新着宝石展示室
(New Gemstone
Gallery)
July 2018 | : | 藍晶石(Cyanite/Kyanite) |
世界の藍晶石 0.5ct - 9.86ct |
藍晶石の青い色は四価の鉄と二価のチタンがイオンを交換する電荷移動という仕組みによる発色です。
これは、実はブルー・サファイアと全く同じ仕組みの発色なので、美しい藍晶石のルースは最上級のブルー・サファイアと見分けがつきません。
しかしながら、薄い平板状の結晶の殆どが大量の亀裂やひび割れを含むため,宝石ルースとしてカットされることは極めて稀です。
さらに、カット出来るような大型の結晶の産地が限られ、かつてはブラジルやインド産のルースが時たま姿を見せる程度でした。
しかし、2000年頃にネパールとチベットにて発見された藍晶石からは宝石級の大きく美しいルースがカットされるようになりました。
さらに、近年、インド、タンザニア、マダガスカル等の新しい産地からも、標本級ではありますが、多彩な色合いの藍晶石が姿を見せるようになりました.。
ネパールの藍晶石(Kyanite from Nepal)
Kyanite 20㎝ 北海道大学博物館 | 6.25ct 15.1x9.1x4.3mm | 1.62ct 8.37x6.37mm 1.19ct 7.90x5.88mm |
数少ない藍晶石の産地一つとして2000年頃からネパールとチベットとが台頭して来ました。
チベット産のルースは10カラットを超える大きなものが多いが、色むらが多い。
一方ネパール産は3カラット程度の大きさですが発色が均一で、スリランカ産の上級のサファイアを偲ばせるという特徴がありました。
その後いずれも姿を消してしまい、鉱脈が枯渇してしまったのかと思っていました。
が、近年ようやくネパール産のルースが時たま姿を見せるようになりました。
元々宝石としてはマイナーな藍晶石ですから、詳細な産地情報もなく、10カラットを超える大きなルースが取れるようなチベット産の結晶がどのようなものだったのか、未だに不明なままです。
一方ネパール産の結晶については、最近、北海道大学の博物館に20㎝大の結晶が展示されているのを見かけました。 他の産地同様、石英中の結晶ですが、平板状の結晶に1㎝近い厚さがあり、これならサファイアのような宝石質のルースが取れる可能性はあるでしょう。
マダガスカルの藍晶石(Malagasy kyanite)
1.56ct | 0.5ct | 9.86ct 34.2x6.9mm | 3.35ct 21.0x6.4mm | 1.56ct 8.1x6.1mm | 0.5ct Ø4.97x2.9mm |
マダガスカルからも詳細な産地情報はありませんが、2017年に濃い青と、淡緑色のルースが姿を見せました。 これらの異なる色合いのルースは、異なる産地の産と考えられます。
10カラット近い、大きな青い色のルースは藍晶石としては異例の透明度の高さがあります。
淡緑色のルースは二価の鉄イオンと三価の鉄イオンとの間の電荷移動による発色と考えられます。
タンザニアの藍晶石(Kyanite from Tanzania)
結晶 | ||||
1.54ct 8.0x6.0x3.8mm | 0.90ct 7.11x5.12mm | 28x3mm | 18x5mm | 1.17ct 8.7x3.8mm |
タンザニアの Loriondo から2008年頃にオレンジ色の藍晶石のルースが姿を見せるようになりました。
この色合いは不純物のチタンによる発色です。 かなりの内包物を含み透明度が低いという特徴がありますが、珍しい色合いで、かなりの高値で取引されていました。 今回入手したのは小さいながら、かなり透明度の高いものです。
淡緑色、淡緑青色は三価の鉄あるいはヴァナジウムイオンの8面体配位による発色と解明されています。
写真の淡い緑色のルースはいずれもヴァナジウムではなく、鉄イオンによる発色かと思われます。
インドの藍晶石(Indian Kyanite)
4.40ct 23.0x5.7x3.4mm 3.55ct 18.3x6.5x3.2mm 3.35ct 14.2x6.5x3.2mm 1.87ct 8.8x6.7mm
Orissa, India
インド産の藍晶石も、かつてオリッサ州産の、1.87カラットと小さいながら、写真のように、上質のスリランカ産のサファイアのような美しいルースを入手したことがあります。
2017年に、淡黄緑色と、玄武岩起源のサファイアのような沈んだインクブラック色の全く異なる色合いの藍晶石が姿を見せました。 これらはいずれも、それぞれ別の産地からのものと思われます。
ブラジルの藍晶石(Brazilian Kyanite)
石英(22x21x12cm)中の藍晶石結晶 10cm 3.40ct 12.5x7.8x4.1mm Barra do Salinas, Minas Gerais, Brazil
ブラジルは写真のように見事な藍晶石の結晶標本を産しますが、10㎝を超える長さがあるものの、罅と亀裂の多い、厚さが
5mm足らずの平板状の結晶からは宝石質のルースをカットすることが困難なため、30年ほど昔に淡い色の小さなルースを1個入手したのみでした。
今回ようやく、色むらはありますが、濃い色合いの比較的大きなルースに出会いました。