一方タンザナイトは安定した供給のおかげで、最上品でもカラット当たり10万円を超えることはありません。
 しかしながら、現在メレラニ丘陵での採掘は地下1200mに達しており、さらに深く掘り下げる作業には大変な危険と困難とが伴います。
 近い将来に産出量が大幅に減って行く可能性は大いにあります。

 タンザナイトの成因は、およそ9億年昔の汎アフリカ造山運動の変成作用にて、最初にツァヴォライト・ガーネットが生成され、その後の5億年昔に起こったモザンビーク造山運動による激しい地殻変動が繰り返されました。
 このため、メレラニ丘陵の地下の地層はカーテンの襞が垂直に幾重にも折り重なるような褶曲で捻じ曲げられ、その亀裂の空隙に地下深くから高温高圧の熱水が貫入しました。
 初めに出来たツァヴォライト・ガーネットが熱水で溶融され、熱水の温度が下がるにつれて溶けていたツァヴォライト・ガーネットの成分からタンザナイトが結晶したと、後の研究で判明しています。
 ツァヴォライト・ガーネットのエメラルド色は、微量のヴァナジウムによる発色ですが、それを引き継いだタンザナイトでは青ー紫の発色をもたらしています。
 こうした、特異な成因のため、青ー青紫色のタンザナイトはメレラニ丘陵が世界で唯一の産地となっています。
したがって、ここでの産出がなくなれば、二度と手に入らなくなります。

     
15.37ct 19.59x12.69x9.93㎜ 
  タンザナイトを始めて見たのは、1970年代初め、ティファニーのプロモーションが始まって間もないころ、出張した香港の宝石店で見かけたのが最初でした。
 当時は宝石に興味をもってはいましたが、コレクションを始める前のこと、初めて見る、美しいが高価なタンザナイトという宝石が強く印象に残りました。
 その後ツーソン宝石ショーに出かけて2カラット程度のルースを入手しましたが、コレクションであれば、そこそこの大きさと品質のルースがあれば十分と、30年余り、タンザナイトのルースからは遠ざかっていました。
しかし、この数年、サファイアの枯渇に従い、タンザナイトに注目が集まり、価格の高騰が始まったのを契機に、今のうちにもう少し大きく、上質のルースをと、立て続けに手に入れたのが、今回紹介する3個のルースです。
 15.37カラットのペア・シェープのルースは色合い、カットの質共に、最上級のタンザナイトです。
この大きさと色合いなら、カラット当たり10万円はしても不思議ではありませんが、実はその十分の一と破格の値段でした。
 その訳は、写真では分かりにくいのですが、テーブル面の下に1㎝程の長さの亀裂が水平に伸びているためです。
外見からは分かりにくく、宝飾品に仕立ててもまず問題はありませんが、しかしルースとしては大幅に価値が下がり、破格の水準になってしまったというわけです。
 ルースのコレクションとしては、これで十分です。
 
     
7.38ct 14.00x9.61x5.57㎜ 

  これは還流品ではなく、全くの新品のリングにセットされたタンザナイトです。
内包物も傷も全くない、濃い色合いの最上級のタンザナイトですが、ルースのままでは売りにくいので、そこそこのダイアモンド枠付きのリングに仕上げてネット市場専門の宝石商から売りに出されたものです。
 店頭で100万円の値付けられても不思議ではない品物ですが、もちろんそんな値段ではなく、ルースだけとしてもごく妥当な水準で入手したものです。
     
4.79ct 12.8x9.3x6.8㎜ 

  このルースはやや淡い紫を帯びた色合いのルースです。
タンザナイトは色が濃い方が上質とされているのですが、しかしこのルースはカットの水準も高く、透明度の高い美しいもので、5カラット弱の大きさもコレクションにはふさわしいものです。 
 やや淡い色合いのため、結晶のC軸方向で赤くなるタンザナイトの多色性が反映される、魅力的な色合いのルースです。
こんなルースでも
市場ではカラット当たり5~6万円というのが相場ですが、何故かその三分の一と、格安で投げ売りされていました。

YAG (イットリウム アルミニウム ガーネット)
     
11.78ct Ø13.55x6.95mm 

   タンザナイトが世に出て以来、その人気に乗じてガラス、合成コランダム、合成スピネル、合成フォルステライト等のイミテーションが出現し、Gems & Gemology 誌に紹介されていました。
 それらがどんなものなのか、写真だけでは物足りないので、実物を入手したいと、この20年余り探していましたが、最近ようやくネット市場で YAG を見かけて入手できました。
 恐らくはユーロピウムとイッテルビウムとを添加したYAG ですが、濃い青に、角度によっては紫の煌めきが現れる、最上級のタンザナイトを偲ばせる見事な出来栄えのイミテーションです。
 天然のタンザナイトであれば100万円もするようなルースですが、産業用に大量に合成されているYAGですから、こうして手の込んだカットが施されている10カラットを超えるルースが1000円余りと、妥当な水準です。
 しかし、宝飾品にセットして、天然の最上級品として売られたら、屈折率でも測らない限り、外見からは全く区別がつきません。

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