新着結晶展示室
(New
Chrystal Gallery)
July 2019
: アクアマリン(Aquamarine)
パキスタン、ブラジル、マダガスカル、北米のアクアマリン (Aquamarines from Pakistan, Brazil, Madagascar and North America) |
パキスタンのアクアマリン(Aquamarine from Nagar, Hunza Valley, Pakistan)
パキスタン最北西部のアフガニスタン国境一帯には世界で有数のペグマタイト 鉱床地帯があり、多彩な宝石結晶の産地です。 とりわけアクアマリンはブラジルのミナス・ジェライス州と並ぶ、世界で最も 美しい結晶を産します。 一般にアクアマリンを含む緑柱石の結晶は鉛筆のような六角柱状を示すことが 多いのですが写真の標本では六角の平板状の結晶が多数並んで結晶しています。 緑柱石の中で、淡いピンクのモルガナイトや無色のゴッシェナイトは産地に よってはこのような平板状の結晶形を示す例があります。 写真の結晶も殆ど無色ですからゴッシェナイトとした方が正しいでしょう。 緑柱石が六角柱ではなく六角の平板状となるのは、主成分のベリリウムの一部が 2.4倍ほど原子半径の大きなセシウムに置き換えられているためと考えられます。 原子番号が55、原子量が132.9と大きいセシウムが原子量9.012のベリリム の5~10%程度を置き換えて緑柱石の結晶に入ると、六方晶系の結晶の縦のc軸では なく90度直交するa-b軸の方向に結晶が成長して平板状の結晶になると考えられます。 |
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白雲母と長石を伴うアクアマリン結晶群 48x38x35㎜ |
ブラジルのアクアマリン(Brazilian Aquamarine)
このアクアマリンはブラジル産とのみで、それ以上の正確な産地も 分からず、大きな亀裂がある結晶ではありますが、余りにも濃い色合い と、端正な結晶形が気に入って入手したものです。 余りにも端正な六角柱なので研磨品かと思いましたが、実物を手に 調べてみると表面に極微細な凹凸や、付着したトルマリンかルチルと 思われる結晶片等が多数あり、これは自然の結晶と判明しました。 一般にブラジルのトルマリンは二価の鉄による緑の発色が強く、加熱 処理にて青く発色させることが多いのですが、この結晶の濃い青は珍しく 美しいものです。 結晶の一部にガラス質の透明な部分が垣間見えるのですが、内包物が 多く、コビングしたところで、カット出来ないために、手を加えずに結晶 のまま売りに出されたのでしょう。 |
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30x28x26mm |
マダガスカルのアクアマリン(Malagasy Aquamarine)
マダガスカルも全島に数百のペグマタイト鉱床帯があり、世界有数の宝石鉱物の産地です。 ただし緑柱石に限ると、エメラルドやモルガナイト等、時折美しい結晶の産出が報告されますが 一般には質、量ともに 前二産地には遠く及びません。 アクアマリンの結晶は30年余り昔に入手した75㎜x70㎜と大きいものの、全く不透明な鉱物標本級を 1個のみ入手しただけで、その後全く見かける機会もありませんでした。 今回、ようやく半透明の結晶を見かけて、2個目の標本を手にすることが出来ました。 包有物が多いため、宝石質とは言えませんが、光にかざすと透明な内部が見える、如何にもアクアマリン らしい結晶ではあります。 |
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37x11x9mm |
カリフォルニア、Lone Pineのアクアマリン
(Aquamarine from Lone Pine CA, U.S.A)
このアクアマリンはコレクターの方が自ら採集した結晶なのだそうです。 Lone Pine という産地はカリフォルニアのどの辺なのか調べて見たところ ロサンゼルスのほぼ真北へ200㎞程のインヨー郡にある人口2000人程の町です。 町は東側のデス・ヴァレーと西側のセコイア国立公園の山地に挟まれた盆地 を走る国道395線上にあり、標高4418mのホイットニー山を西北西に眺める、荒涼 とはしていますが、なかなか風光明媚な土地のようです。 カリフォルニア南部のペグマタイト地帯からは宝石質のトルマリン、ガーネット クンツァイト等が有名ですが、その他の土地にも花崗岩ペグマタイト鉱床は数多く 散在しているようで、インヨー郡の他の場所からも時折宝石質の結晶が採集された 記事を見かけることがあります。 写真のアクアマリンは日本でも採集されたような、標本質の結晶ではありますが 灰色の石英に包まれた結晶を手にすると、如何にもコレクターが自ら採集した標本 の趣があり、懐かしい思いを漂わせるものです。 |
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石英中のアクアマリン結晶 25x5㎜ |