新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )


July 2019 : カボション ( Cabochons )


 
 

長石族のカボション(Cabochons of Feldspar Group)
       
 曹灰長石(Labradorite) 曹灰長石(Labradorite)  曹灰長石(Labradorite/Spectrolite)  微斜長石(Amazonite) 
 21.72ct 24.8x11.9x6.6mm 32.49ct 29.6x17.9x7.3mm  49.90ct Ø30x8.3mm  15.75ct 21.47x14.8x7.4mm 
India  Madagascar  Ylämaa, Finland   Ural Mtns.
   長石族の鉱物宝石として扱われる例は、ムーンストーンとサンストーンくらいしかありません。
  ムーンストーンが月の光のような青や白い閃光を発するのは、結晶構造に由来します。詳細な説明は別途ムーンストーン を参照してください。 
 簡単に説明すると結晶を構成する曹長石(カリ長石)成分と灰長石(ナトリウム長石)とが高温から冷えるときに分離してナノメートル(10億分の1m)以下の薄さの薄膜として並んだ時に、層の厚さが光の波長に近くなった場合に干渉により、青や白、時に虹色の閃光を発するという仕組みです。
 写真のインド産の標本がムーンストーンの例です。 
マダガスカル産のペアカットの石は、虹色の閃光が縞模様を成して現れています。
フィンランド産はしばしばスペクトロライトと呼ばれることがあります。これは見る角度により虹色の、即ち光のスペクトルの全ての波長が見えるためで、中には濃い赤や橙色等が鮮やかに現れるものがあります。
 ウラル山脈産の微斜長石は、色と模様がきれいなためでしょう、カボションにカットされました。
 緑あるいは青い微斜長石はアマゾナイト(天河石)と呼ばれることがあります。これは似たような色合いの石がアマゾン河流域で発見されたので命名されたためです。が、実際には別の石で、この地ではアマゾナイトは採れません。
 アマゾナイトの青い色は、10億年以上昔に生成された微斜長石に微量のウランが含まれていましたが、長い年月でウランが核分裂により、最終的に鉛に変換され、それによる発色です。写真の標本の緑がかった色合いは鉄イオンの発色の影響と考えられます。  

菫青石 ( Iolite )
     
9.4ct 14.7x11.7x7.1mm 
 Madagascar
 菫青石は結晶軸の方向により黄色ー無色(灰色)ー青と顕著な色の変化を示す鉱物です。
実はこの色変化は肉眼では比較的に目立って分かりますが、反射や映り込みなどで写真ではうまく捉えるのが困難です。
 大量に採れるので手ごろな値段で入手できる宝石ですから、興味のある方は自分で手に取って確かめてください。

K2ストーン( K2 stone )
      K2とはパキスタン最北部、カラコルム山脈中にある世界第2の高峰。
 最も近い村から直線で80㎞も離れているうえに、麓から頂上まで6000mもの標高差のピラミッド型の急峻な壁がそびえる独立峰で、世界で最も登頂の困難な山として知られている。
 K2ストーンの正確な産地は不明ですが、ともあれこの山の周辺で発見されて命名されたようです。
 花崗岩に藍銅鉱 (Lazulite :Cu3(CO3)2(OH2) が浸み込んで出来た石と考えられます。
 白い花崗岩と藍銅鉱の鮮烈な青い色との対照が印象に残る石です。
 恐ろしく辺鄙な場所で発見された割には、1個千円程度と割安なのは、産地にたどり着くのが困難でも、大量に採れるためでしょう。
 
 25.25ct 35.3x19.5x4.1mm
Pakistan
K2 標高 8611m 


蛇紋石 ( Serpentine )
       蛇紋岩は造山運動や火山活動で地下深くにある橄欖岩が上昇し、水と反応して出来蛇紋石 [Mg3SiO5(OH)4]を主要鉱物とする岩石ですから、世界中の至る所で発見されます。
 純度が高く、半透明の美しい色合いの蛇紋岩は、ニュージーランド翡翠等々、産地に因む翡翠と呼ばれることもあり、彫刻や置物の材料として使われます。
 写真のカボションは、蛇紋岩としては上質の翡翠を偲ばせる稀に見る透明度と色合いの標本です。
 10.38ct 15.4x12.0x7.5mm
South Africa
 



クリソプレーズ (Chrysoprase)
     これは鉱物としては玉髄です。
多孔質の玉髄は様々な鉱物等を不純物として含むことが多く、多彩な色合いで産出します。
 天然に、不純物のニッケルを含み、翡翠のような緑色の発色をするものがあり、クリソプレーズと呼ばれ、玉髄の中では最も高価であり、しばしば宝飾品に使われます。
 名前はギリシア語の ” khrusos : 金色 と prasos : にら,葱、その葉の浅葱いろ(薄い青緑色)” に因みます。 ニッケルによる発色は太陽光で退色しますから、不使用時には紫水晶と同様に、直接日光を避けて、引き出しにしまっておくことが大切です。
 オーストラリアが主産地ですが、アメリカ、ブラジル、タンザニア、ウラル山脈等、世界各地で産出します。
 プレーズ ( 緑石英 : Prase ) と呼ばれる葱緑色玉髄もあります。これは緑閃石(Actinolite) の微細な結晶を含むためです。 
 4.14ct 14.1x9.3x4.4mm
Australia
 

トルコ石 ( Turquois )
         紀元前来からトルコ石の主要産地はイランでしたが、こんにち実際に市場に流通するのは圧倒的にアメリカ、アリゾナ州産のものです。
 写真の石は、不純物が面白い模様を作っています。
このような模様入りは、スパイダー(蜘蛛の巣)と呼ばれて、美しいものは珍重され、青一色の純粋なトルコ石より遥かに高価で取引されます。
 人気があるので、合成のトルコ石を作っているフランスのギルソン社ではわざわざ不純物を混入させたスパイダーまで作り出したほどです。
 宝石の本によってはギルソンのトルコ石はイミテーションとしていますが、ギルソンの合成は天然と全く同じ成分と結晶構造とを持つ、真正のトルコ石です。
 Gilson 合成トルコ石
5.70ct 14.5x10.8mm
 
 15.38ct 22.7x15.8x7.9mm
Arizona

ルチル・クオーツ ( Rutile Quartz )
       金色のルチルの結晶を内包する水晶は、それほど珍しくはありませんが、宝石質の美しいものは、どうやらブラジルのバイア州が特産のようです。
 とは言え、Mineralogical Record誌に紹介されるような大きく見事なものは滅多のことでは市場に出てこないし、極めて高価でもあり、なかなか手が出ません。
 写真のルチル水晶は,あまり見映えがしませんが、標本としては悪くはありません。
 
 
 6.9ct 14x13x6mm
Bahia, Brazil
 

ヴァラサイト ( Varacite ) ???
      ヴァラサイトとは一体何か ? 
見た目はトルコ石かヴァリスカイト ( Variscite :[Al (PO4) 2 H2O])のようだが、紛らわしい名前が付いているというのが怪しい。
 業者の説明文によると、南アフリカで稀に採れる石で、専門機関の分析ではアルミニウムと珪素とカリウムを含み、比重が2.2の鉱物とのこと。
 ありふれた元素からなる鉱物だが、比重が2.2とは異常に低い値で、これに相当する鉱物は方曹達石[Sodalite : Na4(Si3Al3)O12Cl]のナトリウムをカリウムに置き換えたものなら、相当するが、Mindata でソーダライト系の鉱物を探しても見当たらない。
 しかも大きさの割に異常に軽いので、比重を慎重に測定してみたところ、2.2ではなく、1.94だった。
 この比重に相当するのは珊瑚や象牙等、有機質の物質で、どう考えても普通の鉱物ではない。 したがって、この正体が何なのか不明のまま。 
 アルミニウムの水酸化物であるギブス石[Al (OH)3]を着色し、黄鉄鉱の粉末を加えて樹脂で安定化させたものがトルコ石のイミテーションとして作られたこともあるとのこと。
比重が2.4と近いので、珊瑚の粉末などを混ぜて作れば、比重1.94 のものが出来そうです
 が、見た目はなかなか悪くないし、1個千円程度ですから、アクセサリーに使う分なら存在価値は有るでしょう。
 25.95ct 30.8x20.5x7.3mm
South Africa ???
 
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