新着宝石展示室
(New Gemstone
Gallery)
July 2010 : ブラジルのトルマリン(
Brazilian Tourmalines )
ブラジルのトルマリン(Brazilian tourmalines)0.51 - 12.70ct |
12.7 カラットのルベライトを入手したついでに、25年ほど昔にサン・パウロのレプブリカ広場の日曜市にて入手した未公開のトルマリンの数々の一部をまとめて展示する次第です。
1980年代の南米ではブラジルを初めペルー、ボリビア,アルゼンチンではいずれも年間 3000 % を越える空前の
ハイパーインフレの只中にありました。
ブラジルなのに値段は殆どドル表示です。 ドルで支払うとその時の換算レートで計算し (まさに時価!)輪ゴムで束ねた現地通過の札束でお釣りをくれるのですが、誰も数えたりしません。
数えているうちに価値が目減りしてしまうのだ、とは冗談ですが、しかし朝と夕とでは確実に為替レートが下がって行く程の凄まじさでした。
したがってトルマリンのルースも並のものならカラット当たり 5 〜 10 ドルと、ドルで支払う場合はガラスの贋物ではないかと疑うほど格安でした。
もっとも大学教授の月給が 100ドル、映画の入場料が 80 円、コーヒー1杯が 20 円という物価水準ではカラット当たり 1000円 はやはり高価な買い物に違いありません。
ルベライト・ピンク・トルマリン ( Rubellite/Pink tourmalines )
12.70ct 15.7x13.0x8.6mm 2.95ct 12.9x8.4x4.2mm 1.13ct 8.8x5.1x4.6mm 0.86ct 7.0x5.6x3.5mm
ブラジルは世界で屈指のルベライト産地ではありますが、何時行っても手に入るわけではありません。
何年に一度か鉱脈が発見されると掘り尽くされるまでの何ヶ月か間、ルースや結晶標本が市場に出回ります。
そんなわけで、ブラジルの日曜市ではピンク・トルマリンなら何時でもありましたが、ルベライトと呼ぶに相応しい物はせいぜい 2〜3 カラットの中級品に出会うのがやっとでした。
冒頭の 12.7 カラットのルースはごく最近入手したものです。
正確な産地は不明ですが、褐色味の無いクランベリー色は、紛れもなくジョナス鉱山群産と考えられます。
インクルージョンこそやや大目ですが、この大きさのルベライトで高い透明度を持つルースは滅多なことでは出てきません。
どういうわけか一般の相場の十分の一の値段とあれば、ためらうまでもありません。
外見ではインペリアル・トパーズと見間違う色合いと煌きのペアカットと長クッション・カットのルースも実はありふれたトルマリンですから桁違いに手頃な値段でした。
Green tourmalines (Verdelite)
ブラジルで最も普通に見かけるのがこのやや褐色を帯びた緑色のトルマリンです。
値段はカラット当たり 2〜3 ドルと格安で大きな皿にざらざらと入っているルースから適当に選んでまとめて量って計算し、さらに端数を切り捨てて全部で 10 ドルといった交渉をした時のことが懐かしく思い出されます。
ガラス並の値段ですが、個々のルースをじっくり見ればどうして、なかなか魅力的な色合いです。0.95ct 〜 2.66ct (6.1x5.6mm) (9.9x6.9mm)
青緑色のトルマリン (Blue-green tourmalines)
2.62ct 13.0x4.7x4.1mm 2.93ct 12.5x6.3x4.0ct 1.09ct 7.8x4.1x3.3mm
やや緑を帯びた青いトルマリンです。
ナミビアのノイ・シュヴァーベンから一時産した青緑色と同じ、魅力的な色合いです。
正確な産地は不明ですが、ポキン鉱山の漂砂鉱床からこんな色合いのトルマリンが採れました。
使い方次第では素晴らしい宝飾品になると、いずれ彫金でも始めることもあるかと、あれこれ買い込んだ石の一部です。
結局、引き出しにしまい込まれたままですが、標本にはもったいないほどの魅惑的な無傷のルース達ではあります。
淡青色のトルマリン (Pale-Blue Tourmalines)
1.82ct 16.9x4.2x3.0mm 2.04ct 7.3x6.4x4.6mm 1.31ct 8.3x6.2x3.8mm 1.23ct 8.0x6.0x3.9mm 0.51ct 6.1x4.0x3.1mm
外見からはアクアマリンかトパーズと全く見分けが付きません。
屈折率が1.64−68と、紛れもなくトルマリンです。
インクルージョンの多い石はパライバ産のようでもありますが、幸いなことに当時は未発見でしたから、ごく普通のトルマリンです。
1カラットを越えるパライバ産なら、こんな品質でも 100 倍も高いのです。
それぞれは魅力的なルースではありますが、しかしこうした大きさも品質も不揃いのルースの大半は大きな宝石店の宝飾品に使われることはありません。
個々の石に合わせたデザインや手造りの枠を手間をかけて製作するほどの価値がないからです。
しかし独立したデザイナーや製作者の手になる個性的な作飾品として市場に出てきます。
当時のブラジルの日曜市にも、20 ドルから 50 ドル程度の手頃な値段で選り取り見取りの多彩な宝飾品がありました。
インディゴライト (Indigolites)
宝石質のインディゴライトはブラジルでも大きく美しいものはなかなかお目にかかりません。
カラット当たり 400 ドルと、トルマリンでは最も人気のある色合いですから、大きく美しいものは高級宝石店に引き取られ、日曜市には出て来ません。
ようやく見つけたのは小さい石ばかりで、永らく箱の隅にひっそりと忘れ去られていました。
こうして写真に撮って見ると、サファイアのような魅力的な色合いです。0.53ct(6.4x4.1mm)-1.55ct(8.4x6.4mm)
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